夏休み部活動(茶道部)
●茶道部
今日は夏の文化祭に向けた茶道のおさらいをする。高校になって始めたばかりだから、上手くできるか心配だな。
ボブ子
「おはようございます」
桂木啓太
「おはよう、ボブ子さん。今日は暑いね」
ボブ子
「そうですね。なのに、今からお湯を扱うんですよね。茶道だからしょうがないですけど」
桂木啓太
「ふふふ、そうだね。一応冷房は強めに設定してるけど……逆に寒くなったらすぐ言ってね」
ボブ子
「はい。ありがとうございます」
今日はお茶をたくさん点てる練習だ。文化祭当日には二十人単位ぐらいでお客さんが続々と来るらしい。目の前でお茶を点てる役一人の他に、裏で人数分のお茶を点てなくてはいけない。それが一年生の役目だ。
早速茶碗にお湯を入れ、お茶を点てるけど――全然上手く立たない……。隣の子を見ると、泡がきれいにまとまって上手く点てられている。
ボブ子
「どうやってるの?」
同級A
「こう、泡だて器でクリームを作る容量だよ。手首のスナップをこう、きかせるの」
ボブ子
「スナップ……」
言われた通りにやってみるけど、力いっぱいやり過ぎてお茶が零れそうになってしまった。こんな調子で、本番はどうしよう……。
ちょっと落ち込んでいると、目の前に静かな動作で啓太先輩が座った。そして私の点てたお茶を持ち上げて、一口。あまりにも自然な動作だったからそのまま見逃してしまったけど、あんな失敗したお茶を啓太先輩に飲ませるなんて……!
ボブ子
「け、啓太先輩! ごめんなさい! 失敗しちゃって、それ……」
桂木啓太
「うーん。確かにちょっとお茶の粉が底に残っているね。多分お湯の温度が低すぎて溶け切らなかったのかな? 温度が低いと泡も上手くできないからね。もう一度やってみようか」
ボブ子
「は、はい」
啓太先輩に言われるがまま、もう一度沸かしたてのお湯でやってみる。手首のスナップを使うように、お茶せんを使って丁寧に。最後にのの字を書いて、出来上がり。さっきよりも上手くいったかも。
するとまた自然な動作で啓太先輩が私の点てたお茶を一口飲んでしまう。
桂木啓太
「……うん。おいしいよ。ボブ子さん、入部当初よりもずっと上手くなったね」
ボブ子
「ありがとうございます。啓太先輩のおかげです」
この調子でいけば、文化祭も上手くやれるかも。なんて言うのは調子に乗りすぎかな。
でも、コツはつかめてきたかも……。
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午後を過ぎて一端、お茶の練習も休憩。顧問の先生が買ってきたお茶菓子を食べることになった。今日の茶道部のお茶菓子は、水ようかんだ。
ボブ子
「水ようかんって、見てるだけで涼しげですよね」
桂木啓太
「そうだね。……ねぇ、ボブ子さん。縁側の方で一緒に食べない? そっちの方がもっと涼しいと思うよ」
ボブ子
「はい。そうしましょう」
作法室には小さいながらも縁側がある。窓を全開にし、外に足を放り出して座る。日差しはきついけど、風は涼しくて気持ちがいいな。
桂木啓太
「ふふふ」
ボブ子
「どうしたんですか、啓太先輩」
桂木啓太
「去年は、ボブ子さんとこうしているなんて想像もできていなかったから。なんだか嬉しくて。……水ようかん、おいしいね」
ボブ子
「はい――」
選択1「啓太先輩とだからですかね」
選択2「先生、高いのを買ったんですね」
●選択1「啓太先輩とだからですかね」
ボブ子
「きっと啓太先輩と一緒に食べているから、おいしいんですかね」
桂木啓太
「うん。……うん。ふふふ。きっとそうだね。僕も、ボブ子さんと一緒だからおいしい。一緒だね」
ボブ子
「はい。一緒ですね」
つやつやと光る水ようかんをまた一口食べる。中の餡が甘く舌に残って、そこに抹茶を一口含めばちょうどいい塩梅。啓太先輩も一口食べて、また笑った。
桂木啓太
「昔も、こうやって縁側でお茶を飲んだんだ。……僕の家族が、お茶を好きだったんだ。その影響で僕も茶道部に入ったんだよ」
ボブ子
「そうだったんですね」
桂木啓太
「うん。……これは、ボブ子さんにも初めて言ったかな。またこうやってお話できたらいいね」
啓太先輩とほのぼのとお茶を一緒にした。
この苦い抹茶の味も、入部当初よりだいぶ慣れてきたなぁ。
●選択2「先生、高いのを買ったんですね」
ボブ子
「なかなか良い餡の味がしています。先生、お高いところで買ったんですね。どこで買ったんでしょう?」
桂木啓太
「そうだね。どこで買ったんだろう。あとで聞いてみようか」
ボブ子
「すごくおいしかったです。すごく贅沢をした気分になっちゃいました」
桂木啓太
「ボブ子さんが喜んだのなら良かった。ボブ子さんは和菓子が好き?」
ボブ子
「和菓子、というよりは甘いものはなんでも好きです。洋菓子も好きですよ」
茶道部というと和菓子しか出てこないイメージがあるけど、そんなこともない。この間は栗の入ったロールケーキがお茶菓子として出てきたこともある。あれも、おいしかったなぁ。
桂木啓太
「そうなんだ。僕は和菓子が慣れ親しんでいて好きだな。……洋菓子はちょっと苦手」
ボブ子
「そうなんですね。……じゃあ今度、洋菓子がお茶請けに出てきたら私が食べてあげますね」
ちょっと冗談ぽく言うと、啓太先輩がきょとんとした顔をする。あれ? 先輩、もしかして引いちゃった?
桂木啓太
「そうだね。そうしてもらおうかな。……お菓子を分け合うなんて、懐かしくて嬉しいな」
ボブ子
「そうですか? それならよかったです」
その後も啓太先輩とのんびり休憩した。
茶道部に入ってからお菓子の食べすぎで体重が増えちゃったかも……。
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休憩後も何度かお茶を点てる練習をして、この日の茶道部の活動は終わった。
そこまで暗くはなかったけれど、帰りは家の前まで啓太先輩に送ってもらうことになった。
桂木啓太
「だいぶお茶を点てるのも慣れてきたね」
ボブ子
「この調子で文化祭も頑張ります」
桂木啓太
「うん。僕も手伝うから、当日は一緒にがんばろうね」
ボブ子
「はい」
家に帰ると、久しぶりの部活に疲れてしまったのかすぐに眠気がやってきた。
今日はもう寝よう。おやすみ。
【あなたのおかげと言われたかった】




