表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛び出し注意くん  作者: 弘田邦友
1/8

 トーンの軽い子どものどなり声がした。

 ぼくの後ろには『飛び出し注意』と書かれた一本の支柱に取りつけられた男の子の形の看板があるだけだった。その看板を見ているうちに、さっきまでチカチカしていた信号が赤にかわっちゃった。

 どう見ても、看板の男の子はぼくを見ている。動いても目が合う気がする。

「おい」

 看板がしゃべった。さっきの声はこいつのだ。ぼくは尻もちをついてしまって、もうだめだと思った。

「左右かくにんしないと、殺すよ?」

「いやー!」

 看板の男の子がぼくにはものすごく大きく見えたけど、ほんとはぜんぜん動いていなかった。ぼくはゆっくり立ち上がった。

「お、おい。ぼうず。大丈夫か?」

「うん」

「ならいいんだが」

 やっぱりそんなあぶなくないみたい。

 この交差点に看板があったことをぼくはよく覚えていなかった。あったようななかったような、というくらいでさっきまで見えていなかった。

「ぼうずいいか?信号を渡るときは右、左をちゃんと見ないとだめだぞ。分かったか?あともう一回右な」

「うん」

「ならいい。ていうか、ぼうずひとりか?学校行くとちゅうだろ?」

「ぼく、転校してきたばっかりなんだ」

「――なるほどね」

 看板のくせに人間のことにくわしそうだ。

「てことは毎日ここらへんをたんけんがてら学校行ってるんだろ?」

「うん」

「だめだだめだ。知らない場所行ってみたくなる気もちも分からなくもないが、ただでさえ一人はあぶないのにいつもちがうところ歩いてたらもっとあぶないだろ?」

「そうなの?」

「そう。だから、そうだ名前は?」

「わたる」

「わたる、今日から登下校はこの道通るようにしろ。分かったか?」

「うん」

 ずっと看板がぼくにしゃべりかけている。

 それがふしぎすぎて、うなずいちゃったけど、どうしよう。

 とりあえず信号が青にかわっていたから渡ることにした。

「わたる!行ってらっしゃい」

「うん」

 なんかまたこわくなってきた。

 下校の時はあの看板があるはんたいの道を歩こうと決めて右左をかくにんした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ