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お祭り他ルート(本田サルシス)

●サルシス君をお祭りに誘おうとしたら、

 サルシス君を誘ってみようかな。でも、サルシス君のことだからもう誰かと行く約束をしてそうな気がする……。そこに私も一緒に行けないか、聞いてみようか。

『今日は町のお祭りがあるね。もし行く予定があるなら、一緒に行きませんか?』とメッセージを送ってみや。しばらくしてやってきた返事は、『ぜひ一緒に行こう! 一人で行く予定だったから、誘ってくれて良かった』だった。

 サルシス君が一人で行くつもりだったなんて意外だな。でも、オッケーしてくれて良かった。





 [・・・ロードします・・・]





 待ち合わせの時間。浴衣を着替えるのに手間取って、少し遅れてしまった。しかも下駄だと走っていくことができない。できるだけ急いで待ち合わせ場所の神社近くの駐輪場に行くと、人ごみの中でもすぐに分かる美しい金髪がすぐにわかった。

そっちへ足を向かわせると、青い瞳がこちらを見てパッと顔いっぱいに華やかな笑みが浮かんだ。


本田サルシス

「こっちだよ、五津木くん!」


 サルシス君が大きく手を振って、私の方に近づいてくる。目立つサルシスがそんなことをするものだから、もちろん周囲の人の目も引きつけられてしまう。

 すごい。いつもサルシス君は華やかで目立っているなぁ。スポットライトを当てられて、一人舞台を演じているようだ。


ボブ子

「遅れてごめんね。何かおごるよ」

本田サルシス

「かまわないさ! こういうのは、待つのというのも一つの醍醐味だろう? それに、こうして人ごみの中にいるのは嫌いじゃないのさ! みんなの目を集められるから!」


 さらりと長い髪を振り払うサルシス君の仕草は、演技がかっていて洗練されている。それがさらに人の目を集める。私がただの通行人であっても、同じように見てしまうと思う。

サルシス君が身にまとっている若草色の浴衣もよく似合っていて、思わずその姿を眺めてしまわずにはいられない。金髪碧眼の人って、和服が似合うのかな? それともサルシス君だから?


本田サルシス

「それじゃあ、さっそく行こうじゃないか! 最初に寄りたいところがあるんだけど、行ってもいいかい?」

ボブ子

「うん。どこに行きたいの?」

本田サルシス

「お面屋さんさ!」

ボブ子

「お面屋さん? お面をかぶるの?」

本田サルシス

「もちろんさ! だってそれがお祭りの流儀というやつなんだろう? わくわくするねぇ!」


待ちきれないといった感じで両拳を握って力説するサルシス君。サルシス君って、お祭りに来るのは初めてなのかな?


本田サルシス

「さぁ、さっそく行こうじゃないか!」

ボブ子

「うん」


 入り口すぐ近くにお面屋さんにカランコロンと下駄の音を鳴らしながらサルシスが近づいて行った。

 アニメのキャラのお面。動物のお面。テレビタレントの顔そっくりのお面。いろんなものが置いてあった。そこからサルシス君が選んだのは、ひょっとこ顔のお面だった。


本田サルシス

「どうだい? 美しいボクと合わさると、素敵だろう?」



選択1「もっと似合うのがある」

選択2「よっ、日本一!」



 選択1「もっと似合うのがある」

 純和風顔のひょっとこ顔の安っぽいお面といかにも外国人といったサルシス君の華やかな顔は、びっくりするほど系統が違って合っていない。なんとなく、サルシス君と顔を並べられてしまってひょっとこ面も焦っているように見える。


ボブ子

「折角サルシス君は目鼻立ちがはっきりしているんだから。もっと似合いそうなものがあったと思うよ」


 例えばオペラ座の怪人のマスクみたいなものがあれば、すごく似合いそうなんだけどな。もしくはベネチアンマスクみたいなの。そう言うと、サルシス君はお面を頭からとってじっと見つめ合った。


本田サルシス

「こういう純日本的なもの、合ってないかな? ……まぁ、ボクの顔はあまり日本的じゃないからね!」


 まるで舞台の上で演じるかのような大げさな身振りで、腰に両手を当ててからから笑うサルシス君。その際にのけぞりすぎて、ちょっとだけサルシス君はバランスを崩してしまった。あまりのオーバーな反応に迷惑そうな顔をした人が横を通り過ぎて行った。

……あれ、なんだか変な感じ。いつもと、様子が違う?


本田サルシス

「でも、合っていなくても、それでも一緒でいいんじゃないかな? お互いがいいのなら、それで。それとも駄目なのかな? 君はどう思う?」


 ひょっとこのお面に語り掛けるサルシス君。その姿はすごく真剣そうで、変なものでも見るような視線がいくつか突き刺さった。

……やっぱり変。サルシス君って、華やかさで人の目を引こうとするところがあるけど今回は違う。どうしたんだろう? 似合わないって行ったのが、よくなかったのかな? こういうのははっきり言った方が、サルシス君も喜ぶと思ったんだけど。(演劇部)いつも部活では、べた褒めするよりも率直な意見を言った時の方が喜んでたし……。


本田サルシス

「できれば、ボクはキミというお面をつけてお祭りに行きたいんだけど」

ボブ子

「……『もちろん、いいさー』」


 あるはずのない返事を待つ様子のサルシス君に、裏声で私が返事をする。すると一瞬、サルシス君と目が合って、いつもの華やかな笑顔を見せてくれた。


本田サルシス

「そうかい、ありがとう! それじゃあ、ボクはキミと一緒に行くとしよう!」


 屋台のおじさんに笑顔で話しかけるサルシス君。

良かった、いつものサルシス君に戻ったみたい。



●選択2「よっ、日本一!」

 お面と浴衣でキメたサルシス君の姿は、まさにお祭りスタイル。これからお祭りを全力で楽しむ覚悟を決めた者だけが許される姿だ。まさにお祭り専用戦闘服!


ボブ子

「ばっちりだよ!」

本田サルシス

「そうかい! それじゃあ、これを買うとしよう!」

ボブ子

「それがいいよ。私も、このお面を買うね!」


 私が選んだのは、おかめ顔のお面。サルシス君のひょっとこのお面と対をなすものだ。だってサルシス君が戦闘態勢ばっちりなのだ。私だって応えないといけない。つまり私はサルシス君に――


本田サルシス

「おや、それを選ぶのかい?」

ボブ子

「うん! ……これは、挑戦状よ! サルシス君、どちらがお祭りをより楽しめるのか勝負なんだから!」

本田サルシス

「なんだって! そんな面白そうな勝負があるのかい? もちろん、受けて立つとも!」


 腕まくりをする私に、サルシスくんが大げさなほどはしゃいだ声をあげる。

 こうして私たちのお祭りは、火ぶたを切って落とされたのだ。





 [・・・ロードします・・・]





 それから私たちはお祭りの屋台をたくさん見て回った。サルシス君はリンゴ飴の赤がとても気に入ったらしく、買ってから食べずにずっと手に握っている。


本田サルシス

「おや、時間だね」

ボブ子

「花火の時間?」

本田サルシス

「そうだね。他の人に、遅れをとるわけにはいかないね! さ、行こうか!」

ボブ子

「うん」


 でも、屋台のある道だと人が多すぎて満足に観賞できない。できるだけ開いた場所に行こうと、二人で良いスポットを探してみるけどどこも人がいっぱいだ。どうにかわずかに空いたスペースを確保する。


本田サルシス

「人がいっぱいいると、にぎやかで気分が高まるねぇ!」

ボブ子

「そうだね。ちょっと暑いけど……」

本田サルシス

「それもまたお祭りの醍醐味だね! そうだ、五津木くんはなんて叫ぶ? ボクは『鍵屋』さ! ツウって感じだろう?」



 選択1「え、叫ぶの?」

 選択2「じゃあ、私は玉屋で」



●選択1「え、叫ぶの?」

 私が聞き返すと、サルシスくんは自信満々で頷く。


本田サルシス

「時代劇で見たのさ! あれは素敵だねぇ! 憧れるよ! そしてついに憧れになれるんだね!」

ボブ子

「今時はそんなに叫ぶ人はいないと思うけど」

本田サルシス

「じゃあ、ボクたちで独占できるね! それはますます素敵だねぇ」

ボブ子

「え、私も叫ぶの?」

本田サルシス

「もちろん! 大丈夫、ボクも一緒にいるから何の不安もないさ!」


 サルシス君はいつだって人目を集めているから慣れているとは思うけど、私は慣れていない。そもそも人と違うことを、こんな公共の場でやる勇気が無い。部活だって裏方だし。でも、サルシス君は期待したような目で見ている。ああ、だけど……。


ひゅるひゅるひゅる――ドンっ!


本田サルシス

「かーぎやー!」


 叫ぶサルシス君の声は、大きな花火の音にかき消された。あ、意外と大声を出してもそんなに目立たない。

 そう思っていると、サルシス君が肩を叩いてきた。どうやら一緒に叫んで欲しいらしい。いや、でも、隣で見ている人には確実に聞こえちゃうし……。


ボブ子

「ちょっと、恥ずかしいかも……」

本田サルシス

「あ、すまない! 花火で聞こえなかったようだよ! なんて言ったんだい?」

ボブ子

「は、恥ずかしい!」

本田サルシス

「そうかい? 楽しくて、素晴らしくて、美しい花火を賛美するのにぴったりなんだけどなぁ」


 サルシス君は残念そうに肩を落とした。

 やっぱりやった方が……いやでも――。

 花火をしている間中、そんなことが気になって集中できなかった。


●選択2「じゃあ、私は玉屋で」

 私が挑むようにサルシス君を見上げると、サルシスくんがふふふっと笑った。あ、さては、私のことを侮っているな? 私だって意外と声が出るんだぞ。(演劇部)裏方とはいえ、私だっていつも腹筋してるんだから。


本田サルシス

「じゃあ、どちらが花火に負けないぐらい声を出せるか勝負だね!」

ボブ子

「負けないからね! あ、そろそろだ」


 二人で顔を見合わせて、大きく息を吸う。この取りこむ酸素の量が、勝負の勝敗を決める。

 ああ、早く花火よ上がれ! 肺いっぱいの空気が溢れだしそう!


ひゅるひゅるひゅる――ドンっ!


本田サルシス

「かーぎやー!」

ボブ子

「たーまーやー!」


 二人で一斉に叫んだけど、花火の音があまりにも大きくてかき消されてしまった。ああ、二人とも花火に負けちゃった。そう思うと自然に笑えて来て、サルシス君と二人で花火を見ながら大笑いした。





 [・・・ロードします・・・]





 花火が終わると、集まっていた人が皆一斉に帰り支度をし始める。ああ、あっという間だったなぁ。

 なんだかすでにちょっとさびしい。


本田サルシス

「美しかったねぇ。……この世には、美しいもので溢れているね。それがわかって、今日も素晴らしい日だったよ」

ボブ子

「うん、本当にきれいだったね」


 二人で花火の感想を話し合いながら、人の波に流されて帰り道を行く。

 今日は、勇気を出して誘えてよかったな。


本田サルシス

「しかし、美しいものはすぐ消えてしまうね。ボクもいつか消えてしまうのかもしれないね?」

ボブ子

「サルシス君が?」


 私が聞き返すと、サルシス君はすぐには返事をしないで、口元に淡い笑みを浮かべた。


本田サルシス

「……うん。冗談だよ。ボクは永遠に人々の記憶に残る美だからね! 歴史的美になるだろうね!」

ボブ子

「歴史的美って、どんなもの?」


 サルシス君とお祭りはとても面白かった。

 けど、サルシス君はすこし寂しそうだったかも。

【美しいのから消えるのか、消えてしまいたいから美しいのか】


たいがい、どっちもどっち。

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