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魔力の宿る星  作者: イシヤド
第一章
3/15

1-2 模擬戦


 ───魔法


 魔法とは、頭で魔法のイメージをし、魔力を放つことで発動する技のことである。魔法で現在この世に存在しないものさえ生み出すことができる。


しかし、生み出すものの形、そのものを生み出すために必要な魔力量についてを考え、そしてそのイメージを持ち、必要な魔力量があってようやく魔法が発動する。


このどれかを満たしていなければ、魔法が発動しない、または考えていた魔法とは別のものになってしまうということが起こる。


そのため現実に存在するものを生み出す魔法が良く使われ、魔法で生み出すものを同じ種類のものに限定する者が多く存在する。


───


 そして、魔法を使うときがやってきた。アル達はグラウンドに着き、今まさに模擬戦を始めようとしていた。


「お前ら、これから模擬戦が始まるわけだが、戦う前に魔法式防御用服、略して魔防服を着てもらう。これはその名の通り攻撃を防ぐための服だ。耐久力はそんなに高くない安物だ。」


 そう言うとブランは服を取り出した。普通の服とは明らかに形が違い、頭から足先までの全身を覆うような形をしていて、顔の場所は透明になっている。


「安物とはいっても、魔防服の中での話だが。普通は自分の体からしか魔法を放てないが、魔防服は服の上からそれができるようになる高度な技術が使われている。


だから安物でもかなりの値段がする。安物だからと文句を言うなよ。それじゃあお前ら、これを着ろ。着たらルールを説明する。」


 そしてアル達は、砂が入るのを取ったり、躓いて転びそうになったりと、苦戦しつつもブランの指示を聞きながらなんとか魔防服を着ることができた。


「よし。全員着たな。ルールを説明するぞ。相手の魔防服を先に破った方が勝ちだ。魔防服はどっか破れたら全体が消えるようになってる。だから判定がしやすいんだ。


後この模擬戦はクラス内で生徒の順位をつけるためのものだから手を抜かない方が良いぞ。じゃあルールはわかったよな。早速始めるぞ。アレク、フレイマー、それぞれその丸の内側に立て。


ああそうだ、言うのを忘れてた。四角の外から出たら負けだ。ルールは以上。位置につけ。」


 そう言ってブランは白く大きい四角の内側にある小さい二つの丸を指差した。四角の線に沿って立方体の魔法を防ぐ結界が張られている。

 二人は丸の内側に立ち、戦闘態勢をとる。


「それじゃあ……エレガトロ·アレクサンダー対バーン·フレイマー。試合、開始!」


 ダッ……


「ぶっ飛ばぁす!」


 フレイマーが炎を拳にまといアレクに向かって走り出した。


「やれやれ、そんな単純な攻撃を僕に当てられると思っているのかなッ!」


 そう言うとアレクは電気を網状にして自分の前に放った。


「うおっ!?」


 フレイマーは驚き慌てて体勢を崩したが、炎を前に放射することで自分の勢いを殺し網を避け、更に体勢を立て直す時間を稼ぐことに成功した。


「おぉっと。」


 アレクは体を傾け間一髪で炎を避けたが時間を稼がれてしまった。


「網には掛からなかったようだね。でもこれならどうかなッ!」


 そう言うとアレクは小さな電気の槍をフレイマーの脚に向けて放った。


「ちっ、速ぇな」


 フレイマーはそう言いつつも、その身体能力で何とか槍を避ける。


「まだまだッ!」


 アレクはフレイマーから十分な距離を取りつつ槍を連射していく。


「ハハッ、そんな射ってたら魔力が無くなっちまうぜ?」


「君の体力が無くなるのが先さ。」


 二人がそう言い合っていると、突然アレクがフレイマーに向かって走る。


「ハッ!俺に近接戦闘で勝てると思ってんのか!」


「確かに勝てないかもしれないね。普通なら、ね。」


「はぁ?」


 フレイマーがそう返事をした瞬間、フレイマーの足元が光る。


「ぐぉっ!?痺れ……」


「隙ありだね。」


 バチチッ……


「これで終わりだよ。」


 アレクの手が光輝き、フレイマーに向けて突き出される。そして電気がフレイマーへと放たれる。フレイマーは慌てて手から火を出すが、間に合わない。

 そして……フレイマーの魔防服は消えていた。


「くそぉぉぉぉ!!」


「勝負ありのようだね。」


「試合終了!勝者エレガトロ·アレクサンダー!」


「まあ当然の結果だね。わかりきっていたさ。」


「お前の魔力残りギリギリなんだろうが。何がわかりきっていただよ。」


「はぁ、これだから困るねぇ~。頭が足りない人間は。ギリギリじゃなくてほぼ丁度だよ。僕は勝つために魔力を無駄なく使ったのさ。」


「ぐっ……。」


 フレイマーは何も言い返せず歯を食いしばる。


(あの電気の槍……地面に当たっても電気を維持できるような仕組みになっていたのか?いや、見えなくなっていたし地面の中でも電気が霧散しないような仕組みか?どちらにせよそれならその分魔力を多く使うだろうな。魔力がギリギリなのはそのせいか。)


「お前ら、次の試合が控えてんだ。さっさとそこどけ。」


 ブランがそう言うと二人は黙って四角の外に出た。


「じゃあ次の試合だが……アルとアイセ、この二人だ。」

 

(俺二番目かよ……。)


 アルはそう思いつつ丸の内側に行く。


「アルさん、よろしくお願いしますね。精々頑張ってください。」


 アルからは魔防服によって見えないが、アイセは水色の髪に、氷の結晶のような髪飾りをつけていた。アイセはその青い瞳で見下すようにアルを見ていた。


(なんだコイツ……。)


「よろしくお願いします……。」


「よし。アル対コール·アイセ。試合、開始!」


「はあっ!」


 アイセが氷柱をアルに向けて放ってきた。アルはそれを避け、土の槍を何本か生み出して一本を手に持ち、それ以外をアイセに向けて放ちながらアル自らアイセに向かって走り出した。


「くっ!はぁっ!」


 アイセは土の槍を避けながら、氷柱を大量に生み出し次々にアルへ放った。


(これは避けきれないな。)


 そう判断したアルは手を前に出し土の壁をつくりだした。

 するとアイセが壁の正面から横側へ移動してきた。アルはアイセに向かって走りながら、また土の槍を何本か生み出して放つ。


「うっ……。」


 アイセは疲れてきたのか、土の槍を避けたもののもう少しで当たりそうになっていた。


(これはいけるか?)


 アルにはまだ魔力が十分に残っており、アルは勝てそうだと思い始めていた。


「はぁはぁ、はっ!」


 するとまたアイセは氷柱を大量に生み出しアルへと放った。


「またか。」


 アルはまた土の壁をつくりだす。そしてアイセがまた壁の横側に移動してくる。


「アルさん、余裕そうにしていますが、私には何故あなたがそんなにも余裕そうなのかわかりません。」


 アイセはそう言ってニヤリと笑った。


「何のこと……。」


 アルがそう聞こうとするが、その答えはアルが足元を見た瞬間にわかった。アルの足が地面と一緒に凍りついていたのだ。


「先程の、あの方がされていた戦術の真似をしてみたんです。上手くいきました。これはもう私の勝ちでしょう。」


 アイセはそう言って、大量の氷柱をアルに向けて放つ。

 

「くそ。まずい。」


 アルはあまり気持ちのこもっていない声でそう言いながら、ニヤリと笑った。

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