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#2 2019.6.1 08:59

「都内の山手線沿線の某駅に、6月1日午前9時に待機していてください。」

課長に渡された指示書に従い、俺は駅前に普段通りのスーツ姿で立っていた。6月とはいえまだ関東は梅雨入りしておらず、今日も暑くなりそうな強い日差しである。日光を遮るために手をかざしたところで、9時を告げる時計のチャイムがどこかから聞こえてきた。どこかの学校のものだろうか。何の気なしに音の聞こえてくる方へ顔を向けてみた。

 すると、突然視界が遮られ暗くなった。これは……帽子?少し下がってしまった頭を上げると、そこに立っていたのは一人の女性だった。スーツをかっちり着こなし、帽子から手を放して「気を付け」の体勢をとった彼女に、俺は一言聞いてみた。

「ええと……いろいろ聞きたいんですけど、まず、この帽子、なんでしょうか?」

女は、何をいまさら、とどこかあきれたような口調で、

「もう仕事の時間ですよ、水無月玖郎さん。無駄話もなんですし、さっさと本題に入りましょうよ。」

……誰だ?なんで俺の名前を知っている?不思議がっていると、女はこちらに名刺を差し出してきた。目を通すと、勤務先には自分にも見慣れた職場の名前が書かれていた。どうやら、課が異なるだけで、彼女も同じ職場に勤めているらしい。初対面なのだが……。

「あー……赤井、さつ」

「いつき、です。五月と書いて、いつき」

……コンプレックスのようだ。気を付けよう。下の名前を呼ぶことが今後あれば、の話だが。

「で、赤井さん。なんであなたはここにいるんですか?もしかして……」

「あなたと同じ業務ですよ。祝日に関する調査の話を持ちかけられまして」

「なぜあなたに?理由は正直、自分と同じかと思っているんですけど」

「……名前、です」

「あの人もこだわるんですねえ、直感に……」

「まったく、です」

 立ち話をずっとしてもきりがないので、業務について聞いてみた。正直、ここに来るまで、今後の予定は、1か月空けておくこと以外は聞かされていなかったのだ。

「私は、あなたの補佐をし、調査を進めるように、と聞いています。この帽子は、あなたにかぶらせるように、と」

「課長が?」

改めてかぶせられた帽子を手に取ってみてみると、“祝日調査中! ご協力を!”と、目立つように太い文字ででかでかと書いてあった。か……かっこ悪い……。

「かぶらずに調査を行うのは得策ではないとのことです。……給料出ませんよ」

「ほ……本当、ですか……」

「あの様子は本気ですね」

給料は見過ごせない……。しぶしぶ帽子をかぶり直したところで、今後の流れを彼女に確認してみた。

「祝日調査、といっても、具体的に何をすればよいか、全く聞いていないのだけれど、赤井さんは何か伺っていますか?」

赤井さんはその問いに、少し表情を曇らせると、こう述べた。

「……さあ」

……だめだこりゃ。


 どうしたものかと立ち尽くしていると、一本の電話がかかってきた。電話の主はかちょ……課長!

「もしもし!課長ですかっ!水無月です!」

軽い口調で、聞き慣れた声が返事を返してくる。

「課長ですよー。水無月君、赤井さんと合流できた?」

「赤井さんなら隣にいますが、これから私たちは何をすれば……?」

「調査だよ?祝日をどの日にするかの」

「……ピンとこないのですが……。全く具体性ないじゃないですか」

……課長によると、1か月の中でどの日を祝日にするか、を最終的に意見として提出するのが業務ではあるが、適当に日を決められても意味がないとのことだ。……それは至極当然だろうが。そこで、丸一日街中を回り、様々な視点から街を見つめ、祝日の雰囲気を感じ取り、もっとも適した日を選んでほしいと……。

「いやいや、今日は土曜だから祝日に近いかもしれませんが、今後の調査のほとんどは平日でしょう?調査の意味がないのでは……」

「なーにを言ってるの。祝日の日を決める、ということは、それ以外の日を平日とするということだよ?」

……ああ、確かに……。合わせて、平日とはなんぞや、ということも調査する必要があるのか。

 そもそも前例がないので、調査方法についてはある程度任せる。自由にやってみてくれ……という、投げやりともとれる内容を残し、課長からの電話は切れた。

「……はあ、どうしたものかね、これから……」

と、赤井さんに聞いてみたつもりだったのだが……そこには、赤井さんとは違った人物が立っていた。……うん?


週一回、日曜から月曜にかけての投稿を目安とします。

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