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#3 2019.6.1.09:37

 声をかけられた方へ振り返ると、立っていたのは赤井さんではなかった。メガネをかけ、暑さが増してくるこの時間帯にはいささか不向きに感じられる厚着をしている、30代ほどの女性であった。その手元から、自分に向けてビラが差し出されている。何の気なしに手に取って見てみると、その冒頭に書かれていたキャッチフレーズが目に飛び込んできた。

「24時間戦えますか !? 365日勤務の会」……

ビラを渡してきた女性は、ビラを自分が受け取るとすぐ離れ周辺の通行人に次々とビラを渡し始めていた。

「それ、最近よくみるビラですね。」背後にいつのまにかまわっていた赤井が唐突に話しかけてきた。「そうなの?」「私、この駅から出勤しているので。サラリーマンを中心に、より成果を上げるために休日も出勤できるようにする……昨今の働き方改革に反対するグループらしいです。」確かに、ビラには赤井の言ったようなことが書かれていた。積みゲーの消化、レコーダーのデータの整理、映画……と休日にやることが山積みな俺からすると、この考えには全く賛同しかねる。と、手で顔を仰ぎつつ、「どこか店へ入って今後の方針を話しませんか?突っ立っていても単なるサボりにしかとられないのでは」と赤井が提案してきた。休みたいのはやまやまだったので、周辺を見回して手ごろな喫茶店に入ることにした。

 席へ着き飲み物を適当に注文した後、話を切り出してみた。「さて、今後どうすればいいかね?」「どう……とは?」「そもそも指針がないからなあ、何をしていいか全くわからない」そういうと赤井は嘆息し、「私も似たようなものですが……」と少しずつ話し始めた。

「今回の業務内容は、1か月をかけ祝日について調査し、最終的にはどの日が祝日向きかを提案するという抽象的なものです。……水無月さんは、祝日というものについて、考えたことはありますか?」そう言われると……「考えたことはないなあ。しいて言うなら、6月が誕生日だから、6月って祝日無いんだなあ、と意識したことがあるくらいで。」「あら、今月が誕生日なんですか。それはおめでとうございます。まあ、かといって何かしてあげるわけではないですが」「それはどうも。……赤井さんは祝日について考えたことは?」

彼女は少し考えた後、ためらいがちに「今年は特別でした。」とだけ言った。ほう。

「赤井さんの誕生日、当ててみせよっか。……5月1日でしょ。」それを聞いた赤井はにやにや笑いをしつつ、「残念でした。2日のほうです」と、若干ドヤ顔になっていた俺の推理を否定した。ああ、そっちもあったか……「名前が五月だから5月生まれ、今年は特別な日、つまり皇太子殿下の即位により祝日となった1日である……そこまではあってますよ。褒めてあげます。まあ、法律で同様に休みとなった2日の存在を失念するあたり……水無月さん、考えが浅いですねえ」……むぐぐ。なんで今日であったばかりの人にそこまで言われねばならんのか。まあ、見落としていたのはこちらだしな……「それは失礼した。で、どんな特別な1日だったので?」そう聞くと、待ってましたとは言わんばかりに彼女の目が輝きだし……「朝10時まで寝ていられました!」うん、もう聞くまい。

 さて、気を取り直しまして。「祝日調査、どう進めようか。」「祝日と平日の違い、まずはそこをさらうのが大事ではないでしょうか。とっかかりがないと何もできないまま一日が終わってしまいますしね。まずはあそこから見てみませんか?」彼女がそう言って指差したのは、窓から見える、先ほど二人が合流した駅であった。


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