誇大妄想狂
「この世界は俺を中心に回っている」こんな誇大妄想のようなことを思ったことはあるだろうか。新譜のJPopの歌詞、世界で起こるニュースなどetc…。
こんなところにもそんな誇大妄想を抱える青年が一人いた。彼の名前は青葉ワタル。前文で説明するように、彼は世界が自分の働きかけによっていかようにも変化すると信じきっていた。客観視すると彼はいわゆる「中二病」である。世界の陰謀や策略などを抱えて、自分は一見ただの高校生だが、実は特殊な力を秘めていると信じきっていた。
そんな彼はある日、映画のレビューサイトを見つけた。映画、アニメ、ゲームが好きな彼はその日から映画のレビューの投稿を始めるようになった。そのサイトにはチャット機能がないので、会話は「〜さんのおすすめで〜」など、レビューの中に書くことになる。
そんなある日、彼は何を思ったか、相互フォローの中から何人もフォローを外していって、自分がフォローしている数よりも、フォロワー数の方が多くなるようにした。反発を受けるかと思ったが、意外や意外、彼のフォローを外す人はいなかった。彼は自分が少し偉くなったような気がした。
しかし、調子にのった彼は、さらにフォロー数をけずっていった。すると、警鐘をならす声が彼に届いた。それはある40代の男性のレビューで、内容は映画「リング」の感想で、「貞子がまた悪さをしている」といったものだった。最初は偶然だと思った彼だったが、さらにフォロー数をへらすたびに、そのリングのレビューをタイミングよくのせてくるので、彼は、これは警告だな、と感じた。
そして今まで125件のレビューをしたそのサイトを辞めた。もっと言えば全部のデータを消した。
最初はこれでうるさいことは言われないで済むと思った彼だったが、その後、彼は突然後悔の念に襲われた。「自分の居場所がない!」と思えたからだった。
そして何げなくTVをつけてみると、インドネシアで、映画を撮影していたインドネシア人の青年が突然ナイフで街頭の人々を切りつけていった、というニュースが流れてきた。誇大妄想狂の彼は、「これは…サイトを消した俺のせいだ…」と思いこんだ。
そして精神的に大きなダメージを受けた。
そして、精神科の妄想障害の枠に通院した。そう、彼は自分が世界の中心であると確信を持ったのだ。
精神科からだされた薬を飲んでいるときは、ニュースが自分には関係ないと思え、気が楽になった。
草間彌生もそうなのかなぁと彼は思った。