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#4 2019.6.1.13:34

五月の後をついていき改札口を通過すると、そこに見えたのは……

「時刻表、か。」

ある程度予想はついていたが、実際に見ることで印象は……特にない。あくまで簡素な時刻表だった。

「祝日と言われて、連想することのTOP3には入るでしょうね、大人なら。」

改めて説明することもはばかられることではあるが、電車の運転スケジュールには「平日ダイヤ」と「土日祝ダイヤ」が存在する。普段と同じ感覚で駅へ行くと、いつもの時間に電車が来ない、という感覚はだれもが1度は経験しているのではないだろうか。

「では、試しに乗ってみましょうか。」

「あれ、まずはこの街で調査するんじゃなかったのか?」

「数駅だけ移動したら戻ってきますよ。何かしら刺激がないと、調査の手がかりも得られませんよ?」

祝日の影響を調べるため祝日ダイヤの電車に乗る。この考えを否定する材料もなかったので、物は試しと乗ってみることにした。

現在はやがて午前11時になろうとしている。平日であれば外回りのサラリーマンや主婦が多く乗っている時間帯だったように思われるが……

「そもそも、乗客が少ないな……」

「私たちは普段この時間役所のはずですが……なぜご存じなので?」

「いや、連絡と多少のペナルティと引き換えに優雅な出勤が得られるのならたまには使いたくなるだろ?

「さぼりが多い、と」

「報告はやめてくれよ」

「勤務態度次第ですかねー」

そんな他愛ない会話をしているうちに、電車は次の駅へ。あまり大きな駅ではなかったが、乗客の大半は下りて行った。中には、手にチラシのようなものを持っている人もいる。

「降りてみましょうか」

囁くように言った五月の言葉に従い、二人でこの神の郷駅に降り立った。改札を過ぎ少し歩いたところにあったのは、美術館だった。アメリカの有名らしい画家のを売りにした特別展が開かれているようだ。開催日は……。

「美術展か。個人としてはあまり興味はないんだが……祝日調査員としては、これをスルーはできないな」

なにせ、開催日は「6月の各土日」だ。

「祝日の楽しみか、これも」

「ええ、役所だとこういう催しにはあまり縁がありませんが、大体の施設は行いますよね、休日に……イベントを」

けっこう客の入りはあるようで、鑑賞を終え楽しげに出てくる人たちの姿が目立った。

 結局絵自体を鑑賞することはなかったが、収穫として元の駅に戻ってきた俺たちは、構内を眺めながら本日の調査結果をまとめ始めた。

1.祝日には駅の運行ダイヤが変わる。

2.祝日には多くの催し物が数々の施設で開かれることが見込まれる。

「……これだけかなあ。調査結果としては」

「字面だけ見ると、小学生の自由研究以下の常識にしか思えません、ね……」

初日の成果として、これはどうなんだろうか。前例のない調査対象ではあるから、さぼっていると判断できる材料もないだろうと……おも、われ、る?

「さて、日も暮れてきたわけだけど、夜はどうするんだ?」

「この調査の間、水無月さんには決まった宿が用意されているようですよ。」

「ん?赤井さんはどうするの?」

「私も今日は同じ宿に泊まる予定ですが、私は1か月フルで調査するわけではないですからね……水無月さんと同じ宿をその都度取ることになるかと」

「えー?自分一人だけでの調査になる日があるの?てっきり1か月この二人で進めていくものかと……」

「まあ、誰もそんなこと、言ってはいないですからね」

……確かに。

本日の宿はシンプルな民宿だったようだ。宿泊手続きを進めていた五月は、なぜか財布を広げ浮かない顔でこちらに戻ってくると、こちらに暗いトーンで話しかけてきた。

「水無月さん、祝日の特別な要素、もう一つ見つけましたよ……」

「ん?なんですそれ?」

「……宿が、特別料金に、なります……」

「……いくら足りないの?」

「すみません、お願いします……」


歩く時間が普段の業務に比べ格段に長かったこともあり、一人部屋であっという間に俺は深い眠りに落ちていったようだった。こうして、祝日調査初日となる6月1日の調査は終了した。


1.祝日には駅の運行ダイヤが変わる。

2.祝日には多くの催し物が数々の施設で開かれることが見込まれる。

3.祝日には宿泊施設利用料金が特別価格になる。


「……はい、初日の調査を終えました。調査結果としては他愛ないものでしたが……水無月さんなら……はい、やってくれるでしょう。ですから、そのあかつきには自分を……はい、約束ですよ?部長……」


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