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魔力の宿る星  作者: イシヤド
第一章
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1-4 新メンバー


「はっ!?はぁっ……はぁっ……。夢……?」


 アルが目を開けると、そこは間違いなく寮の部屋だった。


(嫌な夢だな……。)


 目が覚めたアルは、今度は食堂に遅れないように行き、美味しい朝食を食べた。持ち物は無いと連絡されていたので、朝の準備をし制服に着替えた後、すぐに教室へ向かった。


───


 嫌な夢によって、アルは朝から嫌な気分にさせられテンションが下がっていた。昨日は騒いでいたアレクとフレイマーは大人しくなっており、教室は静かになっていた。


 そして鐘の音が鳴り、授業が始まる。


「号令はいらん。早速授業を始める。さて、俺が毎度最初の授業で必ず話すことがある。それは何か。お前らわかるか?挙手はせずにさっさと言え。」


「魔精ですか?」「魔法のコツとかじゃね?」「自己紹介じゃない?」「コイバナとか?」「いや、趣味とかだろ。」


 生徒が次々と意見を出していく。


「全員不正解だ。まあこのクラスのやつらが知ってるわけねぇか。それはな、創魔灯についての話だ。」


「走馬灯?」「それって死ぬときに見る……。」

「あれだよな。」「そうそう。」


「お前ら静かにしろ。もう回答タイムは終わったんだ。創魔灯ってのはお前らが知ってるあれとは少し違う。創る方の創造の創に魔法の魔、で灯りと書く。


区別するために、こっちの創魔灯はつくまとうと呼ばれることが多い。つくりまとうと呼ぶやつがいるが、俺は絶対に認めん。どう考えてもつくまとうの方が良い。


話がずれたな。極稀にだが、死に際にこの創魔灯を見るやつがいるんだ。死に際に見るという点は走馬灯と同じだな。しかし、走馬灯は自分の記憶を蘇らせるものなのに対し、創魔灯は未知を想像するものだ。


未知を想像することで、見たことのない新たな物を魔法で生み出すことができる。これが名前の由来だ。


さて、何で俺がこんな話をしたかというと、お前らが例え死にそうになったとしても、生きることを諦めないということが大事だということを言いたかったからだ。


そして逆、追い詰めても油断するなということもだ。創魔灯とまではいかなくとも、人が死に際になると普段より大きな力を発するというのは良くある話だ。


お前らがもし魔法使いになるのなら、その危険は計り知れない。お前らが死にそうになったときは、この授業を思い出せ。


次に大事なことを話す。良いか?よく聞けよ。」


 生徒達はブランが何を言うのかを聞き漏らさないように集中している。


「今から魔獣の森第一地帯に行って実戦を行ってもらう。」


 魔獣とは魔力を持った獣のことである。人類の明確な敵である悪魔とは違い、知能が非常に低い傾向にあり、魔獣同士で殺し合いをする。


人類にも悪魔にも敵対するが、その数の多さと個々の強さで魔獣の数は今に至るまで全く減らず、非常に厄介な存在となっている。


「お前ら魔獣の森は知ってるよな。その名の通り魔獣が居る森だ。ここの魔獣は、エネモール大陸にいる魔獣と比べたら貧弱だが、お前らみたいなひよっこにしてみたら大体が随分な強敵だろう。


だがお前らが行く第一地帯は、魔獣の森の中でも弱いやつらしかいない、比較的安全な所だな。」


「先生!いくら安全と言っても、魔獣の森ですよ!?僕らにはまだ早いですよ!」


 そう一人の生徒が言うと、それを他の生徒が馬鹿にする。


「何だよウィン、ビビってんのか?」


「はぁ!?ビビってないし!」


「お前ら静かにしろ。大丈夫だ。今回魔獣の森に行くにあたって、生徒五人に教師一人がつくという形をとる。それで魔獣の森の中では班別行動を行う。」


「先生、その五人はどういう選び方ですか。十二人しかいないので二人余ると思いますが。」


「ああ、同じクラスの五人じゃない。全員違うクラスだ。第一クラスから第五クラスの全クラス十二人いるというのは知ってるか。それぞれのクラスから一人ずつ選ばれた五人で一つの班になる。


それでその五人の選び方は、クラス内の順位で決まる。自分のクラス内順位と同じクラス内順位のやつと班になるんだ。例えばクラス内順位が一位のやつは他のクラスの一位のやつらと班になる。


質問はあるか。」


「先生、僕達何も準備をしていないんですが大丈夫なんですか?」


「それは俺達教師が用意してるから心配ない。他に質問は……ないようだな。じゃあグラウンドに行くぞ。」


───


 グラウンドに着いたアル達は、他のクラスと合流する。


(あいつらが俺達より上のクラスか……。)


 アルが他のクラスを観察していると、教師達が大声でそれぞれの生徒を呼び始めた。


「一位来い!一位~。」


 アルは一位を呼ぶ教師の元へ向かうと、既に二人の生徒が集まっていた。


「お前何クラスだよ。」


 二人の内の一人がアルに声をかけてきた。紫色の髪に目の少年だ。ボサッとした短髪と濁ったような目は暗い印象を与える。


「第五クラスだよ。」


 アルがそう言うと、相手は馬鹿にするような表情をして言う。


「何だ、雑魚か。」


 その言葉に、もう一人の生徒が反応する。


「私からすればあなたも雑魚ですよ?」


 そう言ったのは、白い髪に金色の目をした少女だ。ロングヘアーで耳が横に細長く、先端が尖っている。このような耳は森人族の特徴だ。森人は、魔力量が人族よりも多い傾向にある。これは魔獣の森という、魔力溢れる環境に適応した結果だ。


その目は先程の少年を見ている筈だが、まるでどこか遠いところを見ているようだ。


「そりゃ……お前には関係ねぇだろうが。俺はこいつが弱いって話をしてんだよ。」


「成る程。あなたは自分より弱いものを見て安心するタイプですね。私とは合わなそうですね。」


「は?うぜぇ……。」


(こいつらこれから魔獣の森に行くってのに喧嘩してて大丈夫なのか?)


 二人が言い合っていると、残りの二人も集まってきた。


「ここが一位の班であってるよね?俺は第二クラスで名前はフォーウッド·グラス。よろしくね。」


 そう言ったのは、明るい緑色の髪と目をした少年だ。フワッとした短髪と無邪気な笑顔は純粋で優しそうな印象を与える。


「えっと……第四クラスのアニマ·マルンです。弱いです。ごめんなさい!」


 そう言ったのは、茶色い髪と目をした少女だ。ボブヘアで、緊張しているのか落ち着きのない様子だ。


「全然大丈夫だよ!君も全然気にしなくて良いからね!」


 どうやら先程の話が聴こえていたようで、グラスはアルに向かってそう話しかける。


「あぁ、ありがとう。」


「さて、挨拶は済んだか?俺がお前らに付き添う教師、レイズ·マギだ。安心しろ、教師の中じゃあ俺が一番強い。」


 そう言ったのは黒い髪に目をした男性だ。眼鏡をかけており、知的な雰囲気を醸し出している。しかし、がっしりとした体格に筋肉から、肉体がしっかりと鍛え上げられているということがわかる。


「今回は、魔獣の森の空気を味わってもらい、進むべき道を決めるのが目的だ。弱い魔獣ではあるが、ある程度魔獣と戦ってもらう。ただ万が一にでも死なせる訳にはいかない。


そこで魔防服を着てもらう。ちなみに行きたくないという者がいれば言ってくれれば良い。ただし行かないなら、それ相応にその者の評価が下がることになるが。いるか?」


 マギがそう問うが、声をあげる者はいない。


「よし。魔獣の森は危険だ。その覚悟をしておいてくれ。じゃあ魔防服を着て、着替え終わったら再度ここに集合だ。解散!」


 そしてアル達は更衣室へ向かうのだった。

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