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ハッピーエンド・エンジェル  作者: 安藤言葉
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人間と天使のボーイミーツガール

 幸福の形は人によって様々である。愛する人と結ばれることこそが幸せだと言う人もいるし、週末にケーキを食べることを幸せだと思う人もいる。

 だとすれば俺がこの少女に出会ったことは幸福なのだろうか。それとも不幸なのだろうか。現時点ではわからない。


 少なくとも今隣でニヤニヤしてるこの少女が俺の幸福を願っているようには全く見えないと言うのが現在の印象だ。


「考え事しててドブに落っこちるとかマジウケるんだけど」

「うるっせえな!誰のせいで考え事してると思ってんだよ」

「えっ!なあに私のこと考えてたの~?きゃー照れる~!」

「はぁ!?何わけわかんねえこと言ってるんだ」


 ケタケタと笑い転げている少女は一向に俺を助ける気配はない。

 十八歳にもなって足を踏み外した恥ずかしさから理不尽な逆ギレをしていることはわかっているが、数時間前に出会っってからずっと付きまとってくる少女が馬鹿にしてくるのを許せるほど寛容な性格でもなかった。


 突然俺の前に現れた少女は自分のことを「天使」だといい、俺を幸せにするためにやってきたのだという―――






「ねぇ、ちょっと今いいかな?」


 こんにちはという声に振り向くと十四、五歳くらいの女の子がいた。

 ショッキングピンクのパーカーにパステルカラーが散りばめられたリュックサックを背負った姿はチカチカしたが、顔は整っておりショートヘアがよく似合っている。有り体に言えばかわいい女の子だった。


 少女に見とれて返事を忘れていただけなのだが、無言を肯定と受け取ったのか少女は少し芝居がかった口調で喋りだした。


「ここであったが百年目!これは運命なのです!あなたがわたし、天使に幸せにされるっていうね!」


 思わず眉間に皺がより、口が開いてしまう。もし漫画だったならハテナマークが頭上に描かれているだろう。

 初対面でいきなりこのような電波なことを言われたら誰だって似たような反応になると思う。

 よく見ればリュックサックにフェルトで作られた天使の羽が縫い付けられている。

 だがそれ以外の身につけているもので白いものは何もないし天使要素が見つからない。


「宗教は間に合ってるんで」

「ってなんでやねーん!ちゃうわーい!」


 関西人が聞いたら起こりそうな抑揚で天使はツッコミをいれてきた。

 あれえ、おかしいなー、掴みは完璧だと思ったんだけどなあなどと勝手に振り返る始末である。


 触らぬ神に祟りなし、関わらぬ変人に面倒なしと踵を返そうとした俺だったが、少女は急停止に砂埃が上がる勢いで回り込み、通せんぼをしてきた。


「宗教じゃないって。私、真剣に言ってるんだよ?」

「嘘つけ。しょっぱなからふざけっぱなしじゃないか」

「あれは初対面の人が親しみやすいかなって思って今回から変えてみた。ver2.8くらいだよ!」


 改善してあれならば最初は一体どのくらいひどいものだったのか逆に気になってくる。どうしたものかと髪を掻いていると少女が顔を近づけてきた。思わず後ずさるほどの勢いだったため、面食らってしまった。


「じゃあひとつだけ答えて。幸せになりたい?なりたくない?」


 変人の趣味に付き合う必要はまるでないはずなのだが少女の問いかけは有無を言わさぬ雰囲気があった。

 無視して早くこの場を立ち去るべきだと頭ではわかっているのに、この質問には答えなければいけない気がした。むしろ、答えたいとまで思ってしまった。

 それが少女から与えられたプレッシャーによるものなのか、それとも俺も変人なのかわからなかったが、俺は首を縦に振った。


「じゃあ決まりだね!私の本当の名前はアカネ。あなたを幸せにするために来た天使です。よろしくね」


 差し出された右手は小さく、握手をしてもやっぱり女の子の手だった。

 でも天使は人間に似た姿の非人間だ。信じたわけではないが、もしかしたらと感じたのも嘘ではない。


 これが俺、ナオヤとアカネの出会い、人間と天使のボーイミーツガールだった。

こんにちは。安藤言葉です。

というわけでリハビリ連載です。プロットは考えてありますが書き溜めてはないので更新頻度はわかりません。なるべくがんばりたいと思います。

後書きまで読んでくださりありがとうございます。

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