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文化祭(本田サルシス)

 そういえば、チケットをサルシス君に渡すんだった。サルシス君も、今は自分の教室で準備をしてるよね。行ってこよう。隣の教室をのぞくと、一番先に目につくのがサルシス君の金髪だった。サルシス君って見つけやすくっていいよね。


ボブ子

「サルシス君! ちょっといいかな?」

本田サルシス

「やぁ! どうしたんだい、五津木くん!」

ボブ子

「私のクラスがやってる輪投げ屋さんのチケット、サルシス君に渡そうと思って。ぜひ遊びに来てね」

本田サルシス

「なんだって! もちろん行くさ! ありがとう!」


 サルシス君、喜んでくれたみたい。無事にチケットを渡すことができた。





 [・・・ロードします・・・]





 文化祭開幕の放送が流れた。いよいよ文化祭がスタートだ。

 私は、午前の初めにクラスの輪投げ屋さんのシフトが入っている。私は受付係だ。お釣りの勘定を間違えないようにしないと。

 お客さんがやってきた。最初は接客に緊張したけど、だんだん慣れてきた。笑顔で「いらっしゃいませ」と呼びかけているとサルシス君がやってきた。


本田サルシス

「やぁ、五津木くん! 遊びに来たよ!」

ボブ子

「いらっしゃい、サルシス君。遊びに来てくれてありがとう」

本田サルシス

「来るに決まっているじゃないか、こんなおもしろそうなお店! いいねぇ! さっそくやってもいいかい?」

ボブ子

「もちろん、いいよ。ここの線から立ってやってね」

本田サルシス

「なるほど! 了解したよ!」


 輪投げの輪っかを受け取って、サルシス君は腕まくりを始めた。そして長い金髪をサッと手で背中へと流した。やる気十分にサルシス君は人を魅了するようなフォームで一投目! 惜しくも外れた。残念そうな声がいつのまにかできたギャラリーから上がる。

 さらに二投目。今度は的にぶつかりはしたものの、上手く輪っかが通らなかった。サルシスくんの瞳に、重なる失敗から焦りの色がにじみ始める。ギャラリーの中には、両手を組んで祈る人まで現れ始めた。

 しかし次の三投目、四投目からサルシス君の追い上げが始まる。美しく腕が弧を描くフォームで投げられた輪っかは、少しのぶれも無く的を通ったのである。ワッとギャラリーが歓声をあげる。

 そしていよいよ最後の五投目。皆が緊張に唾を飲み、しんとクラス中が静まり返った。サルシス君は集中を高めるように深呼吸をする。そして大きく息を吐いて、投げた! 完璧な輪投げの見本とも言えるような、見事な一投が美しく決まった。見守っていたみんなが一斉に喜びの声をあげる。

緊張から解放されたサルシス君は、清々しい笑顔でこちらに片手を上げてさしだした。


本田サルシス

「最初は失敗したけど、最後は上手くいったよ!」

ボブ子

「うん! やったね、サルシス君!」


 パシンとサルシス君とハイタッチ! いい音が響いて、満足。


ボブ子

「それじゃあ、こっちの机にある景品から好きなものを選んでね」

本田サルシス

「うん。あ、これはいいね! 赤くて丸いフォルムと、それを支える土台が素晴らしいよっ! 美しいね! これをもらうことにするよ!」


 サルシス君が選んだのは、けん玉だった。サルシス君、けん玉やったことがあるのかな? 私も小学校の時にやって以来だなぁ。


本田サルシス

「こんなに楽しいお店に誘ってもらえてよかったよ!」

ボブ子

「それなら良かった。サルシスくんは、これからどうする予定?」

本田サルシス

「お店を回って、いろんな食べ物を買ってくる予定だよ。学くんが休憩なしでずっと働いているからね。なにか差し入れを持っていきたいしね!」

ボブ子

「そうなんだ。……私ももうすぐ休憩時間だから、一緒に行ってもいい?」


 私が聞くと、サルシス君はパッと表情を輝かせた。サルシスくんは表情一つで空気を華やかにさせるからすごいよね。


本田サルシス

「もちろん、いいとも! 五津木くんも一緒なら、全店制覇もできるかもしれないね!」


 全店制覇かぁ……。



選択1「制覇じゃないよ」

選択2「全店じゃ駄目だよ」



●選択1「制覇じゃないよ」

ボブ子

「制覇じゃないよ。全店――支配よ! すべてのお店の味を、私たちの舌の上に乗せてやるわ! 一回はやってみたかったのよね!」

本田サルシス

「なるほど、全店支配だね! 支配というと、なんだか悪いことをするみたいな甘美なロマンがあるね!」

ボブ子

「休憩時間は有限……。事は速やかに行われなけばならないわ」

本田サルシス

「そうだね。慎重に、正確に実行しなければならないね」


 私が隠し事をするみたいに声を潜めると、サルシス君も囁くような声で頷いてくれた。二人で文化祭のパンフレットを確認して、お持ち帰りできる食べ物のお店の場所を把握。効率的に進むにはどうすればいいのかを考えて、任務実行よ!


ボブ子

「時計回りに行きましょう!」

本田サルシス

「そうだね! あ、ここの道を通った方が近いんじゃないかな!」


 気分は、重大な任務を任されたエージェントの気分だった。ただ差し入れを買っているだけなのに、とてもわくわくした気分でお店を回ることができた。サルシス君と一緒だからかな? サルシス君が隣でものすごく楽しそうにしてくれているから、私もつられちゃうんだよね。

 全店を回り終える頃には、サルシス君と私の両腕にはこれ以上抱えきれないってほどの食べ物があった。


ボブ子

「さぁ、これを持って要人の待っている所へ行かないと!」

本田サルシス

「そうだね!」


 二人でサルシス君のクラスへと到着すると、ぎょっとした顔の下前君が出迎えてくれた。ふふふ……、私たちの素晴らしい成果に驚いているようね。


下前学

「な、なんなんだ、その両腕の荷物は!」

本田サルシス

「学くん! 全店支配してきたよ!」

下前学

「全店支配……? まさか、全部のお店のものを買ってきたのか! もっと計画的に買い物したまえ!」

ボブ子

「大丈夫よ、下前くん! 計画的に効率よくお店を回ったから、最短時間で買えたと思うわ!」

下前学

「いや、そういう計画的にじゃなくてだな……。って、君まで本田に協力したのか!」

本田サルシス

「五津木くんがいなかったら、こんなにいっぱいは買えなかったよ! さぁ、一緒に食べよう、学くん! 差し入れだよ!」

下前学

「差し入れ? ……僕の分も買って来てくれたのか。それにしたって多すぎるとは思うが、ありがとう」


 私とサルシス君にお礼を言う下前くん。良かった、喜んでくれたみたいで。任務は無事成功ね!


ボブ子

「そういえば、二人のクラスは展示をしているんだったね」

本田サルシス

「そうだよ! 暗幕と青いライト、波の音を奏でるCDで深海を表現したんだ。一番のメインはこのサンドアートだね! 砂に色を付けて、それを組み合わせて魚を描いてみたんだ!」


 青い光に照らされて、宙を泳いでいるように浮かぶ魚の砂絵。波の音を聞きながらこうやって見ていると、自分が海の中で息をしているみたいな不思議な気分にさせられる。


本田サルシス

「ここは、絵を見ながら飲食も出来る休憩所としても使えるんだ! 椅子に座って、皆で食べよう!」


 サルシス君のクラスで、一緒に大量の差し入れを食べた。あまりにも多かったから、サルシス君の他のクラスメートにも分けることになった。

いろんなものが食べられてよかった。また来年も全店支配、してみようかな。

【僕らの食い倒れ侵略行為】






●選択2「全店じゃ駄目だよ」

ボブ子

「全店じゃ駄目だよ。そんなにいっぱい食べられないし、持ち歩けないでしょう? ちゃんと選んで買おうよ」

本田サルシス

「そうかい……? 残念だけど、仕方ないね」


 しょんぼりと肩を落として勢いを失くしてしまうサルシス君。ちょっと可哀想かな? でも全店制覇なんて、無茶だよね。

 パンフレットを確認すると、お持ち帰りのできる食べ物のお店というのは多い。どれがいいのかな? 差し入れだから食べやすいやつ?


本田サルシス

「いろんなお店があるねぇ! 選択肢が多いと、夢もいっぱいだねぇ!」

ボブ子

「サルシス君はどれを買いたい?」

本田サルシス

「ううん。全部買いたいぐらいなんだけど……」

ボブ子

「じゃあ、とりあえず定番のものから買ってこようか」


 サルシス君はまだ全店制覇を諦めきれないらしい。しょうがないから、私が適当に食べやすそうなものを選ぶことにした。……男の子って、どうしてこういう無茶な事をしたがるんだろう?


ボブ子

「とりあえず、こんな感じかな。そろそろ下前君のところまで差し入れに行こうか」

本田サルシス

「そうだね」


 サルシス君のクラスに行くと、受付をしていた下前君が私を見て不思議そうな顔をした。


下前学

「五津木さん? 本田と一緒に回っていたのか」

ボブ子

「うん。下前君に差し入れを持って来ようと思って。ね、サルシスくん」

本田サルシス

「学くんが好きそうなものはちゃんと買ってきたよ!」

下前学

「差し入れ? 僕の分も買って来てくれたのか。ありがとう」


 食べ物をいれた袋を掲げると、下前君がお礼を言ってくれた。良かった、喜んでくれたみたいで。


ボブ子

「そういえば、二人のクラスは展示をやっていたんだね。これは、砂絵?」

本田サルシス

「そう。このサンドアートで深海の魚を表現しているんだ。暗幕と青い光で演出すると、まるで本当に深海にいるみたいだろう?」

ボブ子

「うん。すごいね」


 私が砂絵をじっと眺めていると、サルシス君が荷物を下前君に渡してまた教室を出て行くような素振りを見せた。どうしたんだろう、トイレかな?


本田サルシス

「学くんと五津木くんは先に食べていてくれたまえ! ボクはちょっと買い忘れてきたものを買ってくるよ!」

ボブ子

「え、サルシス君?」


 私の言葉も聞かずに、サルシス君はさっと金髪を揺らして行ってしまった。買い忘れたもの? なにか買いたいものがあったのかな? 言ってくれれば、それも買ったのに。


ボブ子

「全店制覇、そんなにしたかったのかな?」

下前学

「全店制覇? それは本田が言ったのか? ……まったくしょうがないな。五津木さん、ここは休憩所にもなっているから飲食可能だ。そこの椅子で先に食べてくれたまえ。本田の奴が本当に全店制覇しに行ったのなら、いつ帰ってくるかわからないからな」

ボブ子

「そっか……」


 ちょっとしたら、また大量の食べ物の袋を抱えたサルシス君が戻ってきた。そんなに全店制覇したかったのなら、一緒にやってあげればよかったかな。

【祭りに理性は不用である】


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