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お祭り/補習(屋上)

補習ルートの共通から分岐。

●補習が終わって、「屋上に行こう」としたら、

 その時、なんとなくふとヒヨリ先輩の事を思い出した。どうしてだろう、白い影を見てヒヨリ先輩を思い出すなんて。

 こんな夜中に開いているはずがないと思いつつも、私の足は自然と屋上へと向かっていた。

 屋上前の扉の前まで来て、思わず自分に呆れてしまった。どうしてわざわざこんなところに来ちゃったんだろう。……扉が閉まっていることを確認したら、皆の花火に合流しよう。

 そう思ってドアノブに手をかければ――扉は開いてしまった。その向こうには白いシャツを着たヒヨリ先輩が、当たり前みたいに立っている。

 振り返ったヒヨリ先輩が、私を見て怪訝そうな顔をした。


ヒヨリ

「お前、どうしてここにいるんだ」

ボブ子

「先輩こそ、どうしてここに? 屋上の鍵はどうしたんですか?」

ヒヨリ

「……今の俺にかかれば、こんな場所の鍵ぐらいどうってことない」

ボブ子

「不良学生ですね、先輩」

ヒヨリ

「こんな時間にこんな場所に来ているお前もな」

ボブ子

「私は補習で学校に来ているんです。ほら、校庭でみんなが花火をしているでしょ」

ヒヨリ

「ああ……。毎年やっている、あれか」


 ヒヨリ先輩はもたれかかっているフェンス越しに下をちらりと見てから、私に視線を戻してふんと馬鹿にするように笑った。


ヒヨリ

「お前、補習なんか受けてんのか。……頭悪かったんだな」

ボブ子

「あ、馬鹿にしてますね! そんなことを言うヒヨリ先輩は賢いんですか?」

ヒヨリ

「少なくともお前よりは頭はいいな。言っておくけど、俺は人に妬まれるほど頭がいいぞ」

ボブ子

「それ、自分で言いますか? というか、本当ですか?」


 私は思わず疑いの目をヒヨリ先輩に向ける。いつも屋上にいるヒヨリ先輩はそんなに頭がいいようには見えない。頭がいい人って、隣のクラスの下前君みたいなイメージ。ヒヨリ先輩ってその逆みたいな見た目なんだもの。

 疑ってかかる私に、ヒヨリ先輩がクククッと悪い笑みを漏らす。やっぱり騙してたのかな?


ボブ子

「やっぱり、嘘ですね?」

ヒヨリ

「なんでこんなしょーもないことで嘘をつかないといけないんだよ。本当にお前は馬鹿でわかりやすいな」

ボブ子

「馬鹿って、なんですか! 怒りますよ!」

ヒヨリ

「もう怒ってるだろ」

ボブ子

「じゃあ先生に泣きつきます。意地悪な先輩にいじめられてるって」

ヒヨリ

「ふーん……。馬鹿じゃねぇの」


 急にヒヨリ先輩はそっぽを向いて、私から視線を反らした。なんか、機嫌を損ねちゃった? 先生の話題を出したのがいけなかったのかな?


ヒヨリ

「どいつもこいつも騒いでんな。うるさくてしょうがねぇ。迷惑だ」


 屋上まで、校庭で騒いでいる皆の声が響いてきた。それに不満そうにヒヨリ先輩が鼻を鳴らす。

 なんだろう、先輩って……。



選択1「先生が嫌いなんですか?」

選択2「人が嫌いなんですか?」



●選択1「先生が嫌いなんですか?」

ボブ子

「先生が嫌いなんですか?」

ヒヨリ

「は?」


 聞いた瞬間に、ものすごく低い声を返されてしまった。ものすっごい不機嫌そう。なんかいかにもグレた学生。思わずプッと吹き出すと、舌打ちされた。それもまたグレた学生っぽい。


ボブ子

「先輩、青春謳歌してますねぇ」

ヒヨリ

「どういう脈絡でそういう解釈になったんだ。お前って意味わかんねぇな」

ボブ子

「それが私の売りですね。先輩の売りは、グレた不良学生です」

ヒヨリ

「俺の売りを勝手につくるな」


 ヒヨリ先輩はハァッと長いため息をついた。膝にちょっとだけ顔を埋めてから、こちらを見た表情は少しだけ機嫌の悪さが消えていた。


ヒヨリ

「……そもそも、先生が好きな生徒とかいるのか?」


 一瞬先輩に言われた言葉の意味が分からなかったけど、それが最初に言った私の質問への答えだということに気が付いた。


ボブ子

「もちろん嫌いな先生はいますけどね。好きな先生もいますよ。……ヒヨリ先輩は、日本中、世界中の先生が嫌いそうですよね」

ヒヨリ

「だから、なんなんだお前のその偏見は」

ボブ子

「え、いるんですか、好きな先生? 本当に? 誰ですか、教えてください」

ヒヨリ

「あぁ、鬱陶しい。いいから空見ろ、空」

ボブ子

「空、ですか?」


ひゅるひゅるひゅる――ドンっ!

 

空に目を向けた瞬間、星一つなかった暗闇に光が弾けた。




●選択2「人が嫌いなんですか?」

ボブ子

「人が嫌いなんですか?」

ヒヨリ

「なんだ、その質問」

ボブ子

「いえ。ヒヨリ先輩って、人間嫌いっぽいから」

ヒヨリ

「人間嫌いって、なんだそれ。俺は思春期か」

ボブ子

「思春期ですよ、今の私たち」

ヒヨリ

「まぁ、お前はそうだな」


 まるで自分は違うとでも言いたげなヒヨリ先輩。こちらを見て、なぜかニヤリと口角を上げる。


ヒヨリ

「そもそも人は、誰かしらの人が嫌いだろ。お前、嫌いな奴がいないとでも言うつもりか?」

ボブ子

「そりゃ、いますけど……」

ヒヨリ

「俺は多分お前より、嫌いな人間は少ないと思うけどな。そういう意味では、お前の方が人間嫌いだ」

ボブ子

「えぇ……。なんでそんなこと分かるんですか。ヒヨリ先輩の方が多いですって」

ヒヨリ

「俺は誰を嫌いになるほど人に興味なんて無いからな。嫌いだと思うことは少ないな。人に対して何かを思うなんて面倒だろ」


 そう静かに言ったヒヨリ先輩に、ドキリと心臓が鳴った。なんだかヒヤリとするような冷たい感覚。ヒヨリ先輩の奥底にある、冷たい部分に触れてしまったような。

戸惑う私なんか知らんぷりで、ヒヨリ先輩は涼しい顔で星一つ無い夜空を見上げている。先輩の横顔は素っ気なくて冷たいけど、やっぱり綺麗だった。


ヒヨリ

「そろそろだな」

ボブ子

「え?」


ひゅるひゅるひゅる――ドンっ!

 

音に驚いて空を見上げると、空に大輪の花火が咲いていた。





 [・・・ロードします・・・]





ボブ子

「うわぁ。すごいですね! 花火が近い!」

ヒヨリ

「はしゃぎすぎ。うるさい」

ボブ子

「先輩は落ち着きすぎです! 花火なんですよ! しかもこんなに大きい! もっと感動してください!」

ヒヨリ

「毎年見てたら飽きてくるんだよ」

ボブ子

「先輩、毎年ここで見てるんですか? 意外と風流なんですねぇ」

ヒヨリ

「……暇だからな。花火見るぐらいしか、やることがねぇんだよ」


 そう言うヒヨリ先輩は、私が話しかけても少しも花火から視線を離そうとしない。

なんだ。ヒヨリ先輩って花火が好きなんだ。まったく、素直じゃないんだから。


ボブ子

「私、来年もここに来てもいいですかね?」

ヒヨリ

「……なんだ。また来年も補習になるつもりか?」

ボブ子

「そういう意地悪なこと言います?」


 ヒヨリ先輩は、ふっと花火を見つめたまま目を細めて笑った。意地悪な感じじゃなくて、優しい感じで。


ヒヨリ

「まぁ、好きにしろ。俺はお前がいなくてもここで花火を見るだけだ」

ボブ子

「じゃあ、好きにします」


 それからヒヨリ先輩とずっと花火を眺めていた。

 あとで皆の元に戻ると、姿が見えなくて心配したと伊藤先生に怒られてしまった。でも、怒られてでも見たい景色だったかな。

【あと何度、ここから花火を見るのだろうか】


そろそろ勘の良い人はヒヨリ先輩の正体に気付いていそうだなと思います。

でもしかし、まだまだ隠し続けます。

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