何故か女の子を拾ったら懐かれた
ポーンという音と共に画面の右下にポップアップが表示されて新着のお知らせが届いたらしい。
疑問に思いまながらもお知らせを確認してみると確かに一通届いている事が分かる。
タイトル:ダンジョンの早期解放のお祝い
差出人 :メルキュルリス
本 文 :
この度、早期のダンジョン作成及び解放をしていただき、ありがとうございます
お願いしていた身とはいえ、このように早く解放までしていただけるとは思ってもおらず
無理をしているのではと思いましたので報酬という形では有りますが
解放された方にDPを特別に配布したいと思います
また、今後も何かしら皆さまに満足いただけるよう考えていきますので
今後も無事ダンジョン運営を行っていただきますようお願いいたします
へぇー、なんかチュートリアルクリアした感じみたいだな。
でも、この書き方からすると当初の予定ではこんなのが無かったって事か?
「さぁ、マリナ様もダンジョンの編集をしましょうか」
「はーい、キューちゃんもうちょっとエリザさん?と遊んでいてね」
「キュー」
「任せて!」
そんな声が後ろから聞こえてくるが、まぁ無視してて良いかな。
たぶん、あの感じだとフォラスも茉莉奈さんに造るだけで造ってもらって解放させるつもりはないだろうしね。
それよりもまずはエリザにボス部屋に行ってもらって何か変えるか決めさせるか……。
「呼んだ? マスター」
「キュー」
遊んでるところ悪いけど、少しだけ5階に行って部屋を確認してほしいんだ。
「えぇー、折角キューちゃんと遊んでるところなのにねぇー?」
「キュキュキュ」
不満そうに抱いていたキューちゃんと顔を合わせて嫌がるエリザ。
別にキューちゃんも一緒で良いからと頼み込んでなんと見てもらえる事になったが、まだまだ不満そうなので何か考えないといけない。
うーむ、例えば甘い物を用意してみるとが良いのか、いや、もしかしたらお酒の可能性も有るな。
まぁ、取りあえずは一緒に確認しに行って、何か自然な流れで聞いてみるか。
じゃあ、フォラスに言って行くか。
「そうですか。では、タブレットだけは忘れずにお持ちください」
「キューちゃんをよろしくお願いします」
フォラスと茉莉奈さんに見送られながら俺はエリザたちとコアルームを後にした。
たどり着いた5階のボス部屋はあまりにも殺風景でボスとして配置する予定のエリザがあまりに何も無い為に気分を悪くしてしまった。
「マスター、こんな部屋だったら私居たくないわ」
「キューキュキュ」
まるで同意するように頷くキューちゃんの姿に俺ももう一度その部屋を見て、エリザが居たくないというのは無理ないなと思ってしまう。
誰もが微妙な大きさの違いが有るとはいえど周囲の壁も天井、床も大きめの丸石が敷き詰められただけの部屋というのはいくらそこそこの大きさを持つ部屋だったとしても欲しいかと言われれば断るだろう。
勿論、俺はこんな部屋に居られるかと怒鳴って出ていくな。正直、パソコンかタブレット、最低限でもスマホが有ってネットに繋がってないなんて考えられないしな。
取りあえず、横で物凄く不機嫌そうにしているエリザを宥めながらこの部屋をエリザ好みに変えていく事にする。
「何? どんな部屋にしたいかって?」
そう聞いた俺に不機嫌なまま答えるエリザだったが、腕の中にいるキューちゃんが一声鳴くと少しだけ機嫌を治して要望を言い始める。
まず、赤い絨毯を敷いて床を完全に隠し、出入口の有る壁にはその扉の両サイドにバートゥツェッペ家のタペストリーを取り付け、他の壁には等間隔で照明を付ける。
また、天井は夜空が映し出されるように加工して邪魔にならない程度にシャンデリアもぶら下げ、コアルーム側の扉の近くにはいつでもお茶が飲めるようにとテーブルセットとティータイム用の物を一式準備した。
タブレットを操作して気が付いたが、こういった部屋を彩る物に関しては一度部屋を設置してからしか置けない為にDPを消費しないようになっているようだった。ただ、それは部屋にセットされたモンスターに関係するアイテムとしてツールに登録された物だけでそれ以外の物を置こうとすると購入するのと設置するのと別々にDPを消費するようだった。
「まぁ、こんなものね」
おいおい、確かに頼まれて置いたけれど、戦う場所にテーブルとか置いて大丈夫なのか?
どうやら、そんな俺の考えは顔に出ていたらしく、気が付いたエリザは驚いた顔をしながらそんな俺に教えてくれた。
「このセットは私たち闇の一族、ヴァンパイアが愛用する物なんだけど、これ、私たちヴァンパイアが念じれば一瞬で影の中に仕舞えるのよ」
そう言って実際に見せてくれたエリザに俺は驚きを隠せなかった。
どうやら、抱かれていったキューちゃんもそうだったようでエリザの腕の中から飛び降りるとエリザの影を前足でペシペシと叩いて確認していた。
「きゃー、きゅーちゃん、かーわーいい!!」
確かに不思議そうにしながら床を叩くキューちゃんの姿は可愛らしいもので、エリザがそのまま抱きしめるのも仕方ないと思ってしまう。
そして、再び取り出されたテーブルセットに勧められて座るとエリザはキューちゃんを膝の上に乗せたまま器用にティーセットにお茶を入れて差し出してくる。
「どうぞ、マスター」
何だこの凄まじい美味さは……。
今まで飲んだことのない味に驚いた俺を見て嬉しそうにするエリザ。
「美味しいでしょ? これ、私のお気に入りで領地の名産品なのよ」
りょ、領地ですか……。いや、確かにクィーンな訳だから持っても可笑しくないのか?
まぁ、いいか。それよりもこれで5階層に関しては大丈夫そうだから少し休憩したら次に行くか。
「えぇー、まだ行くの……」
そりゃ、そうだろう。まだ、造ったばっかりなんだから実際に見て召喚した奴らの要望も聞いてやらないといけないんだからな。
そうして、飲み終わったカップを置いて立ち上がった俺に渋々と言った感じでついてくるエリザ。
そのまま4階層に行き、モンスター的にも特に変えるような所は無いと思った。ただ、そのままだと後々問題が出てくるだろうと配置したコボルトソードマンやハイゴブリンナイトたちに訓練するよう伝えて3階層に向かった。
「この階はどうするつもりで?」
そう聞いてきたエリザの言葉に手に持ったタブレットを見ながらどうするかを考える。
まず、最後の部屋に関してはトレントに合わせるように床を土に変えて草や花を植えるのは確定だな。
DPは結構使ったけど大きめの部屋にしてあるからトレント以外に普通の木も植えるとして、草や花は毒草とか危害を加えれそうなのを優先的に配置と……。
トレントにそういったのが操れるかを聞きたいけど……。あ、無理? まぁ、そうだよね。
次にホーンラビットたちには複数匹で行動するように言って、アントワーカーは壁や床に穴を掘ったり出来たりするのか? おぉ、出来そうだな。
なら、アントワーカーたちは所々にホーンラビットたちも移動に使える通路を掘ったり、部屋を造ったりしてもらって、トレントの部屋に何匹は駐在してもらおうかな。
「へぇー、結構考えてるんだ、マスター」
当たる前だろ。それよりもさっさと次行くぞ、次。
「ねぇ、ちょっと休んでこうよー。キューちゃんもホーンラビットたちと遊びたそうにしてるし」
腕の中で羨ましそうにホーンラビットたちを見つめるキューちゃんの姿に一瞬だけそれを考えてみるが、そんな事よりも次に行く方が重要だと断腸の思いで却下する。
「ケチー!」
「キュキュー!」
騒ぐエリザたちを後目に2階層に向かおうとすると急いで追ってくるあたり口で言うほどではなかったようだったが、2階層について弄っているとその間を利用してキューちゃんと遊んでいたようだった。
結局、2階層に関しても4階層と同じく何かを変えるといった事はしないで、ゴブリンたちに訓練の指示やフォレストウルフと共に行動する為に騎乗する事を教えたりする程度だったのでそこまで長くは遊んでいないようだったが。
「次は外と繋がってるし、ちょっと外に出てもいい?」
えっ? 吸血鬼って日光に当たるのダメだったんじゃないか?
「何言ってるのよ、マスター。私は吸血鬼じゃなくてヴァンパイア・クィーンよ。そこら辺にいるようなのと一緒にして貰ったら困るわ」
へぇー、そうなのか。なら、良いけど入口の周りだけだぞ。
そう言って喜んで走り出したエリザを見送りながら1階層目をどうするか悩み始めた。
元々インプに外の様子を探るようには指示を出していたはずだけどとエリザたちを見送った後に1階層に足を踏み入れた俺はインプたちの集まっている場所に顔を出す。すると召喚した数より少ないようで何匹かは指示通りに外に出ているようだった。
取りあえず、全部屋を見回りながら悩んだ結果、最後の部屋に関してはインプたちに外から持ち込んだ木材などを使って住処を作るように指示を出し、ついでに床を土に変えた部屋を何部屋か作ってホーンラビットたちと協力してトラップを設置するようにした。
さてとエリザたちの様子でも見に行くか。
外に出た俺に気が付いたのか遊んでいたエリザとキューちゃんが直ぐに寄ってくる。
「マスター、もう終わったの?」
あぁ、ただ、外がこんな状態だと嬉しくないな。
出て直ぐに木々が立っている風景に後々の事を考えてある程度は開けた場所を造ろうと思う。
「じゃあ、木を切れば良いのね」
エリザはそういうと爪を伸ばして手を左右に振る。
するとその動きの数秒後に周りに生えていた木々が何本か倒れだす。
「これぐらいで良いでしょ?」
自信満々に言ってくるエリザに唯々頷くだけの俺だったが、直ぐに我に返って戻ってきたインプの1匹に倒れた木々をダンジョン内で使う様に指示を出した。
ふぅ、そろそろコアルームに戻ろうか。
「えぇ、もう戻るのー」
あのな、既にやる事は全部終わったと思うし、帰るのは普通だろ。
そう言ってダンジョンに入るとエリザもついてくる。
ちょうどインプたちが外に出ていくようで俺たちに道を譲ってから走り去っていった。
【異文化】ダンジョンの外に出ようぜ! 3歩目【コミュニケーション】
151:散歩中のダンジョンマスターさん
街にたどり着いたけど、入る前に衛兵に怪しまれたでござる……(´・ω・`)
152:散歩中のダンジョンマスターさん
≫146 なん、だと……
裏切り者ー!!
153:散歩中のダンジョンマスターさん
≫146 (#^ω^)ピキピキ
154:散歩中のダンジョンマスターさん
≫146 嘘だと言ってよ! バー〇ー!!
155:散歩中のダンジョンマスターさん
街? なにそれ美味しいの?
by見渡す限り大海原の崖の上より
156:散歩中のダンジョンマスターさん
≫151 不審者扱いwww
157:散歩中のダンジョンマスターさん
よく皆は外に出れるな
俺は怖くて布団の中に引き籠ってる
158:散歩中のダンジョンマスターさん
≫157 パートナーに文句言われないのか?
159:散歩中のダンジョンマスターさん
≫156 笑うなでござる!
でも、何とか中に入れたからいいでござる
ただし、何故か檻の中……
160:散歩中のダンジョンマスターさん
≫158 諦めたのか、何も言わなくなった
161:散歩中のダンジョンマスターさん
≫152−154 ふっ、良いだろう?
これがイケメンの特権さwww
という事でこれからロ〇ラちゃんと食事して……(*´m`)ムフフ
162:散歩中のダンジョンマスターさん
あーあ、俺ももう少し街に近い所にダンジョンが出来れば良かった……
163:散歩中のダンジョンマスターさん
≫161 もげろ!
164:散歩中のダンジョンマスターさん
≫161 もげやがれ!
165:散歩中のダンジョンマスターさん
≫161 月夜ばかりと思うなよ!
166:散歩中のダンジョンマスターさん
≫161 タヒれ
167:散歩中のダンジョンマスターさん
≫161 もげろ
――――――――――――――――――――――――――――――――――
324:散歩中のダンジョンマスターさん
≫294 マジか!?
俺のいる街にはそんなの無いぞ!?
325:散歩中のダンジョンマスターさん
やっぱりレストランで食べるのは良いよね
326:散歩中のダンジョンマスターさん
≫300 よく登録したな……
俺はギルドにすら近づけないというのに
327:散歩中のダンジョンマスターさん
≫300 気を付けろよ
俺みたいにバレて追われると大変だからな!
328:散歩中のダンジョンマスターさん
ちょっ、もうバレた香具師いるのかよ!
329:散歩中のダンジョンマスターさん
≫327 はえーよ
ナニやらかしたんだ?
330:散歩中のダンジョンマスターさん
≫325 だよな!
ダンジョンで食べれるっていっても味気ないもんな!
331:散歩中のダンジョンマスターさん
≫327 マジか!?
ナニやった? ダンジョン関係は何も出来ないだろ?
332:逃亡中の327さん
≫328、329、331
ちょっと召喚したモンスターと話してるの見られた……
333:散歩中のダンジョンマスターさん
≫332 逃亡中www
334:散歩中のダンジョンマスターさん
≫332 まだ逃げてるのかwww
335:散歩中のダンジョンマスターさん
≫326−327 おう!
って、327は大丈夫なのか?
336:逃亡中の327さん
≫333-335 頑張ってる
って、なんか変わってるし!?
337:散歩中のダンジョンマスターさん
やっと外に出して貰えたでござる……
338:散歩中のダンジョンマスターさん
≫336 327さん、頑張れ!
339:散歩中のダンジョンマスターさん
≫336 逃げ切れるのかよ?www
340:散歩中のダンジョンマスターさん
≫336 ふぁいとー!
以降、327の逃亡実況と応援が続く
――――――――――――――――――――――――――――――――――
やっとインプたちの巣とかが完成したか……。
もう少し早く終わると思ってたけど、結構時間が掛かったな。
他の階層もなかなかいい感じになってるし、3階層なんてアントワーカーのお陰でかなり彷徨う事になるんじゃないか? これ。
「クロー様、どうやら順調そうなのでマリサ様の方も確認して頂いてもよろしいですか?」
ん、分かった。見てみるよ、フォラス。
俺はそう言ってパソコンを出したまま、エリザと共にキューちゃんと遊んでいる茉莉奈さんの方へと向かう。
正直、フォラスが時より指示を出している姿を見ていたから問題ないとは思うんだがな……。
「どうしたんですか? 九郎さん」
「そうよ、マスター」
「キュー?」
不思議そうな二人と1匹の表情を見ながら、茉莉奈さんのパソコンを操作してダンジョンを見てみる。
うん、なんかスゴイモノを見たような気がする……。
確かに俺が手に入るDPの一部を譲っている筈だけど、コレは……。
何か遠くを見たくなる気持ちを抑えてフォラスを見てみるとハンカチを片手に顔の汗を拭いているのが見えた。心なしかその顔色は良いものには見えない事から本人も俺が振り返った理由に思い当たるものが有るんだろう。
はぁー、フォラスがついていてコレかよ……。
取りあえず、茉莉奈さんを近くに呼んで造り変えるように言わないとダメだな。
「えっ、これじゃダメですか? 折角、キューちゃんと遊べるようにしたのに……」
「ですから、何度も言わせて頂いた通りに……」
茉莉奈さんの言葉にフォラスがクドクドと説教を始めてしまったが、今はそんな事よりも造り変えるのを優先しないとと言ってどうにかそれを止める。
「えー、遊んじゃダメなの? マスターのケチ!」
「キューキュキュ!」
いや、ダメとは言ってない。ただ、ダンジョンに問題が有るだけだからエリザはキューちゃんと遊んでていいぞ、今は。
「やった! 行こっ、キューちゃん!!」
「キュー!!」
そう言って離れていったエリザとキューちゃんを見送りながら、ついて行こうとする茉莉奈さんの腕を掴んで阻止する。
「あぁー、キューちゃんが!!」
悪いけど茉莉奈さんには遊んでる暇なんて無いんだよ。これからダンジョンの造り変えをやっても良わないといけないからね。
名残惜しそうにしながらも俺の言葉に頷いて席に着いた茉莉奈さんにダンジョンの編集をやらす。
まず、1階層目からだだっ広い草原ってのはマズいから一回削除して茉莉奈さんがシヴィラガリアに来る前に言っていた理想を思い出させる。
そして、俺の考えていた案を話してみるとどうやら茉莉奈さんは異論がないようでそのままそうする事に決まった。
という事で外と繋がっている1階層目は外の入口から伸びた一本の道の先に1つ部屋を造って、そこから左右に2つの部屋を造って繋がるようにする。
この3つの部屋の内、外に繋がっている真ん中の部屋の中央に祭壇みたいにしてそこに侵入者に合わせた個数の腕輪を配置するようにして、それを取る事で右の部屋に入れるようにする。で、右の部屋は入ると扉が開かなくなってそこから進めるのは2階層に続く階段のみになっている。
左の部屋は茉莉奈さんのダンジョンに入った侵入者が腕輪の効果で飛ばされる部屋にして、その部屋に飛ばされた場合は真ん中の部屋に戻る以外は無く、真ん中の部屋から左の部屋には入れないし仕組みと左の部屋から真ん中の部屋に移った場合は腕輪が配置されないようにした。
ここで出てくるこの腕輪ってのが、茉莉奈さん用に創られたリスポーン機能付きの物で外に持ち出す事も出来ないし、持ち出せたとしても他のダンジョン(俺のダンジョンを含む)では効果が無いようになっている。
さて、1階層目の内装を神聖な感じを受けるように3部屋ともに壁にメルキュルリスの使いが造ったダンジョンだとミスリードするような絵を掘り込み、ついでにそれっぽい神託風の文章と石造を設置して完成にしとこうかな?
そうやって茉莉奈さんに指示を出しながら、本人の意見も取り入れつつ造り直した内容はフォラスとしても感激するような出来栄えになったらしく、ブツブツと「これなら私も神の使いの部下として……」と嬉しそうに呟いていた。
しかし、茉莉奈さんの運ってどんなけ良いんだよ……。
チラっと所有しているモンスターの召喚陣みたけど、亜人系というか定番の「くっ、ころ」系モンスターのが一切無かったって……。変わりに妙に良さげなのが有ったのは羨ましいな、本当に。
「ありがとうございます! これでキューちゃんと遊んでも良いですよね?」
そう言ってくる茉莉奈さんに頷くとすぐさまエリザとキューちゃんの方に向かって駆けていく茉莉奈さん。
「もう少しダンジョンの事も考えて頂けると助かるのですがね……」
仕方ないんじゃないかな。それよりもこれで一先ずは良いだろ、フォラス。
えぇと頷くフォラスの姿を見ながらもこれからの事を考えると頭が痛くなりそうなのが困る。
ポーンと響く通知音に茉莉奈さんのパソコンに目を向けると新着のお知らせが届いていた。
なので、自分のタブレットでそれを確認して見る。
タイトル:懇談会開催と新機能のお知らせ
差出人 :メルキュルリス
本 文 :
この度、ダンジョンマスターの皆様全員を招いた懇談会を開催する事と
それに合わせてOracleに新機能を追加する事が決まりましたので
お知らせいたします
詳しい日程は後日送らせて頂きますが、懇談会では現状での皆様の貢献度
と新機能発表を予定してます
今後も懇談会に関してはこの時期に行っていく事を決定している為、初回
となる今回は侵入者に対応している状況でない限りは皆様全員が参加して
頂きますのでご了承ください
あー、確かに既に全員がダンジョンを解放しているし、掲示板を見てた限りだと色々と他のマスターがやってるようだから、そろそろ良くある定番が来るとは思ってたけど……。
取りあえずは参加する事になるんだろうな……。
フォラスをチラっと見てみると内容を理解したようで頷いていた。たぶん、後で遊んでいる茉莉奈さんにしっかりと参加するように言うだろう。
しっかし、新機能ね……。何が実装されるか楽しみだけど、他のマスターたちと会うのがちょっと怖いな。
現状ではマスター同士の戦いが無いけど、この新機能がそれの可能性も有るし、絶対に面倒な奴が一人はいるだろうから関わらないようにしないと。
まっ、まだ日程とか決まってないし、取りあえずは頭の隅に残す程度で良いか。
【そろそろ】ダンジョンを造ろう! スレ4【慣れた?】
981:とあるダンジョンマスターさん
で、どんな機能追加されると思う?
982:とあるダンジョンマスターさん
≫974 だよな!!
983:とあるダンジョンマスターさん
楽しみ過ぎて夜も眠れないwww
984:とあるダンジョンマスターさん
≫974 ないわー
985:とあるダンジョンマスターさん
≫981 ありがちなのはダンジョンマスター関係者のみの街
よくネタで有る奴
986:とあるダンジョンマスターさん
早くその日にならないかな
皆に有ってみたいしwww
987:とあるダンジョンマスターさん
≫981 よく有るダンジョンバトルとか?
988:とあるダンジョンマスターさん
≫971
はいよ
【祝】ダンジョンを造ろう! スレ5【新機能実装】
http://◎×△◇/……
989:とあるダンジョンマスターさん
キター!!
ちょっと、物足りなかったんだよねwww
990:とあるダンジョンマスターさん
≫988 ありがとう
991:とあるダンジョンマスターさん
≫981 985、987以外とか?
992:とあるダンジョンマスターさん
新機能がバト物なら俺のモンスたちが火を噴くZe!
993:とあるダンジョンマスターさん
≫991 例えば?
994:とあるダンジョンマスターさん
オークションもショップも有るから何が来るやら?
995:とあるダンジョンマスターさん
楽しみー!!
996:とあるダンジョンマスターさん
≫993 分からん!
997:とあるダンジョンマスターさん
おっ、もう直ぐ1000だ
998:とあるダンジョンマスターさん
1000ならメルキュルリス様とイチャイチャ出来る
999:とあるダンジョンマスターさん
1000ならランク10が貰える
1000:とあるダンジョンマスターさん
1000なら定番の実装内容
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドに移ってください
――――――――――――――――――――――――――――――――――
それを見つけたのは久しぶりに外に出てキューちゃんと遊ぼうとしていた茉莉奈さんだった。
ダンジョンの編集が一先ず終わった後は徐々にダンジョンの外に出始めた俺たちだったが、ダンジョンの周りは山の麓に広がる大きな森という事も有って護衛としてエリザも付けて3人と1匹でピクニックと称して探索に出た時に大体森の真ん中辺りに差し掛かった時だった。
キューちゃんを抱きながら周りの風景を楽しんでいた茉莉奈さんが何かを見つけたのか急に走り出したのだ。
勿論、危険が無いとは言えない森の中だった為に見失わないようにと追いかけた俺とエリザが追いついた時に見たのは木の根元にしゃがみ込んで倒れた女性に声を掛けている茉莉奈さんの姿がだった。
このダンジョンの周りに人が来るまでは時間が掛かる筈とフォラスに聞いていた俺にしてみればどうしてここに……というのが直ぐに頭に浮かんだ。
「大丈夫ですか? しっかりしてください!」
必死に声を掛ける茉莉奈さんの姿に我に返った俺をエリザはどうするかと言わんばかりの目で見ていた。
あの様子だと助けるしかないだろ……。
「そう、フォラスが五月蠅く言いそうね」
だろうな。はぁー、茉莉奈さんが呼んでるし、行くぞ。
エリザと話している内に自分ではできる事が無いと判断したのか、茉莉奈さんが俺たちの方を見て呼んでいる。その足元ではキューちゃんが女性の顔をペロペロと舐めて気が付かせようとしているようだった。
「九郎さん、この人意識が無いようですし、早く安全な所に連れて行って助けないと……」
うん、言うと思ってたよ。しかし、この人……。
仰向けになった女性の顔や服装を見比べてみるが、髪は適当に切ったような長さでその割には整った顔立ちをしていて服装が似合っていないというか……。なんか面倒事に巻き込まれそうな気がして仕方ないな。
「九郎さん! そんなじっくりと見ている場合じゃないんですよ!!」
そんな風に見ていた俺を不思議に思ったのか茉莉奈さんが急かすようにいてくる。
まっ、そうだね。この人には申し訳ないけど触らせてもらうかな。
俺は女性の背中とひざの下を腕で持ち上げる。意識が無い事も有ってぐったりしている女性に持ち上げる際に一瞬だけふらついてしまったが立ち上がる事が出来た。
そうして、女性を持ち上げてダンジョンまで帰ろうと振り返った俺の視界ににニヤニヤしたエリザの姿が映る。
「マスター、今の気分はどう?」
そうだろうと思った事を聞いてくるエリザにため息をついてから無視するように歩き出した。
「それで、この後はどうするおつもりで?」
攻めるような目で見てくるフォラスに俺はどうしたものかと頭を悩ませる。
茉莉奈さんは笑いながらもベッドで眠っている女性の世話をしいてフォラスの相手をするつもりはないらしい。
このダンジョンの一帯はまだ人が住み着いていない筈だろ……。
不思議に思った俺がフォラスに確認するとそれは間違っていないらしい。
しかし、フォラス以外にしっかりとこの世界の住人について聞くことが出来る人材が手に入った事は良い事だな。
起きてから色々と確認しないといけないだろうけど、この人をそのまま保護してしまうのは良い案だろう。
「そうですね。確かに情報源としては申し分ない様に思いますが、それは最初のうちだけで直ぐに意味がなくなってしまうと思いますが?」
それに今回はDPが手に入っていますが、保護するとなると今後はDPの供給源としても期待出来ませんと続けたフォラスは何かを試そうとしているような目で俺を見ていた。
確かにフォラスの言う通りだった。ただ、見つけた張本人は未だに目を覚まさない対象を眺めてコッチの話に入る気すらないらしいから困ったものだ。
ただ、あの感じか見て保護したいと言い出しかねないなと思っているとタイミング良く俺を見る茉莉奈さん。そして、その頷きはまるで俺の思考を読んでいるのか疑いたくなる。
はぁ……、仕方ない。フォラスと話し合って何かしらの事を考えるか……
「では、保護すると?」
あぁ、そうじゃないと拗ねそうな人がいるんでな。
そう言って視線を茉莉奈さんの方に向けると続いて振り返って茉莉奈さんを見るフォラスの視線には耐えられないのかあからさまにに顔を背ける。
「はぁー、確かに仕方ないようですね……」
では……と続けるフォラスの姿に喜びを隠せない茉莉奈さん。
誰もが見れば分かるほどに喜びを全身で表している茉莉奈さんには悪いけど、傍に寝ている人がいるから静かにね。
そして、俺とフォラスはどうやって保護するかを考える事になった。
まぁ、結論からいうと茉莉奈さんのダンジョンの外に建物を建ててそこで何かをやってもらう事になった。まぁ、監視として何かをつけないといけないのも悩みどこなんだけど。
その何かってのは本人が起きてから決めるとして、問題は監視の方なんだよね……。
「その事に関してですが、マリナ様のモンスターの中にドールが有りますのでドールを召喚して監視させるのはどうでしょうか?」
ドール? えっ、どんな見た目でどこまでの性能のヤツなのそれ。
出来れば進化である程度の拡張性が有ると便利なんだけど。それにそういうのって何かしらの条件が無いと最初は技能系が全くできないのが定番だろ。
「そうですね。仰る通りに最初はただの意思を持たない人形ですが、育つと人並、若しくはモンスターだという事も有って能力的にはかなりの物になると思います」
それ……、出来れば茉莉奈さんのダンジョンを編集する前に言って欲しかったな……。
そう項垂れた俺を見て悪いと思ったのか頭を下げてくるフォラスと聞いていた茉莉奈さんの二人。
取りあえず、ドールを何体か召喚してダンジョンの外に家でも建てるように指示を出して。それでそれまではこの部屋で過ごしてもらおう。
「分かりました。では、そのように」
「お手数かけます……」
俺の言葉に動き始めた茉莉奈さんに追加でエリザと共に外に一旦出て場所などを決めるように言っておく。
疲れたようの俺に近づいてきたキューちゃんをあやしながらこれからの事を少し考え始める。
今、使っている部屋に関しては俺がDP使ってコアルームの隣に造った部屋だが、外に移って貰った後はそのまま他の用途に使えると思うからそのままでも良いだろう。ただ、DPの余裕が無くなったのは辛いな。
取りあえず、今は家に使う材料の木々とかをエリザが豪快に伐採しているだろうから加工する道具とか建て方の本とかを茉莉奈さんに買って貰えば大半は大丈夫だろう。まぁ、幾らその時に使うDPが日本円の百分の一とはいえ、俺にはキツいし、男が口出せない物も有るだろうからな。
それにフォラスも茉莉奈さんに協力して建てる場所とかをダンジョン扱いにしているだろうから、今後必要になる物もネットショップで買ったのが使えるだろう。
そんな事を考えながら俺はフォラスや茉莉奈さんに確認する為に動き出したのだった。
結局、保護した人が目を覚ましたのはそれから1日経ってからだった。
大半の準備が終わり、何体かドールも召喚した茉莉奈さんがその女性が目覚めない事で少し不安がっていたが、最終的には目覚めるまでは待つしかないと納得してくれたから助かった。あのままずっと女性の看病をしたいと言い出さないかとフォラスと共に不安になったぐらいだから。
召喚してもらったドールの内、2体をメイド服を着せて監視兼看護の役割を振ったのも良かったのかもしれないな……。
そうして、ドールに呼ばれて目覚めた女性に会いに来た訳だが、どうやらその本人は今の状況が全く把握できてないようで混乱しているのが見てとれた。
「私、確か、襲われて…、それで森に逃げ込んだはず……」
少しぼんやりとした目でそんな事を呟いていた彼女だったが、俺が近づくと我に返り、近づいてきた俺を少し警戒した眼で見てくる。
その眼の中には恐怖は見受けられないが、黙ってその様子を見ていたのが悪かったのか一段と警戒心が高まったように感じた。
「あの、ここはどこですか? そして、貴方は誰ですか?」
あー、ここは君の倒れていた森の更に奥だよ。それで俺は知り合いが見つけた君をここまで運んできた人間。
「それは……、ありがとうございます」
唐突に沈黙が訪れる。
まぁ、彼女は聞いた事を吟味しているかのような態度だったし、目覚めて傍にいたメイドさんが直ぐに誰かを呼びに行って、それで来たのが男なら仕方ないか。
このままじゃ話にならないし、あんまり聞きたくないけど森で倒れてた理由とか聞いてみるか……。
「それは……、分かりません。ただ、もしかしたら、家族が私を邪魔だと思ったのかもしれません」
そこから彼女が森まで来た経緯を話し出したが、元貴族で元王族の婚約者、ついでに言うなら身に覚えに無い冤罪で家からも追い出された上に恐らく森に逃げ込んだ原因の襲撃者を送り込んできたぐらいに邪魔だと思っていると聞くと顔が引きつってしまいそうになる。
話を聞いている内に部屋の外から騒がしい声が聞こえてくるのに気が付く。恐らく茉莉奈さんが話を聞いてこの部屋に来るんだろう。
「あの、良ければこのまま私をここに住まわせてくれませんか?」
外の様子に気が付いていないのか、伏せていた顔を持ち上げて俺を見上げてくる。
暫くの間、俺と彼女は互いの顔を見たまま固まってしまう。
「あ、あの「失礼しまーす!!」すか?」
何か彼女が言おうとした瞬間、閉めらていた扉がドーンという音が聞こえてきそうな勢いで開かれ、大声と共に茉莉奈さんが入ってくる。
おいおい、もし寝てたらどうするつもりだったんだよ……。
顔を扉の方に向けた俺はそんな事を考えていたが、そんな事お構いなしの茉莉奈さんはベットに近づいて彼女に話しかけている。
勿論、急に現れた茉莉奈さんに彼女は唖然としてまともに聞かれた事を返せる訳もなく、そんな様子に勘違いしたようで茉莉奈さんが振り向くと共に力のこもった眼で俺を見た。
「九郎さん、何かしました?」
茉莉奈さんの視線にため息をしたくなった俺だったが、このまま勘違いさせたままだとマズいと思って勘違いを解くためにどうしたものかと悩み始める。
正直、この状態だと何言っても聞いてくれなさそうなんだよね。こういう時にフォラスが居れば何とかなりそうなのに今はいないし、どうしたものかな……。
「はっ、あの貴方は?」
「大丈夫だからね、私にまかせなさい!!」
「いや、そうではなくて……」
「さぁ、九郎さん、何をしたんですか!?」
はぁ、何もしてないし、話してる途中に茉莉奈さんが入ってきたんだけど?
相変わらずの様子の茉莉奈さんにそう言いながらジト目で見つめるとちょっと後退った後に彼女を確認するように見る。
「はい、話していただけです。それよりも何でもしますのでここに住まわせてください!!」
ん、何でもって言った……じゃなくて……。
「えっ、勿論良いよ! と言うか、最初からそのつもりだったからね、九郎さん」
あぁ、もう勝手に言わないでくれよ……。
もう言ってしまったのは仕方ないけど、何個か確認しないといけない事が有るんだ。
「はぁ、そうなんですか?」
ただ、今であればこのままここで暮らさずにどこかの街に行く事だって出来るけど、もし、聞いてしまったら一生ここで過ごす事になるし、それが嫌ならその命を貰う事になる。
ちょっと脅しているように聞こえる風に言ってみたが、彼女はそれでも答えを変える事は無く、俺の確認したい事を聞いてきた。
はぁ、ここがどういう場所か分かる?
そう言って辺りを見渡したり、ドールを見るように言ってみるが彼女はどういう事か見当がつかないようで首を傾げている。
「えっと……」
まぁ、正直に言っちゃうとここダンジョンの中なんだよ。
俺の言葉に驚いたようで眼をパチパチさせながら言葉の意味を考えているようだった。
「あの、もしかして二人の内、どちらかが……」
「私も九郎さんもダンジョンマスターだよ」
恐る恐る聞いてくる彼女だったが、それを制して茉莉奈さんがあっさりと告げた内容に眼を見開いて驚きを隠せないようだった。
その様子に俺は仕方ないよなと思いながらも話を続けて、彼女にダンジョン外に建てる建物に住んでもらう事、今後の事も考えて茉莉奈さんのダンジョンに定期的に挑戦してもらう事、監視役も含めてドール2体と生活してもらう事を了承してもらった。
「分かりました。それでお願いします」
さて、これで大半が終わったな。あっと、一つ忘れてた事が有ったな。
思い出したように彼女の方を見た俺と同じように茉莉奈さんも思い出したようで笑顔を見せながら彼女を見た。
「忘れて、いた事、ですか?」
どうやら彼女は何か分からなかったらしく、首を傾げながら俺たちを見る。
「ふふふ、貴方の名前は?」
「あっ、私はマリアンヌ・ダルカネット……、いえ、もう捨てられたのでただのマリアンヌですね」
「えっと、私は天野茉莉奈よ」
言った後に悲しく笑う彼女――マリアンヌの姿に誤魔化すように名乗る茉莉奈さんに続いて俺も名乗る。
「マリナ様にクロー様ですね。これからよろしくお願いします」
マリアンヌ――マリーを保護してからどれくらい経ったか。
最初の頃はあまりにも慣れない生活に苦労していたマリーだったが、徐々に監視に付けていたドール――アンナとミランダと共に頼んでおいた事などを率先してやってくれるようになったようだ。
ただ、偶に森の外に出て人里に顔を出してた為に面倒事を引き寄せたっぽいのが心配だな。
さて、そんな事を考えている内に今日の仕事は大体終わったし、マリーに呼ばれているから久しぶりに家に行ってみるか。
なんか最近は頻繁に誘われるし、妙に距離が近いような気がするけど、まさかな……。
まぁ、何となく思い当たる節は有るし、そんな気はするけど、あんまり多いと茉莉奈さんやエリザの機嫌も悪くなるから気を付けないとな。
キャラ紹介
マリアンヌ・ダルカネット
ダンジョンの有る王国の元公爵令嬢。
冤罪で婚約者で有った王子から婚約破棄され、家からも追放される。
何とか街を彷徨いながらも必死に生きていた所、ダンジョンの近くまで来たところで暗殺者と思われる存在に襲われて森に逃げ込んだところ、九郎たちに保護される。
アンナとミランダ
茉莉奈に召喚されたドール。マリアンヌの侍女兼監視役として他の数体と共に召喚され、その時にスキルと名前を与えられた。
日々、成長していっているようでマリアンヌと共に行動している。
続くかは未定!
正直、書きたい部分は書ききったから満足してるし、感想とかで要望とかが貰えれば書くかも
取りあえず、数日後に外伝的な物としてマリアンヌ関係の話(婚約破棄もの)を投稿予定です
書き終わってはいるのでいつとは言えませんが、確実に投稿できますので良ければよろしくお願いします