表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

並行世界と魔法消滅

魔法大戦でジルク・バルライドと接戦を繰り広げた牙竜だったが、ジルクの成長と巧みな戦略技で追い込まれてしまう。最後の切り札として使った牙竜の魔法とジルクの魔法がぶつかり、気がつくとそこは全く見覚えのない場所になっていた!魔法が思うように使うことができなくなってしまった世界で原因をさぐるため、牙竜が魔法の起源をたどり、一から魔法を使って世界の謎を解き明かす!

魔法による超絶ファンタジー第二弾!

体が重い…



ゆっくりと目を開ける


ぼやけた視界には木々の間から見える清々しい青空が広がっていた


(気絶してたのかな…)


ゆっくりと状態を起こす

あたり一面自然で包まれた記憶にない場所にいた


「ジルクは!?」


勢いよく立ち上がり辺りを見回すが、ジルクの姿はない。


「ジルクもいなければ場所も覚えがない…困ったな」


自然と目を閉じて〈脳内会話リンク〉を使おうとするが、何も変化がない。


「あれ?魔力切れかな…いや、それはないか」


魔力切れだった場合、体に何かしらの反応がでるはずだ。


脳内会話リンクが使用不可になる原因は主に魔力切れと短縮利用解除スキルアウトの二つに限られるが、2つとも異常な魔力を使った時にしか起こらない現象のため使えないのには何か違和感を感じた


短縮利用スキルインは魔法陣を作らずに魔法を即時使用できる行動のことを表していて、統合魔法による高度な魔法によって使用が可能になる。

それを解除する短縮利用解除スキルアウトをするとなれば統合魔法で使った魔力を上回る解除魔法を使わなければ短縮利用解除スキルアウトをすることができない。


ジルクとの戦いの中で解除するのはほぼ不可能なことだった。


「〈脳内会話リンク〉が切れるなんて初めてだ…一体誰が? ジルクじゃなさそうだしな、、、」


脳内会話リンクを使うために魔法陣を作ろうとする。

脳内会話リンクは普段は魔法陣を作らずに使っていても、もともとは魔法陣から作り出された魔法なのでどちらかというと魔法陣の方が使い方としては合っている


しかし、魔法陣すら作れない。


「あれ、どうなってんだ?たとえ魔力切れだとしても魔法陣ぐらい作れるはず…まさか!?」


全神経を集中して右人差し指に魔力を溜めようとする

普段は人差し指に魔力が集中して黄金色に光るはずが、今回はどんなに集中しても人差し指は光らなかった。


「わかった…俺、魔法が使えなくなってんじゃねぇか!?」


魔法が使えなくなったのはわかったが逆に今わかっているのはそれしかなかった。


「なんでだ!?魔力には異常が無いと思うはずなんだが…」


自然とその場に座り込み、じっくりと考える。


(自分の魔力すら操ることができない上で、魔法が使用不可能…考えられる選択肢は3つだ。『自分が魔法を使えなくなった』『ここの場所が魔法を無力化する場所だから』『この世界から魔法という概念が消えてしまった』かな。いや、さすがに世界は考えすぎか…)


考えても考えても答えは出てこない


「考えるだけムダなのか…行動に出さなきゃ始まらないのか…わけわかんねぇな」


組んでいた両手をピンと伸ばして草むらに寝そべる


「ジルクも…みんなも…どうなっちまったんだろう」


魔法が使えなくなった今、牙竜が連絡を取る方法は何もない。

魔法を見つけてしまったことにより、人類の研究は魔法にしかいかなくなった。

だからと言ってもいい、魔法がなくなった世界を想像してまで機械技術を発展させる必要がなくなった世界に通信機器なんてそもそもないのだった。


人間には魔法という技術は早すぎたのかもしれない。


「寝転がってても意味ねぇか…」



ゆっくりと起き上がり、ぼーっとしてると目の前にある花に目が止まった


「あれ…魔宝花じゃねぇか?」


その花が生えている場所まで行き、花を観察する

少し分厚い葉に離弁した花びら、甘い花の匂い。


「間違いない、魔宝花だ。人間が魔法を使えるようになったきっかけの花だ!」


その花の茎をちぎり、茎から出てくる水を手に乗せるとその水は少しだけ発光したのちに瞬間的に蒸発した。

この花が人間に新たな世界を見せてくれた。


「魔法が使えないことはない、また1から…いや、ゼロから始めよう!」


気絶してから初めての大発見だった





「なんなんだあいつは…何しにここに来てるんだ?」

木陰から相手の様子を伺う。


(なんか暴れてるぞ)


見た感じ一般人というよりもコスプレをしているような服装をしており、山の中でたった1人という怪し過ぎる謎の男の様子をただただ観察する。


(うわぁ、魔法がなんだかんだ言ってるよ…完全にアニメの見過ぎだな。高校3年生ぐらいか?にしてもこんな山奥で何を…)


時刻は午前10時を過ぎた頃、学生ならとっくに学校の時間だ。


(このまま森に危害を加えずに帰ってくれればいいんだけど…)


願った瞬間にその男は立ち上がってそそくさと動いたのちにしゃがみこんだ。

どうやらあの男の目的はナナヒノバナという花だ。じっくりと観察している


(あんな格好して植物観察か?観察だけならいいけどーー)



《ブチッ》



聞こえてきたのは茎をちぎる音


「あっ!」


思わず声を上げてしまったが、とっさの判断で木の影に隠れたのでおそらくバレていない


(あいつ…やりやがった!よりにもよってナナヒノバナを!! あの花はここの気候でしか育たないからものすごく貴重なのに!!)


今すぐ出てこらしめるのもアリだったが、気づかれていないの逆手にとってその男の行動を観察することにした。






(なんか後ろにいるな…)

花をちぎった時に人らしき声がしたのを牙竜は聞き逃さなかった。


(俺そんなに目をつけられるようなことしてたかなぁ)


花をちぎったことが悪いと思うけれど感じからして

花をちぎる前から尾行されてたように感じられた。


(今出ていけばかえって敵対心を持たれるだけだ。出来るだけ刺激させないように、そして魔法を理解せざるを得ないような状態のもとで会った方が不審に思われることなくこの世界について知ることができるかもしれない。)


俺のことを尾行している奴に不審に思われないように〔気付いていないフリ〕を続けた。



(さて、せっかく魔法の種を見つけたんだ。昔親父に教わった古典的な魔法の使い方ぐらいは覚えているからそれから試すか)


昔親父から教わった魔素を使わない方法「水古すいこ式」で魔法が使えるのかを確かめる。

魔宝花の茎から出る液体を水に溶かして魔法陣をつくる、簡単そうで技術面が試される方法だ。


(まずは水、、川から探さないとな…魔宝花は一輪見つかれば簡単に見つけれるぐらいに集まってるし、ここらへんは自然が保たれている。川も少し歩けば見つからだろう)


ゆっくり立ち上がって辺りを見渡す


(右は崖…滝がある可能性もあるがその確率に賭けるよりかは他の方面に歩き出した方が良さそうだ)


崖の方面を背にして歩き出そうとしたが、ふとあることを閃いた


「わざわざ数キロ歩いてあるかどうかも分からない川を探すよりも天気が崩れるのを待ったほうがいいんじゃねぇか?」


今は青空が見える空も、隣には大きな積乱雲が待ち構えている。地面は湿っており、数時間前にも雨が降ったような湿り方だった


(おそらく午後から大雨が降るだろう。地面の状態からもゲリラ豪雨っぽいな)


近くには「大傘の葉」とよばれているアメヌラシという木が生えている


「アメヌラシの葉は丈夫で耐水性がある。容器がなかったから助かったぜ」


アメヌラシの木の葉の中でも大きいものをいくつか選んで取っていく


(懐かしいな、こうやって山の中で魔法を1から習ったもんだ…)


牙竜の父親は魔法学の研究家として働いていたが、数十年前に流行した伝染病によってこの世を去ってしまった。

父親の口癖はいつも「楽を求めるんじゃない、苦労を知れば物事なんて仕組みだってわかる」だった。

どんなに簡単に使えるようになった魔法でさえも、初めて使うときはわざわざ1番古い方法を使っていた。


「水古式」もその一つで、たくさんの方法をつかって水を手に入れて魔法を使ったことは幾度とあった

汚い水しかない時、大量の水を使用したいのに少ししか水がない時、そもそも水が近くにない時などその時に合った行動をとってくれた父親は本当にいい父親だと心から思う


(あれさえなければの話だがな…)


地面を少し掘ってその上にアメヌラシの葉を隙間なく敷き詰めていく


「ちいさなため池作るなら魔法陣をえがくためのものも作っといたほうがいいな」


そう呟いてアメヌラシの葉の中でも特に小さい生えたての葉を探す。

アメヌラシは基本硬くて丈夫な葉を持っていて強風にも耐えるので学校や家などいろんなところに生えているが、丈夫になる前の生えたての葉はとてもやわらかく、茹でて食べたりすると美味しいので学校ではアメヌラシを収穫するのが行事にもなるほどだ。


「これだ、これこれ」


大きなアメヌラシの葉をかき分けて生えたての葉を取る。


その葉にちいさな枝で穴を開け、その穴を中心にホイップクリームの絞り袋のような形をしたものをつくる


「多少荒いやり方だがこれでも出来ないことはない」


魔法陣を描く準備まで整ったので、周りに生えている魔宝花を茎の部分を上にして水を垂らさないように回収した。


(12本ぐらいあればなんとか作れそうだな…)


魔宝花は遠くに行って探さなくてもいいぐらいに密集して咲いていたので12本はすぐに集まった。


疲れたので木陰に座って休もうとしたとたん、ポツポツと雨が降り出した

さっきまで晴れていた空は厚い雲に覆われていかにも雷が降ってきそうな天気に変わってきた。


「最高のタイミングだな。20分ぐらい溜めれば魔法陣をえがくために必要な水ぐらい集まるだろう。それまでひと眠りしとくか」


水を溜めている間に他のことをしてもいいと思ったが、ストーカーの男の警戒心をほどくためにもあえて無防備な姿を晒すことにした。


(相手が何をしてくるかは分からないがここは相手に隙を見せることで相手の気を緩めることができる。しかし一応のために俺も警戒しておかないと、隙ができた獲物を仕留めるのは相手にとって容易いことだろう)


人との付き合いの中で学んだことを活用して相手をおびき寄せる。


人間と吸血鬼のハーフである俺は生まれながらにしてどちらともの文化を知ってきた。

そして教育までも人間と吸血鬼、両方を使って育てられた。よって付き合い方も使い分けることが可能だ。

だからこそ、今回のようなケースでは相手を刺激させることなくおびき寄せることをしている。


(魔法さえ使えれば相手をおびき寄せたりその場で捕らえたりすることだって可能なんだが…これは不自由すぎるな…)


やはり普段平然と使ってたものがなくなったりするとどうしても気持ちが落ち着かない

それほどに魔法というのは画期的であり、革命的なものだったことがわかる。


(意外と相手もしぶといな)


ここまで隙のある行動をしているが、一向に襲ってくる気配がない


(俺を狙ってないのか?じゃあここまでして俺を追跡する理由がわからん…)


考えていたが、掘った穴に水が溜まってきたので先にこっちを優先した


(ここの木の下なら雨も防げるし魔法陣を描くのにはちょうどいい。)


自分が座っていたところに魔法陣を描くようにする

柔らかいアメヌラシの葉でつくった魔法陣を描くための容器に水を入れ、その中に魔宝花の茎の水を入れる。

その茎でよくかき混ぜてできた水でゆっくりと魔法陣を描いていく。


(こんなことをやったのも十何年ぶりだろう、、全く上手にできねぇ)


力を入れれば容器が壊れる、だからといって力を緩めすぎればきれいな線が描けない

厳密な力の入れ具合と悪戦苦闘し、ようやく描いた魔法陣はいかにも『不格好』な見た目をしている。

しかし、魔法を使うには十分な形だった。


神経を集中させたせいか、牙竜は汗だくだ。


「こんなに頑張って魔法陣を作ったのは初めてだ。これを見つけた人間も面白いものだ」


不格好な魔法陣はどこか薄く光っており、魔法陣から魔素を放っている。


「一応成功かな、、これでストーカー男が誰なのかが分かる」


魔法陣の手前で手をついて魔法を唱える


転移召喚トライス


転送系の魔法だ。主に指定された1番近い物体を転送する時によく使われる魔法で、転送する物体ごとに魔法陣の形が違うので間違えることがなければかなり使いやすい魔法となっている。


唯一のデメリットとしては転送までに少し時間がかかることぐらいだ。


もちろん引き寄せる物体は「人間」だ

吸血鬼だった場合には効果がないが、他の動物がここまで上手に隠れて俺の様子を伺うことはほとんどないだろう。


3つ挙げた考えられる今の状況の中で、『ここの場所が魔法を無力化する場所だから』は、魔宝花によって選択肢から外され、残るは『自分が魔法を使えなくなった』『この世界から魔法という概念が消えてしまった』の二つになるが、この二つを明確に証明するにはもう少し時間がかかる。


それを含めてまず第一に行うことは事情聴取だと思う。

たとえそれが俺を狙っている誰かだとしても、だ。


蒼く光っていた魔法陣が急に色を変え、赤紫色に光り出した。


「もうそろそろかな」


魔法陣が赤紫色に光るのは転移召喚トライスの特徴で、物体を転送する準備が完了した合図だ。


「さて、どちら様でしょうか」


赤紫色に光った魔法陣はバチバチと電撃が走るような音を出して見事に人間を転送させた。


「!? な、何が起こった!?」


当然転送された人間は何が起こったのかわからずに驚くのは当たり前だが、驚いたのは転送した側の俺も驚いていた


「その声…お前!」


どこかで聞いたことのある声だった。


「七瀬か!?」


その声は確かにスナイパーで援護してくれた七瀬の声だった。


「ん?」


振り向いた人間の顔も七瀬にそっくりで、服装だけが俺の知っている七瀬と違っていた。


「七瀬だよなぁ!よかった。俺以外にもここに来てたんだな。その服装どうした?他のみんなはどこに?」


流石にいきなり転送させたから七瀬も若干困っているがとりあえずこの状況を打破するための仲間がいるのは心強い。


七瀬は動揺しながらも状況を理解して第一声を放った




「お前、誰だ?」









最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

赤坂蓮です。今回のテーマは『魔法』ですが、そのテーマを奪ってしまったがためになかなか話が進まずに困ってました。やっぱり内容を考える上で魔法を使うバトルシーンがなくなってしまうとどうしても内容が浮かばないんですよね…なんで魔法を消したんだろう…

なかなか話が進みませんでしたが話が進まないからこそ隠されたメッセージなどが潜んでることもあるので、繊細に書かれたシーンもしっかり読むと違った面白さを見つけれるかもしれません

長文になりましたが最後まで読んでくれてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ