知る者、知らない者
魔法が使えることを確認した牙竜は魔法を駆使して自分を監視している何かを誘き出す。
魔法によって転移させたのは七瀬だった!?
牙竜は七瀬に今の状況を確認しようとするが話が全く噛み合わない。
ジルクと牙竜が戦っていたどこかで反動が生じて世界線の軸を変えてしまい、魔法という概念が消された世界に変更されてしまった!?
七瀬も牙竜のとこを知らないため、また一からの魔法生活が始まる!
魔法と世界が交差する超絶ファンタジー第三弾開幕!
転送魔法で呼び出したのは七瀬で間違いない
そのはずだが、、
「お前、誰だ?なんで俺の名前を知っている?」
「七瀬、、じゃないのか?」
正直何がどうなっているのかさっぱりだ。
自分の前にはジルクとの戦いで援護してくれた七瀬がいるというのに、七瀬は俺のことをまるで初対面の人のように接してくる。
「俺は七瀬だけど、なんで俺の名前を知ってるんだ?」
「だってお前!スナイパーで俺を援護してくれたじゃねぇか!」
「スナイパー?お前何言ってんだ?」
お互いに何がどうなっている状態なのか全くわかっていなかった
(これは七瀬が演技してるわけじゃねぇ…本気で知らないパターンだ。これによって考えられることは一つ…)
『世界並列線変更』簡単に言うとパラレルワールドだ。
(俺とジルクが戦っている時、何か世界を変えるほどの大きな反動がない限りこんなことにはならないはずだ、、それならなぜこんなことになっているんだ?)
「お前、、何者だ?」
七瀬から「お前」呼ばわりされるのは初めてだ。
「俺は牙竜・ガルムナート=ゼロ、俺の知っている世界でお前は俺の護衛役だったはずなんだがな」
一から説明しても理解には時間がかかるだろう。
自分がいた世界の話をするのが最善の策だと考えた。
それでも世界がどうこう言っていれば多少頭はおかしいやつ認定されるのは事実なんだがな。
「俺がお前さんの護衛?お前さん…もしかしてお偉い様なのか?」
「簡単に省略すればそうなるな。軍のリーダーだ。」
「軍って…やっぱりお前すげぇ奴じゃねぇか!あ、でもそのすげぇ奴の護衛をしてたから俺もすげぇ奴になるのか…?」
顔から身長まで全てが七瀬のはずだが性格だけは唯一不一致だった。
(なんかこいつめんどくせぇな…魔法がなくなっちまうだけでこんなに性格が変わるものなんだな…)
そもそも今まで七瀬から「お前」呼ばわりされることがなかった。
いや、そもそも誰からもお前呼ばわりをされたことがなかった牙竜にとって七瀬の態度はどことなく不愉快だった。
「で?俺が名乗ったんだ。名前は知っているが一応七瀬も挨拶したらどうだ」
正直こんな言葉を使ったのは初めてだ。
自分が上の存在だったからこそ、今の七瀬のような無礼な態度を取られることはどことなく不快だ。
「あぁそうだな。俺は七瀬 湊人。この山の管理をしている。俺はお前に仕えてたということを聞いたが…どこまでが嘘なんだ?」
一通り話してみたがやはり信じてもらえなかった。
「全て本当だ。おそらく魔法の衝突によって世界が変わっちまったらしい」
正直に言ってみたがそんなことは信用されることもなく、逆に怒りを買ってしまった。
「ふざけるのもいい加減にしろ。一応ここは俺のテリトリーだ。ふざけたこと言ってると不法侵入で警察呼ぶぞ?」
「ふざけているわけではない。さっきまで隠れて俺の様子を伺ってた奴が突然俺の目の前に出てくることはおかしいんじゃないのか?」
「ぐっ…!それなら俺の目の前で証明してみろ!」
無駄に当たり強いところだけは俺が知っている七瀬そっくりだ。
「ちょっとまっておけ。雨の中で魔法を使うのは難しい。晴れたタイミングでならいつでも、どんな魔法でも使ってやろう。」
どんな魔法でも使ってあげるという条件は言い過ぎたが、これも七瀬には怒りを買ったらしい。
「そんなこと言って逃げるつもりか、実にくだらねぇな。雨が降るだけで魔法が使えねぇなんてそんなちっぽけ魔法か…」
「…そうか、そうか、、そこまでして魔法が知りたいか…いいだろう。とっておきを見してやる。」
正直に言ってしまえば俺は極度な怒りを覚えていた。
今まで一緒の軍として戦ってきた味方に急に裏切られた感じだ。
いや、この世界では俺は他人扱い、そうなって当たり前なのだが、それがどうも気に入らない。
(魔法がない世界で魔法を証明させることは難しい。実際俺だって急に魔法を使わずに空を飛べる車があるなんてことを言われても信じないだろう。それならどうするべきか…決まっているさ、、、)
実物を見せればいいだけだ。
この状況で言えば、「魔法を直接受けてもらう」が1番手っ取り早いだろう。
転移召喚を使った魔法陣を修復しつつ、魔法を強めるために沢山の魔宝花を使って新しい線を引いて新しい魔法陣を作り上げていく。
「おい!ナナヒノバナを何本も使うな!貴重なんだぞ!」
「ナナヒノバナ?なんだそれ、、、あぁこの花のことか?魔宝花じゃないのか?」
世界が違うと花の名前も変わってしまうらしい。
魔法陣は沢山の種類があり、一度使った魔法陣も、少し線を加えたり、魔法を強めるだけで違った魔法を使えたりもする。
(親父から教えてもらった初めての攻撃魔法…しっかりと受けてもらうぜ)
生身の人間が受けても耐えれる簡易的で魔法を証明できるもの『物理波』をぶつけることにした。
蒼く光りだした魔法陣に特定の言葉を呟く。
魔法の中でも基本の『詠唱魔法』だ。
この魔法には特有の言語を使うので、起源は吸血鬼の真祖が見つけたものだろう。
もちろん俺はその言語を覚えているものの、何年も使ってないと発音もデタラメになってきている。
全ての言葉を呟いたのちに魔法陣の真ん中に手を置き、魔法を発動させる。
「アディアウェイズ(魔法よ、発動しろ。)」
魔法陣が紫色になったところで真ん中に置いた手をゆっくりと上にあげる。
魔法陣から出てきたのは紫色の丸い玉だった。
「うおぉ!?な、なんだそれ?」
「初級魔法だ。まぁ魔法を見たことないからな。だが見るだけじゃつまらないだろう?」
紫色の玉は中心に向かって黒くなっているが、半透明で掴めるようなものではない。だからこの魔法の威力を半分ほど使って浮かせている状態だ。
威力は落ちるが元の威力で七瀬に使えば腕が吹っ飛ぶ未来が見えるからどちらにしろ威力は下げなければならなかった。
「さーて、それでは七瀬に問おう。この魔法はどんな魔法だと思うんだ?」
「えーと…あれか?虫とかが寄ってこなくなるとか…」
……世界が違うだけで回答がここまで異なるとは思ってもいなかった。
元の世界の七瀬に見せても「爆裂魔法ですか?」ぐらいの回答が来るはずだが、まさかここで虫という一番よくわからないワードを持ってこられたのは人生の中で初めてだろう。
「…虫を避けるためにここまでして魔法陣を使う必要があるか?今のお前には似合いそうな回答だが、、魔法を見縊るな。」
「はあぁ?意味わかんねぇよ。魔法なんて見たことねぇからわかんねぇよ。どうせくだらない手品を魔法に見せかけて俺を騙すつもりなんだろ?」
「…お前の考えは理解できん。目の前で魔法を使ってやったのにまだ信じないとはな…なんなら受けてみろ。」
物理波は球体でできた魔法なので魔法を使うと同時に発動するものではないが、球体を当てたところを中心に衝撃波を出すという魔法になっている。
「この魔法は加減が難しくてね、頑張って威力を下げているが下手したら骨が折れる…関係ないか。」
「ほ、骨!?ちょっ、ちょっとまて!」
正直ここまで七瀬の性格が変わると思っていなかった。
だからこそ、手っ取り早く七瀬を元の性格に戻せる方法が魔法を知ってもらうことだ。
俺は七瀬の右肩めがけて紫色の玉『物理波』を放つ。
重力に従わない物理波はゆっくりと移動しながら七瀬の右肩めがけて一直線に進んでいった。
「わわっ!」
驚く七瀬だが逃げられるのも面倒くさいことになりそうなので物理波の魔力を使って右肩に吸い付くようにさせた。物理波は命中後、当たるとともに体内にするりと吸収され、そこから出た衝撃波が七瀬の全身を駆け巡る。
「ーーっ!」
物理波の衝撃波は痛みよりも衝撃がの方が強く、紫色の球体が吸収された部分を中心に地震のように衝撃がやってくる。
やがて衝撃を受け止めきれなくなった体はその衝撃を痛みとして体に伝える。その結果…
「いっでぇぇぇぇぇぇぇえ!!?」
右肩を思いっきり押されたようによろめいた七瀬は痛みに変わった衝撃波に悶絶、大悲鳴をあげた。
「どうだ?これで魔法があると分かってくれたかな…いや、ここまでされたら流石に信じるしかないよな…」
よろよろとした七瀬はいったん息を落ち着かせて牙竜に怒鳴った。
「お前!めっちゃいてぇじゃねぇか!!これマジで骨折れてんじゃねぇか!?」
…見てられん。
元の世界での七瀬ならどんな魔法を受けたとしてもその魔法に的確な感想を述べてくれた。
まぁ魔法慣れしてないこともあって痛がるのはいいが、いかんせん七瀬の体でその反応をされるとどうも落ち着かない。
「安心しろ。見た感じ折れていなさそうだ。外部と内面の間でこの衝撃波は発生するから打撲になるぐらいだろう」
「…お前悪魔だな、、、」
「何も悪魔ではないしお前でもない。せめて呼び名を
リーダー…でもいいが『牙竜』にしろ。」
正直リーダーリーダー言われても格差みたいでどうも気に入らなかったからなぁ…一回名前で呼ばせてみてしっくりくるようであれば元の世界でもそうしようと考えていた。
「おまe…」
「『牙竜』だ。なんだ?もっと痛い魔法をお望みか?」
「とんでもない!牙竜様についていきます!」
「様をつけるな気持ち悪い…牙竜で結構だ。」
心底早く元の七瀬に戻って欲しいと思ってしまった。
気付いたら雨は上がっていて、自分が作っていた魔法陣もうっすらと消えかけている。
「随分と時間が経ったな…」
山をコソコソ降りようとした七瀬を牙竜が引き止める。
「おい七瀬。先ほどの言葉と行動が反しているんじゃないのか?『牙竜様についていきます』の言葉は聞き間違いではなかったはずだが?」
「うっ…なら、家来ます?」
「よろしく頼む」
即答してしまった。
普段は軍のリーダーってこともあり、部下の家に行ったりすることは滅多になかったことなので正直その言葉を待っていた自分がいたのかもしれない。
七瀬の後を追って七瀬の家までついて行った。
「ここっす。つきました」
山を下って12分、着いた家は七瀬に似合わないほどの豪邸だった。
「お前、こんなにいい家持ってるのか…」
「一応あの山もおじいちゃんが買ったから七瀬家のものですよ。」
いつも貧しそうにしていた七瀬が世界が変わるだけでここまで大金持ちになることは予想しなかった出来事だった。
扉の前に行くと何かよくわからない機械がつけられていた。
《ロックされています。》
「おい七瀬、なんだこの装置。あれ!?扉が開かねぇじゃねぇか!」
「ロックされてるって言ってんじゃないっすか…ちょっとどいてください。」
七瀬は扉の前のモニターに右目を写すと扉の鍵が開く音が聞こえた。
《瞳孔および虹彩を確認。ロックを解除します。》
「おいおい、なんだそのシステム!?」
元の世界では魔法の流通により、機械技術の発展がなかったのでこのようなものは初遭遇だ。
「知らないのか?……まぁ牙竜からすると日常的に使う魔法を使って俺が驚くような感じか。」
七瀬も俺がいた世界と魔法のことを認めたらしい。
まぁ認めてもらわないと流石に困るけどな。
「どーぞ。」
ロック解除された扉を開けて七瀬はにっこりと微笑む。
「じゃあ、お邪魔する。」
家の中は以外にも綺麗で、元の世界の七瀬とはるかに違っていた。
「おい七瀬、お前ってこんなに綺麗好きだったか?」
花瓶の並び方も綺麗に並んでいて、元の世界の七瀬が絶対にこだわらなさそうな場所まで整理整頓がされている。
「綺麗好き?んー、まぁ部屋や玄関が綺麗であることに越した事はないからな。」
正直ここまで言われると七瀬が元の世界と別の人格なのがよくわかる。
それぞれ生きている環境だったり、絡んでいる人間で大きく左右されるものだと改めて思った。
「さっきはへんな魔法を使ってしまって申し訳なかったな。まだこの世界は謎だらけで魔法が十分に使えないこともあるだろう。どうだ?俺と一緒に魔法を学んでみないか?」
「それは…俺も使えるようになるのか?」
七瀬の素朴な疑問に少し戸惑った。
「もちろん。俺が元いた世界では人間もある程度の魔法なら使えている。まだこの世界で魔法が完全に使えるようになったとは言い難い…が、魔宝花を使って魔法が使えたんだ。完全にマスターするまでは長い道のりだと思うが俺も今はまだ魔法が使えない状態だ。1人で地道にやるよりも2人でやった方が捗るだろう」
七瀬は少し考えたのちに
「牙竜もこの世界のこと、あんまりわからないんだろ?なら俺がいろいろと教えてやるよ。魔法がなくたって人類は機械技術で発展していったんだ。これなら俺が一方的に得をするだけじゃなくてwin-winの関係になるだろ?」
この世界のことを教えてくれるのは大分ありがたい。
「よし、交渉成立だ。この世界のことや俺がここに来た理由がわかるまではここに居座るが、それでも大丈夫か?」
「どうだろうねぇ…経済的には大丈夫そうだが、まぁ大丈夫か!」
七瀬にも事情はあるがこの世界で七瀬に出会えたのは幸運だろう。
「よし。これから世話になるぞ、七瀬」
いつもいろいろなことを七瀬に教える立場だったから逆の立場になるのも意外と面白いものだ。
世界並列線変更
詳しくは分かっていないが魔法を使うようになってから人々が消えるようになった一つの都市伝説だ。
本当に魔法のせいなのか…それともただの噂話か…
しかし俺はジルクと戦ってもといた世界を手放してしまった、、世界が変わったんだ。
こうなると嫌でもこの説を信じるしかないだろう。
世界並列線変更
どんな理由で、いつ、どのようなことをして発動するのかはわからない。
俺はそれを魔法の概念がない世界で…
『解き明かす』
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
赤坂蓮です。
今回で第三弾目になりましたが、今回は詳細編になりました。なかなか話の内容が進まないのでムズムズしますが…安心してください。書いている本人もムズムズしてます。
本当はもっと魔法を使った白熱バトルが書きたいけれどまともにできそうな状態になってないのでどことなくしょんぼりしています。
しかし、この詳細編こそいろいろな隠しメッセージが隠れていたり、後々重大なストーリーのキーワードになったりするかもなので、これから起こりそうな出来事を予想しながら読んでみても面白いかもしれません!
今回は少し短めになりましたが、最後まで読んでくれてありがとうございます!
また次回のあとがきでお会いしましょう!