お祭り他ルート(桂木啓太)
●啓太先輩をお祭り誘おうとすると、
啓太先輩を誘ってみようかな。もしかしたらもう予定があるかもと思いつつも携帯電話を手に取った時、ちょうどメールが届いた。誰だろう?
開いてみると偶然にも啓太先輩からだった。
『一緒にお祭り行きませんか?』
あまりの良いタイミングに笑いながら、『私も啓太先輩と行きたいと思っていました。』と返信する。
お祭り、楽しみだなぁ。
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せっかくのお祭りなんだからと浴衣に着替えてみた。今日行くことにしたからとお母さんに告げて、怒られながらもタンスから引っ張り出したものだ。久々に着てみたけど、丈はあっているみたいだ。
しばらく鏡の前から動かずに姿をチェックしていると、ピンポーンと家のチャイムが鳴った。配達とかかな? お母さんは、この浴衣を探し出す際に散らかしてしまった部屋を片付けているはずだ。
お母さんに出てもらうのは悪いし、私が応対しよう。
もう一度ピンポーンと鳴る。
ボブ子
「はーい! 少し待って下さーい!」
浴衣の裾を気にしながら小走りで玄関に向かう。急いで扉を開けると、そこには浴衣姿の啓太先輩が立っていた。
ボブ子
「あれ、啓太先輩? 待ち合わせ場所は神社近くのコンビニって……それに、時間もまだですよね?」
桂木啓太
「外に出たら思いのほか外が暗かったから。危ないし、迎えにきたんだ」
啓太先輩は落ち着いた雰囲気の紺色の浴衣を身にまとっていた。いつもは童顔でそれほど先輩って感じさせないけど、今日は大人っぽい。
思わずじっと眺めていると、くしゃりと啓太先輩が顔をほころばせた。
桂木啓太
「そんなに見られると、照れちゃうな」
ボブ子
「あ、ごめんなさい」
桂木啓太
「ううん。いいんだ、お互いさまだもの」
ボブ子
「お互いさま、ですか?」
桂木啓太
「うん。僕もボブ子さんを思わず見つめちゃうからね。浴衣、とっても似合っていてかわいいね」
ボブ子
「ありがとう、ございます」
照れもせずに言う啓太先輩に、思わず顔が熱くなってしまう。いつもさらっとこういうことを言ってしまうけど、どこまで本気なんだろう。わかんないなぁ。
桂木啓太
「それじゃあ、行こうか」
ボブ子
「はい」
啓太先輩に促されて、一緒にお祭り会場に向かった。
お祭り会場にたどり着くと、そこは人で溢れてかえっていた。ここの町のお祭りもずいぶんと賑やかだな。やっぱりこの雰囲気を感じるだけで、わくわくする。
桂木啓太
「やっぱり人が多いね。ボブ子さん、はぐれないように気をつけてね」
ボブ子
「はい」
桂木啓太
「何かやりたいものってあるかな?」
選択1⇒「金魚すくい」
選択2⇒「スマートボール」
●「金魚すくい」をすると、
金魚すくいがしたいと言うと、啓太先輩が嬉しそうな顔をした。
桂木啓太
「ボブ子さんも金魚すくいが好きなの? 僕も好きなんだ」
ボブ子
「そうなんですか」
桂木啓太
「うん。金魚たちを自分の器の中に入れていくのがすごく好きなんだ、子どもの頃から」
金魚すくいの出店に向かった私たちは、さっそくやりはじめた。
ぴちょんと金魚が跳ねて、水が顔にかかった。
桂木啓太
「あ、大丈夫、ボブ子さん?」
ボブ子
「はい。大丈夫です」
桂木啓太
「……この金魚もボブ子さんが好きなんだね。こうやってボブ子さんの気を引こうとしている」
そう言ったかと思うと、啓太先輩はポイを流れるように動かしてあっという間に金魚を自分の器の中に入れてしまった。
桂木啓太
「でも、ボブ子さんを濡れさせちゃったのは良くないね。だから君は僕のところにいなさい」
赤いひれをひらりと揺らして、金魚が水を張った器の中を泳いでいた。それを啓太先輩が満足そうにうっとりと眺めている。
そんなに金魚が好きなのかな? それとも、なんだろう。何かを知っている気がする。
●「スマートボール」をする
私がスマートボールをしたいと言う、啓太先輩が首をかしげた。
桂木啓太
「ボブ子さんはスマートボールが好きなの?」
ボブ子
「そうですね。お祭りに来るといつもやります。自分の狙い通りにいくと嬉しいです」
桂木啓太
「そうなんだ」
ボブ子
「はい。啓太先輩はスマートボールをしますか?」
桂木啓太
「うーん。ボールが窪みからこぼれ落ちていくと、悔しくって。そういうのが嫌であんまり好きじゃないんだ」
ボブ子
「そうなんですか?」
桂木啓太
「でも、ボブ子さんとやれば楽しいと思うよ。一緒にやろう。それに上手くはまれば、やっぱり嬉しいしね」
ボブ子
「はい」
啓太先輩と一緒にスマートボールをした。私は好きなくせにそれほど上手くなかったけど、啓太先輩はびっくりするほどの高得点を取っていた。それでもボールを一つ落とした瞬間は、すっと表情が固まったけど。
よっぽど、ボールを落としてしまったのが悔しかったのかな? 確かに、あと一つ入ればパーフェクトだったしね。
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桂木啓太
「そろそろ時間だね」
腕時計を見た啓太先輩はそう言ったかと思うと、人通りの少ない方へと私を手招きした。
ボブ子
「啓太先輩……?」
桂木啓太
「こっちだよ」
ボブ子
「はい……。きゃっ」
啓太先輩のところへ行こうとしたところで、すれ違った人と肩がぶつかってしまった。慣れていない下駄のせいか大きく身体のバランスを崩してしまった。倒れてしまう、と思ったところで肩を大きな手の平が支えた。
桂木啓太
「ごめんね。もうちょっと気を遣ってあげれば良かったね」
ボブ子
「あ、ありがとうございます」
離れようとしたところで、足元に違和感を感じる。下を見ると、下駄の鼻緒が切れかけていた。どうしよう。歩きづらいなぁ……。
動こうとしない私に、啓太先輩は足元を見てすぐに事情を察してくれた。
桂木啓太
「ボブ子さん、ちょっとごめんね」
ボブ子
「え……?」
啓太先輩に手を引かれて道の端によると、取り出したハンカチで来た先輩が下駄を結んでくれた。ちょっと動きづらいけど、無いよりはマシかな。
桂木啓太
「まだ、歩きづらいよね。僕の手で良ければ掴まって」
選択肢1⇒「手を取る」
選択肢2⇒「手を取らない」
●選択肢1「手を取る」
ボブ子
「は、はい」
啓太先輩の手に手を重ねると、思ったよりもずっと大きな手が包み込んでくれた。思わず顔を上げると、微笑む啓太先輩の顔が真正面にある。
桂木啓太
「……なんだか、くすぐったい気持ちだな。手を繋ぐなんて、どれぐらいぶりだろう?」
ボブ子
「そう、ですね。私も妹とたまに手をつなぐだけで、他は全然……」
桂木啓太
「ねぇ、ボブ子さん」
ボブ子
「はい」
桂木啓太
「僕はもう、信じてもいいのかな?」
ボブ子
「え?」
桂木啓太
「ふふふ……。さ、行こうか」
啓太先輩に思ったよりも大きな手が、私の手を力強く包みこむ。そのままを手を引いて歩きだしてしまう啓太先輩についていくのが精いっぱいで、私の疑問はどこかへ行ってしまった。
●選択2「手を取らない」
ボブ子
「えっと……」
どうしよう。さすがに啓太先輩の手をとるのは恥ずかしいかも。私が両手を握って困っていると、目の前に出されていた啓太先輩の手が重力に従って落ちた。
桂木啓太
「ごめんね、困らせたね。……期待しすぎちゃった」
ボブ子
「あ、そんな。私、ちょっと恥ずかしくて」
桂木啓太
「うん、わかってるよ。そうだよね。今の僕は、もう子どもじゃないんだもの。あの頃とは違う。まだ僕は、あの人ほどの権利を持っていない。当然だよ」
ボブ子
「えっと……?」
桂木啓太
「ううん。いいんだ。さ、行こう」
ボブ子
「は、はい」
そう言って啓太先輩はくるりと背中を向けてしまった。
どうしよう。ここからじゃ顔が見れないからわからないけど、ちょっと怒らせてしまったのかも。
でも私のことを気遣ってか、その足取りはひどくゆっくりしている。私はそっと、その啓太先輩の後ろを追った。
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桂木啓太
「その下駄で人の多いところは危ないね。……こっちだよ」
啓太先輩に連れていかれたのは、屋台と屋台の間にある隙間の向こう。少し開けたその先は、空が大きく開けて見えた。
桂木啓太
「そろそろ時間だね」
ひゅるひゅるひゅる――ドンっ!
視界いっぱいに広がる大輪の花火。こんなにも大きく見たのは、初めてかもしれない。思わず歓声をあげると、隣で啓太先輩にくすくすと笑われてしまった。
桂木啓太
「よかった。そんなに喜んでもらえるのなら、地元の人に穴場を教えてもらった甲斐があったよ」
ボブ子
「え、そうだったんですか。ありがとうございます」
桂木啓太
「いいんだ。ボブ子さんが喜んでもらえるだけで、全てが報われるから。ねぇ、だから僕――」
ひゅるひゅるひゅる――ドンっ!
啓太先輩の声が、打ち上げ花火の音でかき消されてしまった。
ボブ子
「ごめんなさい。いま、なんて言ったんですか?」
桂木啓太
「……ううん。大したことじゃないから。ほら、花火を見よう」
ボブ子
「はい」
二人きりで私たちは打ち上げ花火を眺めた。
どうして、啓太先輩の隣はこんなに落ち着くんだろう。
……どうして、啓太先輩はこんなに私に優しいんだろう。
【私はあなたが望む私なのか】
ボブ子が圧倒されてしまう。




