文化祭(桂木啓太)
そういえば、チケットを啓太先輩に渡すんだった。啓太先輩も、今は自分の教室で準備してるよね。ちょっと行きづらいけど、二年生の教室に行こうかな。
上級生ばかりでちょっと居心地が悪い廊下を通って、啓太先輩の教室の前までやってきた。啓太先輩、いるかな? ちらりと二年生の教室をのぞいてみると、啓太先輩が誰かと話している姿が見えた。お話し中なら今、声をかけたら迷惑かな?
ちょっと悩んでいると、啓太先輩がふっとこちらを振り返ったところに目が合った。すると啓太先輩はにっこりと笑って、こちらにまっすぐとやってくる。い、いいのかな? 誰かと話していたみたいだけど。
桂木啓太
「おはよう、ボブ子さん。どうしたの?」
ボブ子
「おはようございます、啓太先輩。えっといいんですか? お話していたみたいですけど」
桂木啓太
「話? ああ、さっきの、えっと確か森野君だっけ? 彼とは大した話をしていたわけじゃないから大丈夫だよ。それで、ボブ子さんは僕になにか用事かな?」
ボブ子
「えっと、チケットを渡したくて。私のクラス、輪投げ屋さんをやるんです。よければ遊びに来て下さい」
桂木啓太
「僕にくれるの? うれしいな。絶対に行くね」
啓太先輩に無事チケットを渡すことが出来た。
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文化祭開幕の放送が流れた。いよいよ文化祭がスタートだ。
私は、午前の初めにクラスの輪投げ屋さんのシフトが入っている。私は受付係だ。お釣りの勘定を間違えないようにしないと。
お客さんがやってきた。最初は接客に緊張したけど、だんだん慣れてきた。笑顔で「いらっしゃいませ」と呼びかけていると――
啓太先輩がやってきた。
桂木啓太
「こんにちは、ボブ子さん。遊びに来たよ」
ボブ子
「いらっしゃいませ、啓太先輩。それじゃあさっそくチケットをお預かりしますね」
桂木啓太
「うん。……これ、ボブ子さんも作ったの?」
ボブ子
「は、はい」
輪投げ屋さんの看板や内装を見て聞く啓太先輩に、ちょっと恥ずかしく思いながら頷く。輪投げ屋さんは子ども向けでもあるからと思って絵を描いてみたんだけど、変になったのだ。美術の成績は良くも悪くも無い5段階中の3のくせに、ちょっと調子乗っちゃった……。
誤魔化すように輪投げの輪っかを差し出した。
ボブ子
「えっと、これが輪投げ用の輪っかです。ここの線に立って、投げてくださいね」
桂木啓太
「うん。えっと、こうかな」
啓太先輩は自信なさそうな態度ながら、見事に輪っかを的に入れていく。あっという間に全部の輪っかを通してしまった。
ボブ子
「おめでとうございます。ここの景品から、好きなものを一つ選んでください」
桂木啓太
「そうだなぁ。じゃあ、これで」
啓太先輩は、ある映画のクリアファイルを手に取った。私は知らないんだけど、これは何の映画なんだろう? あんまり有名じゃない奴みたいだけど。
ボブ子
「啓太先輩は映画が好きなんですか?」
桂木啓太
「そうだね。月に一回は映画を見に行くね。良い気分転換になるよ」
ボブ子
「そのクリアファイルの映画は、観たことあるやつですか? 私は全然知らなくて」
桂木啓太
「小さい劇場でしかやってなかったやつだね。結構好みが分かれるんだよ。だから、ボブ子さんが知らなくてもしょうがないんじゃないかな」
そこで啓太先輩はちらりと教室の時計を確認した。啓太先輩、何か約束でもあるのかな? それじゃあ、あんまり話しかけたらだめかな?
選択1「ありがとうございました」
選択2「何か用事があるんですか?」
●選択1「ありがとうございました」
ボブ子
「ありがとうございました、今日は来てくれて」
桂木啓太
「え? どうしたの、急に。まるで僕とお別れするみたいな言い方だね」
ボブ子
「え? あの、時間を確認していたので、用事があるのかと思って」
桂木啓太
「わざわざボブ子さんに会いにきたのに、他の用事があるわけないよ。……帰ってほしい?」
ボブ子
「いいえ! そんなことはないです」
桂木啓太
「そう。なら、良かった」
勝手に早とちりしちゃったなぁ……。落ち込んでいると、啓太先輩が私の顔を横から覗き込んできた。
桂木啓太
「ボブ子さん、大丈夫?」
ボブ子
「は、はい」
桂木啓太
「なんだか、元気が無いね。ボブ子さん、休憩はいつ?」
ボブ子
「えっと、今からですね」
桂木啓太
「なら、良かった。僕と一緒に休憩しない? 何か奢るよ」
ボブ子
「え、そんな、奢ってもらうなんて」
桂木啓太
「僕のことは気にしないで。さぁ、行こうか」
啓太先輩と一緒に、休憩時間を過ごすことになった。どこに行こうかな。特に何も考えていなかったけど。そういえば、お腹が空いたかな。私がお腹をさすっていると、啓太先輩がいいお店があると教えてくれた。
桂木啓太
「近くのお弁当屋さんが、文化祭の時に限定おにぎりを校内で売っているんだ。おいしいんだよ。それを買って、どこか涼しいところで食べようか」
ボブ子
「そうなんですね。楽しみです」
桂木啓太
「うん。あ、結構混んでいるみたいだね。ここで待っていて。買ってくるから」
啓太先輩は人込みの中にすっと入って、おにぎりを買いに行ってしまった。……さっきから、啓太先輩に気を遣わせて申し訳ないな。やっぱり奢ってもらうなんて申し訳ないし、お金は払おう。
桂木啓太
「お待たせ、ボブ子さん。ボブ子さんは何が好きなのかよく分からなかったから、とりあえずいっぱい買ってきたよ」
ボブ子
「ありがとうございます。あの、いくらしましたか? 半分払います」
桂木啓太
「え? さっき言ったように、僕が奢るよ?」
ボブ子
「でも、申し訳ないしです。払いますよ」
桂木啓太
「……そう。そっか。僕は奢ってあげたかったけど、ボブ子さんには迷惑だったね。ごめんね」
ボブ子
「え、そんな。迷惑だなんて」
桂木啓太
「ううん。いいんだ。僕が、今度から気をつけるよ。ボブ子さんは嫌なんだもんね」
そう言って首を振る、またなんでもないように笑ってくれる啓太先輩。だけど、啓太先輩を悲しませちゃったかな。素直に奢られていればよかったのかも。
ちょっと気まずく思いながら、二人でおにぎりを食べた。
【気を遣うことに気を付けよう】
●選択2「何か用事があるんですか?」
ボブ子
「何か用事があるんですか?」
桂木啓太
「え? 無いよ。どうして?」
ボブ子
「時間を確認しているから、急いでいるのかと思って」
桂木啓太
「そういうわけじゃなくて。……ボブ子さんの休憩時間、いつなのかなっと思って時間を確認しちゃったんだ」
ボブ子
「そうなんですか? 実は今から私、休憩なんです。啓太先輩のクラスって何をやっているんですか? 見に行きたいです」
桂木啓太
「そう? それじゃあ一緒に行こうか」
啓太先輩のクラスがやっているお店に行くことになった。どうやら啓太先輩のお店は、喫茶店をやっているらしい。
ボブ子
「じゃあ、啓太先輩はウェイターですか? 見たかったなぁ」
桂木啓太
「ううん。僕は裏方で、エプロンしながら配膳したりするばっかりだよ。でも、ボブ子さんが見たがるならウェイターをやってもよかったかもね」
ボブ子
「きっと、啓太先輩にはウェイター姿が似合ったと思いますよ」
桂木啓太
「そうかな? あ、ここだよ」
喫茶店の看板がある教室を指さして、啓太先輩が案内してくれた。
喫茶店らしくメニューには三種類ぐらいのケーキが載っていた。私はパウンドケーキと紅茶を注文して、啓太先輩はオレンジジュースだけを注文していた。
ボブ子
「啓太先輩は何も食べないんですか?」
桂木啓太
「うーん。僕、洋菓子が苦手なんだ」
ボブ子
「え、そうなんですか? ごめんなさい。私、何にも考えないで喫茶店に行きたいだなんて言って」
桂木啓太
「ううん。僕は一緒に来られただけでも満足だよ。ボブ子さん、ケーキおいしい?」
ボブ子
「はい。おいしいです、けど……」
桂木啓太
「おいしいなら、笑ってくれると嬉しいな。ボブ子さんには笑顔が一番だよ」
ボブ子
「えっと、はい……」
啓太先輩にうながされて、目の前にあるパウンドケーキをぱくり。うん、やっぱりおいしい。苦手な啓太先輩には申し訳ないけど、私はケーキが大好きなんだよね。むしろ、女の子でケーキが苦手な子ってそういないんじゃないかな。
もぐもぐ食べていると、目の前に座った啓太先輩がふふふっと笑った。
桂木啓太
「ボブ子さんは本当においしそうに食べるね。やっぱり来てよかった」
ボブ子
「え、私、そんなに変な顔して食べてましたか?」
桂木啓太
「ううん。こっちまで幸せになるような顔をしていたよ」
ボブ子
「そ、そうですか」
恥ずかしくなって、さっさと食べてしまおうと食べるスピードが早くなってしまった。私、どんな顔をしていたんだろう。休憩時間は啓太先輩と喫茶店でまったり過ごした。
【おいしい文化祭】




