お祭り/補習(花火をする)
補習ルートの共通から分岐。
●補習が終わって、大人しく「花火をしよう」としたら、
まぁ、いいか。見間違いかもしれないしね。私も花火をしようっと。
伊藤先生との所に行くと、先生はにっこりと笑って花火を差し出してきた。
伊藤忠良
「五津木さんもどうぞ。火傷しないように気をつけてね。人に向けてやらないように」
ボブ子
「大丈夫ですよ」
先生から受け取った花火に、マッチで火をつけてもらう。ぱちぱちと音を立てて、色鮮やかな光が流れる光景に思わずはしゃいでしまう。そういえば、うちはまだ今年手持ち花火をしていないな。毎年セミ子がやりたがるから買っていたんだけど……。
伊藤忠良
「きれいだね。花火を見ると、夏だなって毎年思います」
ボブ子
「毎年花火を買って来てるんですか」
伊藤忠良
「うん。だって補習だけじゃあ嫌になっちゃうでしょ。せっかくの夏休みだし、みんなにも楽しんでもらいたくて。それに僕も楽しいしね」
校庭で花火を両手に持った男子生徒が走り回っている姿を見て、私は馬鹿だなって呆れてしまうけど、先生はなんだか嬉しそうだった。先生は花火を一本もしていないのに、ニコニコ笑っている。見ているだけで楽しいのかな。
先生って……。
選択1「生徒が好きなんですね」
選択2「先生が好きなんですね」
●選択1「生徒が好きなんですね」
ボブ子
「先生は、私たち生徒が好きなんですね」
伊藤忠良
「そうだね。ちょっと暑苦しくて嫌がられるかもしれないけど、僕は君たち生徒が大好きだよ」
照れたように、頬を指でかく。それでも幸せそうに顔をほころばせる伊藤先生。先生ってすごいなぁって、伊藤先生を見るたびに思う。
すると花火をしていた他の生徒が先生に背後から勢いよく飛びかかった。
生徒A
「ヨッシー先生、どうしたの? 先生も花火やろうぜ!」
生徒B
「ほら、花火持って!」
伊藤忠良
「わかったから。背中から下りて下りて! 僕はそんなに力持ちじゃないから、倒れちゃうよ!」
生徒A
「あははっ!」
生徒B
「先生って貧弱だよな!」
伊藤忠良
「うーん。やっぱりそうかな? 最近、運動してないから……」
生徒A
「よし! それじゃあ、俺が先生の筋トレの手伝いをするぜ!」
伊藤忠良
「ああぁっ! 体重をかけないでぇ!」
生徒B
「ほら、先生なんだから、生徒全員を背負えるぐらい強くならないと!」
伊藤忠良
「えっ! もう一人、背中に乗ってきた? これ以上はやめてね! 先生はこれ以上耐えられません!」
次々と男子生徒がふざけあって伊藤先生の背中に飛び乗っていく。男子ってばよくやるなぁ。伊藤先生のためにも、そろそろ止めた方がいいのかも。
伊藤忠良
「しょうがないなぁ。僕は先生だからね。どんな生徒だろうと背負うからね。だから安心してね」
だけど先生は、それでも幸せそうに笑った。今のこの景色が何よりも嬉しいというように。
ひゅるひゅるひゅる――ドンっ!
大きな音ともに空に光が広がった。花火だ。
●選択2「先生が好きなんですね」
ボブ子
「伊藤先生は、先生っていう仕事が好きなんですね」
伊藤忠良
「そう、だね。うん。そのつもりだよ」
伊藤先生には珍しく、歯切れの悪い返事だった。顔をうかがってみると、ちょっと暗い感じ。どうしたんだろう、先生……。
そんな風に不安に思っている私に気が付いたのか、うつむいていた先生が慌てて私の方に笑いかけてきた。
伊藤忠良
「ごめんね。その、ちょっと僕は自分に自信が無くて。僕はちゃんと先生ができているのかなって不安になって。必死で、そればっかり必死になって。たまにどうすればいいのかわからなくなっちゃうんだ」
ボブ子
「先生……」
伊藤忠良
「な、なんてね。ごめんね。先生、なんだか花火を見てたら、湿っぽくなっちゃって……」
ボブ子
「大丈夫ですよ、先生。先生だって人間なんだから、弱音言ったっていいんです」
伊藤忠良
「あはは。ありがとう。ボブ子さんは優しい、良い生徒ですね。先生は嬉しいです」
暗い顔をしていた先生が、いつものように優しく笑ってくれた。やっぱり、先生にはそういう顔が一番似合っているな。安心する。
伊藤忠良
「でも、やっぱり先生しか生徒にできないことってあると思う。あったんだと思う。そういうことができる先生に、なれていたらいいな」
ボブ子
「先生なら大丈夫です」
伊藤忠良
「そうだといいんだけどね。……あ、そろそろ時間だ」
先生が腕時計を確認して空を見上げる。つられて私も空を見上げた時だった。
ひゅるひゅるひゅる――ドンっ!
そこに上がったのは、大きな花火だった。
[・・・ロードします・・・]
生徒A
「うおおっ! すっげぇえっ! 花火でっけぇ!」
生徒B
「学校からも花火見えるんだな! お祭り会場に行くより、こっちの方が見えるかもな!」
生徒C
「俺、来年も補習に引っかかろうかなー……」
花火を見て、騒いでいた男子生徒たちが一斉に空を見上げている。……どうして人って、空を見上げるときに口を開けてしまうんだろう。男子生徒たちが全員ぽかんと口を開けてマヌケ面をしているのを見て、思わず自分の口元が開いていないかどうかを確認してしまった。
伊藤忠良
「学校は意外な穴場スポットなんだよ。僕は毎年ここで生徒のみんなと花火を見ているんだ」
ボブ子
「私も、その話聞いたことがあります。綺麗ですねぇ」
伊藤忠良
「そうでしょう?」
ボブ子
「なんで先生がそんなに自慢げなんですか?」
伊藤忠良
「あんまり綺麗だからね。自慢したい気分なんだ」
ひゅるひゅるひゅる――ドンっ!
あんなに憂鬱だった補習は、綺麗な花火の光景で終わった。
でも、来年こそは補修を回避したい……。
[先生は先生が好きじゃない]
伊藤先生は、最初に考えていた以上に設定を盛りました。




