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魔力の宿る星  作者: イシヤド
第二章
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2-2 小さな成功

遅れました。


 ザシュッ……ジャシュッ……ジュシュッ……


 男が、女を包丁で何度も刺す。


「ふざけんなぁぁ!!このっクソッ、アァァァァァ!」


 女はとっくのとうに死んでいるが、それでも男は斬るのをやめない。男は相当女に恨みを抱いているようだ。


「お前のッ、男もっ、殺したッ。全部ッ、全部全部ゥゥゥッッッ!」


 それを一人の子供が違う部屋で聞いていた。その子供はさっきまで読んでいた絵本を抱いて、部屋の隅でじっとしていた。


 『ソイルとちっぽけな魔法』という絵本だ。少年ソイルが、謎の魔法使いから魔法で作られた小さな土の塊を貰い、ソイルが魔法で同じものを作り、毎日三回神様に祈りそれを捧げることを何十日も繰り返すことで弟の病気が完治するという物語だ。


完治するまで一向に回復の兆しを見せない弟の病気に、焦りを覚えるソイルを弟が慰めるシーンが評判だ。


 話を戻そう。男が子供のいる部屋に近づいてくる。


「どこだよガキィィッ!出てこねぇとお前もぶっ殺すぞっ!ふざけんな出てこいよぉっ!ふざけんな!ふざけんな!クソックソックソォォォッ!」


 ドンッ!


 男がムシャクシャして壁を殴る。その足は遅いが、確実に子供へと近づいている。


 子供は掌に、小さな土の塊を作り出した。それは祈るためではない。男が部屋に入ってきた瞬間、子供は土の塊を男の目に向けて投げつけた。


「ウッ!?何だ!?」


 その隙に子供は部屋を抜け出し玄関まで走る。


「くそ!目が……おい待てガキ!クソッ!」


 子供は家の外へ出ると、叫びだす。


「誰か助けて!殺される!」


 しかし、男がすぐそこまで迫っており服を掴まれてしまう。


「ガキが。もういい、ぶっ殺す。」


 その時だった。


 ドォォッ!


 それは炎。どこからか放たれた炎が男を焼いた。


「グッ!?」


 男はたまらず子供を離し、苦しみ悶える。


「女性の悲鳴と男の怒鳴り声が聞こえると通報があったが、お前が犯人で間違いないな。」


 炎を放った男がそう言う。その男は魔法使いで、その中の治安維持という仕事を任されていた。


「グ、クソッ……。」


「魔法使いではないな。捕らえろ。」


「ハッ!」


 魔法使いの男の部下が、手から手錠を生み出してかける。魔法使いであれば手錠をかけたところで意味がないので、魔法使いかどうかを確認するのは重要なことなのだ。


「君、大丈夫だったかい?怖かったろう。もう大丈夫だ。」


 このとき子供は何を感じていたのか。犯人への恨みか、恐怖か、それとも助かったことによる安心感か、そのどれも違う。


 力の重要性だ。


(アイツが母を殺せたのは、アイツが母より強かったからだ。アイツが魔法使いに捕らえられたのは、魔法使いがアイツより強かったからだ。


 そうか。


俺が今まで見てきた世界は、強者によって取り繕われた物でしかなかったのか。)


 その子供は後に、〝アル〞と名乗るようになる。

 この日アルは知った。強さが全てなのだと。


 これは、アルが僅か六歳の頃の出来事。


───


 ザァァァァ……


 アルは目を覚ました。外は雨が降っていて暗い。アルはうんざりしたような顔をしてため息を吐く。寝覚めは最悪だった。


「またあの夢か……。」


 アルは、先程の夢を見るのは初めてではなかった。あの出来事が起こってから、度々登場し、アルを不快な気分にさせる。


(まあ夢のことなんてどうでも良い。昨日の魔法について考えないとな。アレクは、魔法で作るのは形だけじゃないって言ってた。物質の形を作る以外にも作れるものがあるってことだよな。あの光の魔法は、多分曲がったんだよな。


だとしたら、動きを作れるってことか?魔力で線みたいなものを作ってそれを操っても無理だよな。結局動かすのは身体によるものってことになる。動きを作るわけじゃないのか?いや……待てよ。魔法を前へ放つのも、動きを作っていると言えるか?


アレクの電気の槍は、空気中では真っ直ぐ進んだのに、地中に入った瞬間その場にとどまった。俺の爆発する泥も、最初から爆発するわけじゃなく衝撃が加わることによって爆発する。これを形が変わってると捉えるなら、動きを途中で変えることもできる可能性もある。


作る前に、放つ魔法がする動きをイメージすればいけるんじゃないか?やってみるか。小さな土の塊なら、部屋で作っても大丈夫だろ。)


「ふっ!」


 そう言って、アルは小さな土の塊を放った。土の塊はアルがイメージした一点で少し曲がり、そのまま壁にぶつかった。


(今少し曲がったか?もっと曲がるイメージだったけど、込める魔力が足りなかったか?まあ曲がったのは少しだったけどこれが正解っぽいな。もっとやってみるか。)


 ブーブー……ブーブー……


 アルが土を曲げることに夢中になっていると、部屋に設置されている時計からアラームが鳴る。


 アルが設定した、校舎へ行く準備を始める時間のアラームだ。この前考えることに夢中になってしまい、食堂へ行くのが遅れたことを反省し、色々とアラームを設定したのだ。


 時計は寮の全個室にあり、各自が自由にアラームについて設定することができるのだ。

 アルは急いで準備をし、校舎へ向かった。


───


「魔法に名前をつけるぞ。」


 そう言ったのはブランだ。


「それでは魔法実技の授業を始める。お前ら、何でそんなことをするのかと言いたげだな。これには理由があるからちゃんと聞けよ。お前ら、そろそろ使える魔法の数が多くなってきたんじゃないか?


戦闘中、魔法を発動するまでにかかる時間というのは、できるだけ少なくしたいものだ。魔法の数が多くなってくると、魔法を思い出すのに時間がかかってしまう。そこで魔法に名前をつけることで整理し、思い出しやすくする。


だから、魔法に名前をつけることは重要なんだ。で、名前をつける上での注意点だが、できるだけ名前を短くすること、分かりやすい名前にすること、この二つが基本だ。文字数は、六文字以内が望ましいとされているな。


まあ取り敢えずやってみろ。今からプリントを配るから、それに書き込んでいけ。もし思い付かなければ俺に聞きにこい。」


 そしてプリントが配られる。プリントには三十箇所の空欄がある。


(名前、名前かぁ。土壁つちかべ土槍つちやり土纏(つちまとい、火槍かそう火纏(ひまと)い、粘泥ねんでい、後はあれか……。爆泥ばくでい?それとも泥爆でいばくか?いや、泥火でいかも良いな。火泥かでいも。いや、やっぱ爆泥ばくでいにしよう。そっちの方が分かりやすい。)


 そして何分か経ち、ブランが話し出す。


「そろそろ全員終わったか?まだ終わってないやつはいるか?居ないようだな。なら、これから技能鍛練場に行くぞ。そこで早速魔法を試してみろ。それじゃあついてこい。」


───


 技能鍛練場に着いた。


「これから魔法を使うわけだが、名前を口に出すのは基本的に駄目だ。心の中で唱えろ。相手にもどんな魔法を使うのかがわかってしまうからな。まぁそれを利用して、わざと使う魔法とは違う魔法の名前を言うやつもいるんだが。


で、それなら魔獣相手になら口に出しても良いと思うだろ?まあその通りではあるが、人か魔獣かで使い分けるのは、魔法に時間がかかる原因となる。人だから、魔獣だからという思考の時間が無駄なんだ。


わかったか?それでは、魔法の練習を始めろ。」


 ブランがそう言うと、全員魔法を使い始める。


(せっかくここに来たんだ。途中で動かす練習もするか。)


 アルは、途中で曲がる土槍を作ろうとするが、槍は曲がらなかった。


(ああそうか。土槍を曲げるには、それだけの魔力が必要なのか。さっきとは違う。だったらもっと魔力を込めて……。)


 そうして作った土槍は、アルが思った通りに向きを変えた。


「よし!」


 アルがそう言ってガッツポーズをすると、拍手の音が聞こえてきた。


「見事だよ、アル。僕の見込み通りだ。」


「いや、俺はもっといける。もっと速く成長できる。」


「なら楽しみにしているよ、アル。君が僕の想像を超えることを。」


 アルは一つ、小さな壁を乗り越えた。

更新が不定期になりそうなので、これからは活動報告に進捗を書いていこうと思います。

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