【短編】姉妹と書いて理解者
昔から姉は、なんでも私の欲しいものを持っていた。
麗しい容姿も、両親からの愛情も、たくさんの友人たちも、キレイな装飾品も。
それに比べて私は何も持っていなかった。
姉は、秀麗だった。美しいまっすぐな濡れ羽色の髪はいつも風に舞い、華やかな香りをまとっていた。
姉は、頭も良かった。いつも友達に頼まれて勉強会を開いているし、
いつもその名は掲示板の一番上に載っている。
姉は、いつも人に囲まれていた。休み時間になるといつも彼女の取り合いで、
飛べない鳥に向かって囃し立てるやじのように騒がしいその場の中心は、いつも姉だった。
姉は、美しかった。いつもその身に誰かからもらった贈り物を身につけていた。
同じ姉妹かと両親でも見間違うくらい、私たちは違う。
私の髪は、茶色混じりでひどいくせっ毛。
幾度も繰り返した脱色で、わかりやすく傷んでいる。
頭も良くないし、人と群れるのは嫌い。装飾品を身につけたこともない。
でも、それでも。
「っ、ごめん!待った?!」
「ううん、大丈夫。帰ろっか、お姉ちゃん。」
染めることの許されなかった髪も、重い期待も、自由な時間も、盗聴器まじりのソレも。
その中に隠された姉の本心も。
すべて理解できるのは世界で唯一人、私だけなのだ。
姉が笑う。教室でみるくすんだ笑みよりも、それはずっと綺麗だった。