1-12 魔獣の森6
あらすじを変更しました。
ロックダイルがアルに迫る。アルは土の壁をつくろうとするが間に合わない。ロックダイルがその口でアルに食らいつこうとした瞬間、何かがロックダイルへ放たれる。
それは、マテリアの魔法だ。気絶していて、先程の大爆発で気がついたようだ。マルンは気絶、ベノンは戦闘不能になっているが、グラスは起き上がろうとしている。
ロックダイルはマテリアの魔法を避け、警戒したのか一旦下がる。
「避けられた!?」
マテリアは、自分の魔法が避けられたことに驚愕している。それもそうだろう。先程までのロックダイルには、マテリアの魔法を避ける程の速さなど無かったのだから。
(鎧がなくなったとはいえ、速くなりすぎてないか?明らかにおかしい。これも魔精の力か?だとしたら力貰いすぎだろ。いや、そんなこと考えてる場合じゃない!この状況を打開する策を考えるんだ。
やつはもう瀕死。もう少し攻撃を当てれば倒れるだろう。ただやつの速さだとそれが難しい。どうするか……。)
アルがそう考えている内に、ロックダイルがアル達に迫ってきていた。
「はぁぁぁ!!」
すると起き上がっていたグラスが根を生み出し、ロックダイルに向けて放つ。しかし、ロックダイルには当たらない。ロックダイルはまたしても一旦下がる。
(あいつ……やけに反応が良いな。攻撃する気がないのか?そうか、こっちの手札を探っているんだ。俺の他の四人が、技を隠し持っている可能性を警戒しているんだ。
ただあいつもかなり血を流している。長引くと不利になるのはあいつの方だ。だからどこかで勝負を決めに来るはず。)
「ギュラァァァァ!!」
そしてロックダイルが、また迫ってくる。それにグラスが根を生み出し放つ。ロックダイルは引かずにそれを避けた。
(決めに来たか!)
「そう来るなら、こうする!」
グラスがそう言うと、根の途中から、別の根が生えてきた。ロックダイルはそれを避けようと上に跳ぶが、避けきれずに当たる。
(上に跳んだ!チャンスだ。あいつの着地点に泥を放てばあいつは泥に落ちるしかない!)
そう考えたアルが、ロックダイルの着地点に泥を大量に放つと、ロックダイルは驚きの行動を見せた。
魔法で岩を生み出し、その岩を蹴ることを繰り返し、空中に留まったのだ。
(くそっ、駄目か。)
ロックダイルはそのまま、アル達の方へ近づいてくる。そして、岩を落とすと同時にロックダイルも落ちてくる。
ドォォンッ
アルは既に走り出していた。走りながら泥を放出していく。しかしロックダイルは、それを避けつつアルに迫ってくる。ロックダイルの圧倒的な速さの前では、アルの泥は遅すぎる。もうロックダイルに当たることはない。
しかし、当たらないことは、役に立たないことと同じではない。
(あいつは速い。まさに圧倒的な速さだ。それに攻撃を当てるのは難しい。だけど、それに攻撃を当てる方法がある。それはこの戦闘で、俺が何度もこいつにやられてきたこと。
あいつは焦っている。俺の泥を避けることに注意を向けている。他にもマテリアとグラスにも意識を向けなければならない。
だからこそ、この奇襲が決まる!)
「頼みましたよ、先生。」
「おう。」
ロックダイルのすぐ後ろに、マギがいた。
(先生は、ロックダイルの奇襲で攻撃を受けた。だけど正面から戦えば、あいつとある程度渡り合う実力は持っている。)
「オォォォォォ!!!」
ゴォォォォォ……ドゥゥン……
マギの拳が、ロックダイルの肉体に突き刺さる。
(だったら、疲れきったあいつなら圧倒することができる!)
ロックダイルは抵抗するが、マギにダメージを与えられず、ロックダイルが一方的にダメージを受ける。
「これで……終わりだァァァ!!」
ゴゥゥゥゥゥンッッッ……
ゴキリと、ロックダイルの首の骨が折れる音が聞こえた。
「ギュラァァァァ……。」
そしてロックダイルは動かなくなった。
アルはそれでもロックダイルを警戒して、ロックダイルを大量の泥で覆う。マギは、魔精の力によってグラスが進めなくなった地点に行き、魔精による逃げられない力が消えていることを確認した。
これにより、ロックダイルが死んだことが確定したので、アル達は魔獣の森から出る準備をする。
「さて、これから魔獣の森を出る訳だが、他にも沢山の魔獣がいる。油断をするなよ。後、ポイゾは俺が担ぐが……アニマはマルティが担いでくれるか?」
「わかりました。」
ブランの言ったことが気に入らなかったのか、ベノンがよろけながら立ち上がる。
「待て……ゲホッゴホッ……俺は自分で……歩……ける。」
「大丈夫か?無理はしない方が良い。」
「無理じゃねぇよ。ふっ!」
ベノンが気合いを入れると、よろめいていたのが静止する。
「ようやく薬が効いてきやがったか。」
「薬……。そうか、ポイゾは薬もつくれるのか。」
「そうだ……はい。もっと早く効く薬をつくりたいですが。」
「まぁ、早く効く方が魔力の維持も少なくすむし、戦闘中なら少しの時間も大事だしな。」
「そうです。だからです。」
「それなら大丈夫そうだな。それじゃあ帰るぞ。」
こうしてアル達は、無事に魔獣の森から出ることができた。危機を乗り越えたのだ。ちなみに、帰るときに出てきた魔獣は、マテリアが全て一撃で葬った。鬱憤を晴らすかのように。
───
─グランリー王国玉座の間にて─
王は玉座に座り、そのすぐ後ろには近衛がいる。王は、部下の報告を聞いている。部下は跪き、王から少し離れて報告を行う。
「何?魔獣の森第一地帯に、第二、第三地帯の魔獣が現れた上にボス個体もだと?」
「はい。第三地帯の魔獣、ロックダイルのボス個体が一体出現しました。問題となった魔獣の森ですが、総合魔導学校付近のもので、事件当時、初等部一年生の試験を行っていたようです。」
「何だと。被害はどうなっている。」
「幸いにも、死傷者はいません。重傷者は三人、軽傷者は十八人です。」
「む、ボス個体が出現したのだろう?想像より被害が少ないな。勿論良いことではあるが。」
「はい。どうやらボス個体は、初めに相対した教師と、生徒達により討伐されたようです。」
「なんと。そうか、その者達には褒美を与えよ。そして、直ちに件の魔獣の森を調査させよ。此度の事件、前例のないことである。必ず原因を探しだすのだ。」
「は、了解しました。褒美はどのように致しましょう。」
「要らない物を貰っても困るだけであろう。本人達が望むものを聞き、それに沿うような形でそなたが考えよ。それで、他に用件はあるか。」
「はい。総合魔導学校主催の、魔導学校大会のことで、お伝えしたいことが御座います。」
「言ってみよ。」
「はい。レングスマール王国の王の護衛として、ベスター·グレイが入国するようです。」
「そうか。やつが……。そなた、余が魔法使いを見極めるとき、最も重要視する要素を知っているか?」
「勿論ですとも。倫理観で御座いましょう。」
「その通りだ。魔法とは危険な力よ。とは言え使わなければ国を守ることすらできん。全く厄介だ。魔法を使うことを避けられぬのならば、せめて使っても問題ない者だけが魔法を使うようにしなければならない。
初等部では精神的にかなり成熟している者を選別しているのもそのためだ。とはいえ、幼き者に魔法を使わせるのはどうかと思うが、それをしなければ国が遅れをとることになるというあいつの考えは正しい。
そして、ベスター·グレイ、やつは不気味だ。何を考えているのかわからない怖さがある。警戒しておく方が良いのだろうが、警戒してもどうにもならないだろう。やつが本気を出したら、この国など一瞬で滅びるのだからな。
どうすればいいものか。」
これで第一章終了です。次の投稿は少し遅くなるかもしれません。




