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#7 2019.6.2 14:13

 数分前に店を出ていった二人を追った私、野原かえでは、バカな兄貴が引かせた紙に書いてあったらしい近所の公園へたどり着いた。自分の占いで出た場所とはいえ、特に目新しくもない老朽化の結構進んだ遊具とベンチがあるだけで、後は少々広いくらいしか売りのない公園というのは、男女二人が昼間から行くにはどちらかといえば合わない気がするのだけど……。まあ、夜ならまだしも?ベンチとかあるし、適度な茂みとかあるから……男女のそういうことをするにも適してはいる……のかしら?まあ、私みたいな中学生なら完全にアウトだけど、大人なんだし、やりたいことは勝手にやってくださいって感じ?逮捕されようが本人の勝手だし。

 ……と、世間一般にはませたことを考えているうちに、私は件の公園へ到着した。入り口付近にはあの二人の姿は見当たらない。あれ、もしかして、追い越しちゃった?そもそも、紙に書かれた結果を信用せずに、別のところへ行っちゃった?あんな不愉快な態度を取られれば、無理もない話か……と公園に背を向けたところに、親子連れが公園から出てきたのだ。

 親子連れが出てくること自体は全く珍しくない。公園だもの。そりゃ、子供を連れた母親が子供を遊ばせに来るのは至極自然なことなのだ。では、なぜ彼女たちが目に留まったのかというと……

「離しちゃだめよ、すぐとんでっちゃうんだから」

「はーい、おかあさん」

そう、子供は手に風船を持っていたのだ。日常生活において子供がひも付きの風船を手に入れる機会など、そうそうないはずである。

 その光景を見たことで、足は再び公園の中へ向いたのである。そういえば、普段は子供の声くらいしかしないはずなのだが、大人の声が多く聞こえてきていた。何だろう……?

 公園を見渡せる入り口についたことで、その理由ははっきりとわかった。地面に広げられた多くのレジャーシート。その上に並べられた洋服や小物。その付近を歩き、シートの上の人と話す人々……。

「フリー……マーケット?」

 どうやら、近所のガス販売支店がたまに開いているらしい地域密着の中規模のイベントらしい。普段はバス通学以外ほとんど外に出ないから、今日がその日なのはすっかり忘れていた。でも、地域のなんでもないようなフリーマーケットだ。こんなところに観光客がきたとして楽しめるとは思えない。あの二人も、とっくの昔にここを離れているのでは……?付近を眺めていると……あ、いた。

ある一つの店先(と言えばよいのか?)に並んだ小物を見て、何やら話が盛り上がっているようだ。話はけっこう長く続いており、小物を手に取っていた男がそれを買って歩いていくまでに10分以上はかかっていた。

 ……なんだ、一応は満足しているようじゃないか。さっすが私の占い。そうそう外すこともないよねー。これ以上遠くから様子をうかがっていてもきりがないし、そろそろ帰ろうか……と思っていたところ、二人はイベントで盛り上がる公園から少し外れたベンチに座り、肩を寄せ合うように……あ、これ他人が見てちゃいけないやつだ、静かに帰ろう……。と摺り足で移動し始めたその時。

「ニャーオ!」

「わわっ!?」

カラーン!ネコに驚いた私は、驚いて飛びのいた先の空き缶によって、盛大にスっ転んでしまった。うう、早く帰ろう……。


 ったく、さっきの案内所は散々だった。無愛想な店員に古ぼけた内装、あげくのはてに得られた情報は適当に引いた紙切れときたもんだ。半ばやけくそになり、俺は赤井さんと、紙に書いてあった場所、さざめき公園へ向かっていた。

「なぜ、公園なのでしょうね。祝日や休日ならではの場所、と趣旨は話題に出していたはずなのですが」

赤井さんは歩きながらも、紙の内容にずっと首をかしげている。いやいや、逆に何故正しい答えをもらっていると信じきっているんだ……。

「いや、適当に近くの場所書いておいてただ引かせてるだけでしょ。むしろなんでこれで案内してもらえていると感じるのか俺は不思議でしょうがない」

俺の問いに赤井はますます頭に疑問符が浮かんでいるようで……。なぜだ。

「不思議、と言われましても……少なくとも、あの男性が書いたものでないなら少しは信用しても罰は当たらないかな、と思ったまでです。何も指針がないよりはよっぽどましですしね」

そう指摘されたことで、俺の視線は改めて先ほど引かされた紙切れへ。

「さざめき公園」

少し内容から意識を離してみれば、なるほど少し丸めの文字のようだ。だがこれだけであの男の文字でないというのも根拠に欠けるというか……。

「十中八九、あの人の字ではありませんね。昼寝していた横に、書きかけと思われる書類が見えていましたから」

そんなところを確認していたのか……。あいつへの怒りで、他は気にしている余裕はなかったな。

「それに、店内のいたるところに、あのような態度では気が回らないようなインテリアがなされていましたからね。たぶんその紙はその方によって書かれたんでしょう。それなら、信用の面でもそこまで捨てたものではないのかもしれませんしね」

単に店員の態度だけで判断するものでもないか。これからは細部にも目を向けてみるかね。

 そんなことを話しているうちに、さざめき公園が見えてきた。うーん、やはりなんの特徴もないような、ただの公園だ。しいて言えば、結構広そう、と周辺の立地からわかるくらいか。

「やっぱり何の変哲もないただの公園みたいだな……。どうする?赤井さん。とりあえず入ってみようか」

「当然、そのつもりです」

やはりただの公園なのか、という疑いはやはりぬぐいきれないようで、赤井さんは少し上ずった声でそう答えると、先導して公園へ入っていく。

 公園に足を踏み入れ少し歩いてみたところで、あながちあの紙は間違っていなかったのではないかと考え始めるようになった。店主と積極的に話してすでにいくつか商品を購入している赤井も同様だろう。偶然開かれていたフリーマーケットは、休日について考えるにはちょうどいい題材なのかもしれないとも思い始めていた。皆の休日が一致しないと、このように一般人から供給側と受給側の両方の参加が必須の行事は成立しないからである。

 若い女性が手作りのコップやカレンダー、アクセサリーなどの小物を販売しているところに、赤井と二人で立ち寄ってみた。

「こんにちは。こちらではどんなものが出品されているのですか?」

赤井の何気ない問いに、店主はきさくに答えてくれた。

「たいしたものではないんですけどね~。日ごろから趣味も兼ねてちょくちょく作ってるアイテムを並べてるんです。旦那もときどき手伝ってくれてるんですよー」

「旦那さんと二人で……それはなんとも、楽しそうですね……」

なぜだろう、少しこちらに視線を向けつつそうひとりごちた赤井は考え込んでいた。そこで、おせっかいにもとれるだろうが、自分からも気になったことを聞いてみた。

「ペアになっている小物が多いようですが、一緒にこれらを作ったという旦那さんはどちらに……?」

そう聞くと、店主はどこかあさっての方向に向きつつ……

「……休日出勤です。顧客のシステムに緊急の対応案件が入ったとかで……」

……地雷を踏んでしまったらしい。夫婦の愛も仕事には勝てないというのか……。うう。

「大変ですね。前々からお二人での参加を予定していたのでしょう?」

「まあ、残念ではありますが、仕方ないですよ……そういう業界ですからね」

「お互い大変ですよねえ、水無月さん……」

店先に並んだカレンダーを手に取りつつ、赤井は遠い目をしながらあきらめたようにそうつぶやいた。ああ、赤井さんも休日出勤多めなんだ……はあ。

「だなあ……ははは……」

店主と赤井と俺が乾いた笑いを共有し、一通りを堪能したところで、少し疲れたという赤井のために公園のベンチに腰かけた。

「赤井さん、何買ったんだっけ? ……おっと。静かにしなきゃ、な……。」

赤井が疲れからか寝てしまっていたのを見て、そういえば自分もある気が続き少し疲れていたのに気付くと、少し睡魔が襲ってきた。うう……。とそこに、

ガランゴロンドシーン!

大きな音に、二人はたたき起こされたのであった。

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