最弱魔法使いの最強センジュツ
不定期どころか気分で投稿する自己満足作品です。生温かく見てください…
鳥の鳴き声も聞こえない、風の音もない。
まだ薄暗い明け方に黒いマントを着た一人の少年が歩いていた。
その少年が城壁の守護兵と数度言葉を交わし、門をくぐり、つぶやいた
「なるほど、警備自体はしっかり行き届いているらしい。PCもしっかりと確認しているようだ。城壁の厚さも素材も大丈夫なようだし、3年間ならさすがに死神派遣協会もおとなしくしてくれるだろう…いやないな。」
そこで少年は一度立ち止まり、城壁に近づいた。
「一応何枚か『符』を貼っておこう。油断が一番の敵だからな。」
少年はそう言って、懐から出した薄い紙を城壁に張り付けた。
それを見た兵士は少年を止めようとしたが、気が付くと少年は消えていた。
「なんだったんだ、いったいあの子供は……」
壁に貼り付けられた紙切れは夜明けの光とともに溶け込むようにきえていった。
*****
王都フェニキアス
そこは、フェニキア王国の首都と呼ばれるところだ。俺はここに『魔法』を学びに来た。
俺はいわゆる冒険者であり、旅人とも放浪者とも呼ばれるものだ。
顔は平均的で眼鏡をかけている。特徴というと目つきは鋭いと思う。あと、髪はサラサラだ。だが、いろいろあって髪の毛は銀髪だ……。いや、やめよう、白髪だ。身長は高いほうだと思う。体つきは、見てくれは細く見えるが、これでも体は鍛えていて、結構着やせするタイプだ。
好きなものはアニメ、冒険だ。ん?何でアニメを知ってるかって?
異世界転生者だからに決まってんだろーが!
まあ、それはおいておこう。なぜなら俺は異世界転生したのにこれと言ってすごいところも恵まれているところもないからだ。いたって普通で、田舎の村に転生して、異世界からの知識なんてこれと言って使えそうなものなんてない。
それだけではなく、なぜか俺は死神に愛されているらしく、毎月1回は死神派遣協会か
ら」命を狙われる始末だ。
そんな俺だが、やはり異世界に、それも魔法もあって魔物もいる世界に来たのだから魔法を使ってみたいわけだ。
そこで、冒険者稼業で貯めたお金をはたいて、ルグノール魔法学校に通うことにした。
日本とは違って、この世界の学校は10歳になる年から初等部入学、15歳になる年で卒業後、高等部入学3年で卒業となる。成人は15歳。結婚もお酒も、なんと煙草もこの歳からOKだ。
俺は今年の9月で15歳となる。(この世界の暦はほとんど日本と変わらないみたいだ。変わっているところといえば、月は30日に固定で、閏年というものもない。)そんなわけで、所詮編入というやつだ。だからここにいるのは3年間になる。
その間に魔法を学びたい。ほかのやつらはすでに5年も魔法について学んでいる。頑張らなければ。
宿に行ってから学校に行こうと思っていたが、宿も学校の場所もわからないため、遅刻しないためにもこのまま学校へ向かうとしよう。
*****
「というか今更だが、学校ってどこにあるんだ?今まで王都なんて来たことなかったからな、地形とかさっぱりだ。」
王都フェニキアはいわゆるレンガ造りの町並みで、露天なんかもいっぱいある都市だ。
スラム街なんかもあるらしく、治安はあまりいいという話は聞かない。
明け方ということもあり、人の気配はない。
のはずだが、近くの路地裏のほうから話し声が聞こえてきた。
「本当にこの娘なんですか?兄貴。」
「そうだ、間違いない。この赤い瞳がその証拠だ。」
あー、これはいわゆる誘拐の現場ですね……。普通ならここは颯爽と現れて助けるところなんだろうなぁ……。でもめんどくさいなぁ……、だって王都についたばかりだし……。
うん!ここはスルーだ!そうしよう!きっと誰かが何とかしてくれるさ!
そう思い、その場を去ろうとすると
「ちょっと、そこのあなた!なに素通りしようとしてるのよ!普通は助けるでしょ!男なんだから!」
いかにもな人が出てきましたね~はい。
金髪を、リボンで縛ってあるポニーテール、赤色の瞳に、つり目の性格きつそうな女が出てきました。こういうやつに限って戦えないくせに人のことをズバズバいうんですよね~。こういう手合いは無視にかぎります、はい。
そう思い今度こそ、その場を去ろうとすると
「なに無視してるの!そこのあなたよ!あなた!」
と怒鳴られました。俺、無視、続行。こういうのと関わると後々大きな問題事に巻き込まれるからな。
「まあ、別にあんたなんかいなくても私が助けるから別にいいけどね!」
そう言って彼女は路地裏に飛び込んでいった。
じゃあさっさと行けよ!俺に話しかけてないでさぁ!と言いそうになったが、そこは大人な俺、余計なことは言わなかった。
さらに大人な俺は一応出くわしてしまったということもあり、ことの顛末を見ていくことにした。
*****
「しっ!」
最初に目にしたのは赤い一閃だった。敵の心臓めがけてのまっすぐな一撃。なるほど、彼女はあの赤いレイピアをつかうのか。その一閃が外れた直後、彼女は敵に掌を向けて言い放った。
「‘‘火の玉‘‘!!」
バスケットボールくらいの火の玉が、手のひらから飛んでいく。
「おぉっと!」
ほう……、彼女は省略詠唱もできるのか、思ったより‘‘できそう‘‘だな。
二人の男のほうも、彼女の攻撃を難なく交わしていた。
「無事?シェリア?」
「レイラ!?何でここに!?」
「それはこいつらを倒してからにしましょう。すぐ片付けるから待ってて。」
「う、うん。」
「兄貴!こいつ、省略詠唱を使いますぜ!」
「なるほど、見たところ、ルグノール学園生か…。なら、お前はそこの女をおさえておけ。この女の相手は俺がしよう。」
「了解です!」
なるほど、奥にいるのが絡まれていた娘か。ロングの銀髪、紅の瞳、優し気で垂れ目ぎみな目つき、顔立ちも整っており、スタイルもメチャメチャいい。まるでお姫様のようだ。
二人の男は、いかにも盗賊ですっていう感じの男たちだな。黄色いバンダナをつけているのが、下っ端のようだ。髪型がいわゆるロン毛の男が兄貴のようだ。
見たところ、兄貴と呼ばれていたほうが強いように見えるがそっちが彼女の相手をするとなると、ちょっと彼女のほうが‘‘不利そう‘‘だな。しょうがない、大人な俺が、少し手助けしてやろう。
「いくぞ!小娘!」
そう言って兄貴と呼ばれた男は腰にあったサーベルを抜き放ち、赤髪の彼女に切りかかる。
彼女のほうも、レイピアで受け止めながら、反撃に転じようとするが、男のほうが力も対応力も技術も一枚上手のようだ。だんだんと押され始める。
いくつか剣戟を交わしたのち、ついに彼女のほうが押し負ける。そのまま後ろに倒れこみ、尻もちをついてしまう。しょうがない、やるか。
「これで終わりだ!」
男は大きく振りかぶり、少女にとどめを刺そうとサーベルを振り下ろそうとする。
「『符術』雷撃。」
俺は、懐から『符』を取り出し、そう唱える。唱えた直後、『符』が光と共に空気に溶けるように消え、そこから、‘‘稲妻‘‘が現われる。その‘‘稲妻‘‘は男にまっすぐに飛んでいき、被弾した。
「ぐあぁ!なんだ一体!」
バチィ!という音とともに、男がうなり声をあげる。その一瞬のスキを少女は見逃さずに、「やぁっ!」という声とともにレイピアを突き出す。その一突きは男の腹部に突き刺さった。
ぐっ、と声を出し男が後ずさる。少女は立ち上がり、男たちに掌を向けて叫ぶ。
「投降しなさい!それとも、黒焦げになりたい?」
さて、これくらいで俺の役目は終わりだろう。今度こそ、俺はこの場を去った。
*****
さっきの光はいったい何だったんだろう?と私は思いながら、敵への警戒を続ける。先ほど傷を負った男は腹を抑えて、その場にひざまずいていた。
「あ、兄貴!大丈夫ですかい!」
「……はぁ…はぁ…撤退だ、カニス」
「りょ、了解しました!」
「させると思ってるの!‘‘火の玉 ‘‘!!」
火の玉が飛んでいくが、男は膝をついたまま、それをよける。その後、カニスと呼ばれた男が懐から球体のような何かを取り出し、たたきつける。その後、白い煙があたりに立ち込めはじめた。
「げほっ、げほっ、え、煙幕!?」
私がそう言っているうちに逃げ出したのか、煙が晴れると男二人は音もなく消えていた。
「なんだったのよ、一体…。それよりも!大丈夫!?シェリア!?」
「う、うん、ありがとうレイラ」
「あいつら、シェリアを攫おうとしていたってことは、シェリアのことはもう知られているってことね…。」
「そうみたい…」
「もう!1人で出歩かないでって言ったのに!なんで黙って出て行ったの?」
「ごめん…でも、おばあちゃんに挨拶しておきたくて…入学式だから…」
「そうだったのね…でも、やっぱり一声かけてほしかったわ。」
「うん、ごめんねレイラ」
「ほら、帰ろう!いそいで準備しないと入学式に遅れちゃうよ!」
「うん!」
それにしてもさっきの光は何だったんだろう…
*****
先程の出来事の後、何となく大きい建物を探し回ったところ、ルグノール学園の場所を見つけることに成功した。
ここで魔法について学ぶのか…なんかすでに嫌な予感がプンプンするぜ…
ま、何とかなるだろ!
その後、門番の方に学園長室の場所を聞き、塀に『符』を貼って、門を去った。
*****
「失礼します。」
「やぁ、ようこそ我がルグノール学園へ。【彗星】君。」
この一見爽やかに見えるくそじじい…おっと、もとい老人が元宮廷魔導士長でフェニキア3大将軍と謳われた、ラドルフ・H・ウィングスさんだ。
「お久しぶりです。ラドルフさん。【彗星】はやめてください。」
俺は昔、師匠を訪ねてきた3将軍(現在、将軍は1人しかいない)全員とあったことがある。その後、いろいろあってこの人と再会したのは数か月前だ。その時この学園を紹介された。
「では、君のお師匠様と同じように呼ぼうか?」
「嫌なことが分かっている質問はやめてください。まったく」
「まあ、呼び方は置いとこう。それよりも孫との婚約についてだが…」
「学園生活中はよろしくおねがいします!!」
俺はこれ以上付き合い切れるかと、話を遮った。
「ハッハッハ!まあ、その話もおいおいとな。うむ、ではこちらこそよろしく頼むぞ。いろいろとな。」
「では失礼します。」
俺は無視をすることにした。挨拶には来たんだ、いいだろう。
「青春せよ!若人よ!ワッハッハ!」
まったくこの人はこれだから苦手だ。さっさと離れるに限るな。
俺は、乱暴にドアを閉めて学園長室を出て行った。
*****
「あれが例の少年ですか。学園長。」
この声は司書のヘンリー君か、相変わらずいるなら、いるといえばいいものを。
「そうだぞ、ヘンリー君。彼が【世界最強】を継ぐものだ。とても凛々しいだろう。」
「私には、普通の思春期の学生に見えましたけどね。」
「彼は真の強者なのだよ。実力を隠すのがうまいのだ。私もそれで恥をかいたことがあるよ。ハハハ…君も恥をかかないようにな。」
「肝に銘じておきます。今日からは彼の担任ですからね。」
「うむ…彼のこと…頼んだぞ。」
「承りました。学園長も書類の確認、頑張ってください。」
「うむ…ヘンリー君そこで相談なのじゃが」
「失礼します。」バタンッ
最近の若者は気が早いのぅ…。ヘンリー君といい、彼といい。
彼には幸せになってほしいものだな…。
不幸だけの人生などあっていいわけがない。この学園生活ぐらいは彼に平穏を与えたい。
「ま、そのためにもこの老骨に鞭を打って頑張るかのぅ…ふぅ…。」
*****
俺は今、今日から毎日通うことになる教室の前にいる。
まったく、入学式前にオリエンテーションなんて面倒くさいことを…
とはいえ、ここから俺の学園生活が始まるんだ。なんかドキドキしてきたぞ。何を言おうか、冒険者やってたことはなるべく伏せておきたいし、夢は…うーん言えないしなぁ…まあ好きなものとか言えばいいか。
そんなことを考えていると。
「では、転入生を紹介します。入ってきてもらえるかな。」
そんな声が聞こえてきたので恐る恐るドアを開けてみる。
「ど、どうも…よろしくおねがいします。」
我ながら情けない…
「壇上まで上がってもらえるかな。」
「あ。はい。」
そう言って壇上に近づこうとすると…
「あー!!アンタ!!今朝の!!」
こうして俺の波乱万丈な学園生活が始まるのであった…