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夏休み部活動(帰宅部)

●帰宅部だったら

 電車に乗ってやってきたのは、大型ショッピングモール。この夏にリニューアルされたってテレビで取り上げられたのを見てから、ずっと来たかったんだよね。今日は久しぶりに思いっきりショッピングをしよう。

 まずは服から見ようかな。その後にアクセサリーを見て、雑貨を見て、お茶しよう! やることがいっぱいだなぁ。

 わくわくとショッピングセンターを回っていて、ふと遠くに白い背中が見えた気がした。白といっても、透明に近いような、透けるような白で――八十君? そんなわけないか。こんなところに八十君がいるはずないよね。気のせいだと思って、私はそのまま目的のお店へ向かった。



――――……



 両手をブティックバックでいっぱいにしたところで、お腹が空いてきてしまった。夢中でショッピングしてたから、いつのまにかお昼の時間が過ぎている。……人が減っているぐらいの時間だから、ちょうどいいかも。

 ちょっと遅めのお昼を食べに行こう、と思ったところで足を止めた。今、自分が通り過ぎたお店の前にいる人に見覚えがあったから。真白い髪に赤い瞳。人形のように整っているけど、ぴくりとも表情を動かさないその姿はちょっと浮世離れしている……八十君? ペットショップの前で、ガラス向こうの犬たちをじっと見ているその姿は、間違いなく八十君だった。嘘、気のせいじゃなかったんだ……!


ボブ子

「八十君? 八十君だよね?」

練絹八十

「……五津木さん、です。びっくりしました。ここで会うとは思いもしませんでした」

ボブ子

「それは私もだよ。どうしたの、こんなところで」

練絹八十

「小犬を見ています……。尻尾を振って動きまわる姿が元気そうです。でもここは狭そうですね。彼らは窮屈だったりしないのでしょうか」

ボブ子

「どうなんだろう。このガラスケースが狭くなっちゃう前には、大体は売れるって聞いたけど」

練絹八十

「売れる……ですか」

ボブ子

「うん。こういうのを歩きがけに見ると、かわいくなって欲しくなっちゃうものね。つい買いたくなっちゃう」

練絹八十

「つまり、彼らは飼い主を待っているのですね。すぐに飼い主に出会えるといいのですが――早く待っている人が来るといいですね」


 ガラス越しに子犬に声をかける八十君。子犬を無邪気にその小さな前足をガラスにこすりつけてこちらにつぶらな瞳を向けてくる。……ああ、こうやって見ると飼いたくなっちゃうなぁ。


ボブ子

「かわいいね」

練絹八十

「はい。……そうです、五津木さんはこの子の飼い主になってあげられませんか? 五津木さんなら安心ですね。この子も幸せになれます」

ボブ子

「あはは。そう言って貰えるとうれしいけど、うちはお父さんがペット飼うのを禁止してて。自分より小さい生き物が苦手なんだって」

練絹八十

「そうなんですか。残念です……」 


 残念そうな声の八十君に、私もなんだか申し訳なくなってくる。なんとか空気を変えられないかな?



●選択1「激辛ラーメン食べよう!」

○選択2「パンケーキ食べよう!」



●選択1「激辛ラーメン食べよう!」

ボブ子

「八十君、お昼まだだったら一緒に激辛ラーメンを食べよう! 有名なラーメン店が、ここのレストラン階に入ってるらしいから!」

練絹八十

「激辛、ですか?」

ボブ子

「うん! 私、辛いの大好きなんだぁ。暑いときに辛いものを食べると、身も心もシャッキリするよね!」

練絹八十

「そうですか? ラーメン……。私はラーメンを食べたことがありません。でも――」

ボブ子

「そうなの? それじゃあ、初ラーメンだね! よし、行こう!」

練絹八十

「あ、いえ。初ラーメンは嬉しいのですが……」


 八十君の手を引いて、噂のラーメン店の赤いのれんの前までやって来た。ラーメンのスープの匂いがぷうんと鼻をくすぐる。やっぱりこれよね!


ボブ子

「さ、行こう!」

練絹八十

「あの五津木さん、私は――」

ボブ子

「店員さん、二名でお願いします!」


 店員さんに案内されたのはテーブル席。最近はラーメン屋さんもおしゃれで、ゆっくりできるよね。席に座ってどの激辛ラーメンにしようかとメニューを見つめていると、八十君が申し訳なさそうに声をかけてきた。


練絹八十

「ごめんなさい、五津木さん。あの、私はここのラーメンが食べられないみたいです」

ボブ子

「え、どうしたの?」

練絹八十

「……ここのメニュー、辛いものばかりなので。私、辛いものが苦手なんです。すみません、言おうと思ったんですがなかなか伝えられなくて」


 そういえば何度か八十君が何かを言おうとしていたような。

うわあぁ! 思わず突っ走っちゃったかも。



●選択1「辛さも過ぎれば甘くなる!」

●選択2「聞かなくてごめんね」



●「辛さも過ぎれば甘くなる!」

ボブ子「大丈夫! 辛さも過ぎれば甘くなるから!」

 八十「え、本当ですか。……辛いものはあまり食べたこと無いのでわかりませんが、そうだったんですね。それじゃあ、ちょっとだけ我慢して食べれば大丈夫になるでしょうか?」


 ⇒選択1「ごめん、冗談だよ」(●選択2の※マークまで飛ぶ)

 ⇒選択2「チャレンジしよう!」



●「チャレンジしよう」

練絹八十

「わかりました。注文してみます」


 私と八十君は、一緒にお店で一番辛いと書いてあるラーメンを注文した。何人かがあまりの辛さに病院行きにまでなったという煽りまである。

店員さんに一度だけ、覚悟はできているのかと聞かれた。大丈夫よ。死ぬ覚悟はできているわ。八十君は知らないけど、でもきっと大丈夫よね。なんたって、彼の瞳は唐辛子と同じ赤い色だもの。


店員A「おまたせしました! 地獄の窯の底ラーメン二丁!」


 ぐつぐつと目の前で煮えたぎる赤いラーメン。いまから、こいつと戦うのね。ごくりと生唾を飲み込む。


練絹八十

「それではいただきましょう」


しかし、強敵の前でも八十君は涼しい顔だ。流石ね。私も箸を手に取って深呼吸。そして一口目をすすった。


練絹八十

「これは――……」


 ばたん!


 八十君が倒れた。くっ……! 唐辛子の力を瞳に宿した彼でも無理だったというの? 慌てて駆け寄ろうとして、カッと自分の脳みそが熱くなるのを感じた。ぐらぐらと視界が滲んで、揺れる。

 うそ、私も……! このままじゃ、二人とも、やられ――!

 伸ばした手は八十君にまで届かずに途中で空を切り、私も倒れた。

 辛さには、勝てなかったよ……。

【BADEND 地獄の窯の底ラーメンの悲劇】




●選択2「聞かなくてごめんね」

ボブ子

「聞かなくてごめんね。無理やり連れてきちゃった。このチャーハンなら辛くないから、食べられるんじゃないかな」(※ジャンプ地)

練絹八十

「そうですね。じゃあ、それにします」

ボブ子

「うん。本当にごめんね。一人で突っ走っちゃって、恥ずかしいなぁ」

練絹八十

「いえ。チャーハンも初めて食べるので嬉しいです」

ボブ子

「そうなんだ。じゃあ楽しみだね」

練絹八十

「はい。一人ではきっと食べませんでした。連れてきてもらえて良かったです」


 それにしても、ラーメンもチャーハンも食べたことが無いなんて。中華が嫌いな家とか? それともお金持ちはラーメンもチャーハンも食べないのかな?


 





○選択2「パンケーキ食べよう!」

ボブ子

「八十君、一緒にパンケーキ食べない? 有名店が、ここのレストラン街にあるらしいの」

練絹八十

「パンケーキ、ですか? 甘いやつですよね。食べてみたいです。最近気づいたのですが、私は甘いものが好きみたいなので」

ボブ子

「そうなんだ。じゃあ、一緒に行こう」


 お店の前まで行って、私はハッとした。お客さんが女の子やカップルばかりだったのだ。ど、どうしよう。うっかりしてたなぁ。……八十君は、私と一緒にお店入っても大丈夫なのかな?

 ちらりと横目で様子を見ると、不思議そうに首をかしげられた。


練絹八十

「どうしたんですか、五津木さん。入らないんですか?」

ボブ子

「えっと、八十君、一緒に入っても平気?」

練絹八十

「平気です。……どうしましたか? 問題でもありましたか?」

ボブ子

「う、ううん! 八十くんがいいならいいの! すいません、店員さん! 二名でお願いします!」


 テーブル席に案内されてからも、気になってちらちらと周りを気にしてしまう。これって、カップルに勘違いされてるんじゃないのかな。それとも気にし過ぎ?

 八十君は何も気づいていないようで、メニューを熱心に眺めている。


練絹八十

「焼きりんごのパンケーキが良さそうです。私はこれにしますね。五津木さんは決めましたか?」

ボブ子

「え? あ、私はチョコレートホイップのやつにするよ」

練絹八十

「わかりました。それでは店員さんを呼びましょう」


 ボーっとしている私の代わりに八十君が注文をしてくれた。八十君が気にしていないのに、私ばっかり気にしていても仕方がないよね。でも、やっぱり、気になる……。


ボブ子

「カップルに、見えるのかな私たち……」

練絹八十

「カップルですか?」


 一人言のつもりだったのに、思ったよりも私の声は大きかったらしい。八十君が私の言葉を復唱する。


ボブ子

「あ、いや、えっと、違うの! その、周りにカップルばっかりだからつい……」

練絹八十

「確かに私たちも二人一組ですからカップルですね」


 なんてこと無い、という風にそう言う八十君に思わず脱力する。なんだか私ばっかり気にしてる。恥ずかしいなぁ。赤くなった顔を誤魔化すために、出された冷たい水を一気に飲む。


練絹八十

「どうしましたか、五津木さん? 顔が赤いです」

ボブ子

「なんでもないよ! あ、ほら、パンケーキが来たみたい! 食べよう!」


 ちょうどいいタイミングで店員さんが来てくれて助かった……。

 パンケーキは口の中に入れた瞬間にとろりと甘く溶けてしまった。





 [・・・ロードします・・・]





 ご飯を食べた後も、とくに予定も無いらしい八十君と一緒にショッピングモールを回った。八十君は動物柄のノートが気に入ったらしく、同じシリーズのものを全部買っていた。


練絹八十

「今日はありがとうございました」

ボブ子

「うん。八十君は、この後お家の人が迎えに来るんだよね?」

練絹八十

「はい。今日は、ちょっとした体験で連れてきてもらったのですが、こんなに楽しくなると思いませんでした。五津木さんのおかげです」

ボブ子

「私も八十君のおかげで楽しかったよ。それじゃあ、またね」

練絹八十

「はい。また」


 手を振ってお別れしたあと、私は電車に乗って帰った。思いがけず会えて、嬉しかったな。

【カップルはウィンドウに展示されているのか】

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