文化祭準備(部活準備編)
●生徒会
私は生徒会だから、そっちに行かないと。今年の生徒会は特に文化祭での出し物をしないらしいけど、文化祭中の見回りはする。その見回りの手順とか、タイムシフトを話し合わないといけないのだ。
生徒会室に行くと、すでに下前君が来ていた。
ボブ子
「下前君って、あいかわらず来るのが早いよね。……瞬間移動?」
下前学
「からかうのは止したまえ。先生に行って、早めに抜けさせてもらっただけだ」
つんとそっぽを向いてしまう下前君。いつも反応してくれるから、思わず言っちゃうんだよね。
それから先輩たちもやって来て、文化祭当日の見回りの手順が説明された。
ボブ子
「当日はブレザーなんですか? まだこんなに暑いのに?」
先輩A
「うん。生徒会として来賓の人とも顔合わせするから、一応ブレザーを用意してほしいの。もちろん来賓の人との会う時以外は脱いでも大丈夫よ」
ボブ子
「保冷材とか、持ってこようかな。絶対、暑いもん……」
先輩A
「そうね。それもいいかもしれないわ。それからシフトなんだけど、一年生二人で組めるかしら? 他の上級生はクラスの出し物で忙しいらしくて」
下前学
「はい。大丈夫です」
文化祭の当日は、私と下前君が二人で組んで学校を見回ることになった。まぁ、そんな大したことは起こらないよ、ね……?
下前学
「当日はよろしく頼む」
ボブ子
「うん。よろしくね」
その後も軽く話し合って、生徒会は解散となった。
【何事も起こらない、はずがない】
●茶道部
私は茶道部だからそっちに行かないと。文化祭当日、茶道部はもちろんお茶をお客さんに振舞う。その準備として、和室を掃除したり、お茶碗を洗ったり、花を飾ったりしないといけない。
作法室に行くと、啓太先輩が畳の上に掃除機をかけていた。私に気が付くと、啓太先輩が掃除機のスイッチを切って近づいてきた。
桂木啓太
「ボブ子さんも手伝いに来てくれたんだね。さっそくなんだけど、仕事を頼んでもいいかな?」
ボブ子
「はい。何をしましょう」
桂木啓太
「当日は大量のお茶碗を使うからね。みんなで協力して洗ってくれないかな? 僕も掃除機をかけ終わったら、そっちを手伝いにいくよ」
ボブ子
「わかりました」
水道に行くと、何人かがすでにお茶碗を洗っていた。流し台のところはもう人でいっぱいみたいだから、私位はお茶碗をふきんで拭く役をしようかな。ひたすら無心にお茶碗を拭き続ける。
こうしてずっと同じ作業をしていると、機械になった気分だな。次のお茶碗を手にとろうとした先で、誰かの手が先にお茶碗をとってしまった。
ボブ子
「あれ、啓太先輩?」
桂木啓太
「ボブ子さん、僕が来ていたのに気づいてなかったでしょう?」
ボブ子
「ご、ごめんなさい。つい、集中して……」
桂木啓太
「いいんだ。熱心にやっていたものね。ほら、もうすぐで拭き終わるよ。ボブ子さんの一生懸命やってくれたおかげだね」
ボブ子
「私はただ何も考えずに拭いてただけですよ。啓太先輩も、お掃除お疲れさまです」
桂木啓太
「うん。ボブ子さんにそう言ってもらえると、うれしいね。毎日言ってほしいぐらいだよ」
ボブ子
「毎日、ですか」
桂木啓太
「そう。毎日」
お茶碗を拭き終えてから、全体での打ち合わせを行ってその日は解散となった。
帰りは啓太先輩に送ってもらうことになった。遅くなると、いつも啓太先輩に送ってもらっている気がする。
【あなたは家の前までは送ってくれない】
●園芸部
私は園芸部だからそっちに行かないと。園芸部は育てた植物の写真を展示して、他にも育てた花で作った押し花のしおりやポストカードを販売したりする。
伊藤忠良
「あ、五津木さん。いまから部活に向かうんですよね。クラスでの作業がひと段落したら、部活の方にも顔を出しますね。去年と同じ要領で作業をしてください、と先輩に伝えてくれますか」
ボブ子
「はい。わかりました」
部室に行くと、皆が一年間でとった植物の写真を広げていた。こうしてみると、すごくいろんな種類のものを育てているよね。
先輩A
「あ、五津木さん。確かタダちゃん先生のクラスだったよね? タダちゃん先生は?」
ボブ子
「伊藤先生はクラスの作業が一段落してから顔を出すそうです。去年と同じように模造紙を作ってください、だそうです」
先輩A
「オッケー! 植物の紹介をする模造紙を作るの。どの写真を使う?」
同輩C
「春夏秋冬でまとめるのがいいですよね。花言葉とかのせたりしたら、女子受けはいいんじゃないですか?」
先輩B
「まじで! 女子受けいいの! じゃあ、俺、花言葉図鑑作るわ!」
先輩A
「すぐに調子に乗らないの!」
皆でワイワイと騒ぎながら、植物を紹介する模造紙を作っていた。こういうのって、皆でやると楽しいよね。なかなかの大作になったみたい。
そうやっていると、伊藤先生がひょっこりと顔をのぞかせた。私たちが作った模造紙を見て、目を細めて嬉しそうに頷く。
伊藤忠良
「うんうん。いい出来ですね。お客さんが喜ぶこと間違いなしです」
先輩A
「本当かなぁ? タダちゃん先生って、身内贔屓なところがあるから」
先輩B
「ヨッシー先生って、いつも褒めてくれるからあんまり感動がないな」
伊藤忠良
「えっ! そ、そうかな? いつも心から褒めてるつもりなんだけど……」
しょんぼりと肩を落とす伊藤先生に、先輩たちがくすくすとからかうように笑う。私もつられて笑って、伊藤先生もそれに合わせて笑う。
その後、軽く当日のタイムシフトを決めてから解散となった。
【笑ってくれるだけで満たされるから】
●テニス部
私はテニス部だからそっちに行かないと。テニス部は屋台をすることになっている。やるのは爆弾焼きだ。
中にいっぱい具が入っていて、お得感がある! との意見で決められた。当日は鉄板を使うので、暑いだろうなぁ……。
部室に行くと、マネージャーの先輩がもう来ていた。机の上に向かって、買うもののリストや爆弾焼きの作り方をわかりやすく図解したものを書いている。その周りで、他の選手の先輩たちはぼんやりと立っている。だめだなぁ、これは。
ボブ子
「もう! 他の人たちは、先輩にまかせっきりにしないでください! 先輩、私に手伝えることはありませんか?」
マネージャー
「あ、ボブ子ちゃん。そうね。他の男どもは頼りにならないから、ボブ子ちゃんを頼りにさせてもらおうかな」
他の人に任せると心配だから、とお店には私か先輩のどちらかが必ずいるようにしたいとのことだった。確かに他の先輩には任せられないよね、怖くて……。
選手A
「さっきから、俺たちのことをボロクソに言い過ぎだぞ!」
選手B
「そうだそうだ! 俺たちだってやるときはやるんだぞ!」
選手C
「俺たちの力、見せてやるぜ!」
マネージャー
「とか言いながら、手伝おうとしないでダラダラしてるんだもの。だから駄目なのよね、あんたたちは」
先輩ははぁっとため息をつきながら、私に両手を合わせて謝った。
マネージャー
「ごめんね、ボブ子ちゃんに負担をかけて。私もできるだけシフトに入れるようにするから……。ただ、この時間だけはちょっと抜けたくて」
ボブ子
「大丈夫ですよ。……クラスのお仕事でもあるんですか?」
マネージャー
「ううん。クラスの方は大丈夫なんだけど、ちょっと演劇部に行きたくって」
ボブ子
「演劇部、ですか?」
マネージャー
「うん。実は私、ファンなの……」
ファン……? 演劇部でファンがあるほど人気なものって、まさかサルシス君とかじゃあ――
マネージャー
「エンクマ君って知ってる? 演劇部のマスコットキャラ、熊の着ぐるみなの! 誰がやっているのか知らないんだけどとってもかわいくて! 大ファンなの!」
サルシス君じゃなかった。それにしてもエンクマ君のファンだったんだ、先輩……。私もエンクマ君は何回か見たことあるけど、結構背が高くて大きくて怖かったような。
マネージャー
「ちらっとエンクマ君を見てくるだけだから! 一瞬だけだから! いいかな?」
ボブ子
「は、はい。先輩が見たいのなら、構いませんよ」
その後も、マネージャーの先輩と一緒に文化祭の話し合いをした。
当日はどうか、上手くいきますように。
【真面目な人ほど意外な趣味を持っている?】
●帰宅部
私は帰宅部だから、特に帰らないといけない理由も無い。
選択1「でも、帰ろう」
選択2「作業を続けよう」
●選択1「でも、帰ろう」
でも正直、面倒くさい文化祭の準備とかこれ以上やってられないわ。理由を適当に作って、さっさと帰ろう。
私が荷物をまとめていると、それに気づいた伊藤先生が優しい顔で笑いかけてくれた。
伊藤忠良
「あ、五津木さんも用事があるんだね。あとは僕に任せて! 気をつけて帰ってね!」
うう……。先生にあんな顔を見せられたら、ちょっと罪悪感が。
選択1「やっぱり作業する」(●選択2へ飛ぶ)
選択2「だけど帰る」
○「だけど帰る」
ボブ子
「はい。申し訳ないですけど、もう帰りますね」
伊藤忠良
「うん。それじゃあ、また明日ね」
先生がにこにこ笑って、手を振ってくれる。私は何でもない顔をして手を振り返してさっさと教室を後にした。だって、作業なんて面倒なんだもの。ああいうのは、暇を持て余している人がやればいいわ。私はこれから、家に帰ってごろごろしないといけないの。
下駄箱で靴を履き替えて、外に出たときだった。違和感を見つけたのは。
ボブ子
「え、どうしてこんなに暗いの……? まだ夕方よね?」
外が夜みたいに真っ暗だったのだ。腕時計で時間を確かめても、まだ四時過ぎ。暗くなるには早すぎる。なんたってまだ九月なのだ。
奇妙な出来事に不安になって、校舎に戻る。教室まで戻ろうと足を進めて、さらに違和感が襲ってくる。誰とも廊下で会わないのだ。どうして? 嫌なドキドキが大きくなり、震える手で教室の扉を開ける。そこには、さっきまでいたはずの先生も、クラスメートもいない。
ボブ子
「どうして? なんで誰もいないの?」
チカチカと、教室で点けっぱなしだった蛍光灯が点滅する。
この時の私はまだ、学校に閉じ込められたことに気付いていなかったのだ。いつのまにか私にとりついた悪霊を打ち倒すまで私は出られないのだ……。
【BADEND 呪われた学校】
●選択2「作業を続けよう」
作業を続けよう。とりあえず、私が今作っている輪投げ屋さんの看板を完成させないと。下絵は出来ているから、あとはペンキで塗るだけよね。
伊藤忠良
「あ、五津木さんが看板を作ってくれてるんだね。僕も手伝います」
ボブ子
「ありがとうございます。あ、先生。ネクタイにペンキがついちゃいますよ」
伊藤忠良
「あ。いけない、いけない。奥さんに怒られちゃう。教えてくれてありがとうございます」
先生にも手伝ってもらって、なんと看板のペンキ塗りを終わらせた。ふぅっと一息をつくと、伊藤先生が何かを見て「あ」と声をあげた。先生の視線の先には、受付用の机の上に身を伏せて寝ている八十君の姿があった。なんだか珍しい物を見たなぁ。
伊藤忠良
「疲れちゃったのかな。練絹くんは、今日は大活躍だったからね」
確かに。なんでも器用にこなしてしまう練絹君は、大工仕事で引っ張りだこだったみたい。疲れちゃうのも無理はないよね。
伊藤忠良
「五津木さんって、そういえば練絹くんと仲がよかったよね。よく話しているし……」
ボブ子
「ちょっと話すだけですよ」
伊藤忠良
「うん……。あのね、できればいいんだけど、これからも練絹くんのこと気にかけてあげてくれないかな。僕が本当は見ていてあげられればいんだけど、警戒されちゃっているみたいで。先生なのに情けないね」
ボブ子
「私が八十君を、ですか?」
伊藤忠良
「彼ってちょっとクラスでも浮いているでしょ? いじめられているってわけじゃなみたいだけど、心配なんだ」
深刻な表情で私にそうお願いをしてくる伊藤先生に、私はうなずいた。確かに、八十君って浮世離れしているし心配だよね。私ができるかぎり見ておこう。とりあえず、今は寝ている八十君が風邪を引かないようにしないと。私は鞄から、持ってきていたカーディガンを八十君の肩にかけた。するとそれで起きてしまったのか、八十君がうっすらと目を開ける。
練絹八十
「……五津木さん? 私は、あれ、もしかして休眠していましたか?」
ボブ子
「うん。八十君、疲れていたんだね」
練絹八十
「自分でも驚きました。こんなことは初めてです。……これは、五津木さんのものですか?」
ボブ子
「あ、それは私のカーディガンだよ。風邪を引いたらだめだと思って」
練絹八十
「そうですか。ありがとうございます、いつも」
ボブ子
「いつも?」
練絹八十
「はい。いつも、五津木さんには助けてもらっています」
ボブ子
「そう、だったかな? 覚えてないや」
その後、他の子の作業を手伝ったりして最終下校時間まで残った。
文化祭成功するといいな。
【いつか風船のように風にさらわれる】




