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第03話.未知の景色

ルーが喋りました。

 しゃべる猫を目の前にして、一言も発せず、まるで鯉のように口をパクパクさせていると、


「あー、やっぱりか。幸助、お前、見えるようになっちまったな。…余計なことしやがって」


 ルーは煩わしそうに、そしてどこか悲しげにそう言った。そんなルーに僕は思い切って聞いてみた。


「…な、なんで猫が…しゃべってるの?」

「ふん、猫は猫でも只の猫じゃねぇ。動物霊さ。俺は事故で死んだんだよ」

「死ん…だ?」

「お前が俺を助けようとしなけりゃ生きてたかもな」

「そんな…僕の、せいで…」


 後悔と罪悪感でいっぱいになり、どうしていいか分からなくなった。せめてルーに謝罪しようかとも思ったが、かえってそれが失礼な行為かもしれないと思った。謝ったところで、ルーが生き返る訳ではないのだから。


「おい、そんな顔をするな。別にお前を恨んじゃいない。まぁ、仮にも俺を助けようとしてくれた訳だし…。ただ、一言忠告しておいてやろうと思ってな」


 ルーが言うには、どうやら僕は事故前から霊力というものが高かったらしく、事故をきっかけに生死を彷徨った事でその力が完全に目覚めてしまったらしい。今後、ルーだけでなく、いろんな霊が見えるだろうとの事。


「だが、心配するな。霊ってのは見える人間を感じ取れるわけじゃない。幸助が見える人間だと分かれば近づいてくるだろうが、バレなきゃ問題ないんだ。だから、いいか。霊が見えても見えてないふりをしろ! 今まで通り普通に生活するんだ! 分かったな?」


 ルーはそれだけ言い残し、僕の返事を待たずして僕の目の前から姿を消した。


 僕は疲れていたのか、緊張の糸が切れたようにその日はそのまま眠りについた。


 ーー翌朝ーー


「おはようございます。お加減はいかがですか?」


 看護師さんの挨拶で目が覚めた。

「はい、なんとか大丈夫です」と言いかけて僕は固まってしまった。看護師さんの後ろに暖色系の煌びやかな着物を着た綺麗な女の人が立っている…いや、浮いていたからだ。


「どうかしましたか?」


 看護師さんに問いかけられ、我に返った。


「あ、いえ、何でもないです」


 そうは言ったものの、若干の動揺を隠し切れない僕を看護師さんは怪訝そうに見ながら、僕の体温や血圧を測ると病室を後した。


『びっくりした…。今のが背後霊ってやつなのかな』


 昨夜のルーの言葉、『見えても見えてないふりをしろ』が何度も何度も頭の中を駆け巡った。ルーの言った通り、その日から僕の景色は一変したのだ。

最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

次回から物語が動き始めます!

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