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第6話『乗り合い馬車の旅』と『ある物語』




乗り合い馬車の旅をしているが、かなり静かだ。時折シーレネ━━━初めに話しかけてきた白いローブの女性だ━━━が話しかけてくるぐらいだ。



「そうだ、ムトくん。知っていますか?」


「何を?」


「“黒炎を纏いし獣”の物語ですよ。」


「あぁ。」



“黒炎を纏いし獣”……………か、うちの村でもよく語られてたけど、外でも有名なんだな。



「全てを焼き付くす黒炎を纏った悪の獣が、世界を滅ぼそうと暴れ回ったのを、神々が『終焉ノ地』に封印した話。有名ですよね~。」


「悪の獣?」


「? どうかしましたか?」


「いや、うちの村で聞かされたのと大分違うなと思って。」


「そうなんですか?」


「ああ。」


「その話、私にも詳しく聞かせてもらえませんか?」


「「え?」」



今まで話しかけてこなかった、青いローブの人が話しかけてくる。



「まぁ、いいですよ。では━━━━━



























昔昔あるところに、銀の太陽と、金の月に選ばれた姫巫女がいました。とても美しい少女でした。



姫巫女には守り人がいました。黒い髪と黒い瞳をした、少年でした。少年はとても強く竜さえも軽々と狩りました。



ある時。とある国の王子が、姫巫女を嫁に欲しいと言いました。けれど、姫巫女はそれを断りました。『この身は神のモノ』だと、『私の伴侶を決めるのは神』だと、そう言って断りました。



ある日。姫巫女がいなくなりました。姫巫女の守り人は彼女を探しました。そして、とある国で彼女を見つけました。その身を自身の持つ“銀の炎”で焼き、残った骨が………………



守り人は泣きました。骨となった姫巫女を抱いて泣きました。そして、怒りました。同じく“銀の炎”で焼かれた、王子の骨を見て。



“不滅之黒炎”を纏い、その心をも黒炎に焼き付くされた守り人は、黒炎の獣となり、世界を焼こうとしました。



それを知った神々は、守り人が暴れた際に、五つに別れた大陸の一つの、ある場所に封印しました。



そして、守り人が封印された場所は、今でも黒い炎が燃え続けている………………



























━━━━以上がうちの村で語られている話です。なんでも、その姫巫女がいたのが、うちの村らしいですよ。」


「へぇ~。」


「成る程。ありがとうございます。」



話を終えると、他の四人も聞いていたようだった。



「だが、おかしくないか?」


「何がですか?」



軽鎧の二人のうち一人が、今の話に疑問をもったようだ。



「おっと、話に割り込んで悪いな。いやなに、なんで“黒炎を纏いし獣”は悪だとする物語が、一般的なんだ? どちらかというと、そこの少年が話した内容の方が正しい気がするが。」



言われてみるとたしかに。何故、うちの村の物語は広まってないんだ? まぁ、村人皆な、外に出ることほとんどないからだと思うけど。



「これは、私の推測ですが。」



青いローブの人が話し始める。



「姫巫女を拐った国。もしくは、その子孫達が自らの失態を隠すためではないでしょうか。」



青いローブの人の言葉に、乗り合い馬車内の人は皆。成る程と、頷く。



「これは、面白い。王都に行ったら調べてみましょう。」



青いローブの人が何かブツブツ言ってるが、よく聞き取れない。

それにしても、物語一つでここまで真剣になれるのは、皆なが暇だからに違いない。きっとそうだ。



























乗り合い馬車の旅も、もう少しで終わりそうだ。ちなみに、軽鎧の二人は、一人がロック、もう一人がウィルというらしい。青いローブと全身鎧の人達は、事情があって名前を言えないらしい。

和やかな雰囲気になった乗り合い馬車で、たわいもない話をしていると。



「止まりな!」


「へへ。乗り合い馬車を見つけるなんて、運がいいぜ!」


「おらぁ! 中に乗ってるヤツ降りてこい!」



どうやら、盗賊が襲ってきたらしい。面倒なヤツらが出てきたもんだ。



「ったく、盗賊かよ面倒くせぇ。ウィルさっさと、倒しちまおうぜ。」


「そうだな、ロック。」



彼らは、ランク5の冒険者らしい。任せていいかな?



「いえ、もう大丈夫です。」



シーレネがニコニコしながら言う。そういえば、盗賊の声しなくなったな。

外を見てみると、白く光る球が五つ転がっているだけだった。



「………これは?」


「さっきの盗賊達ですよ。」


「シーレネがやったのか?」


「えぇ、これでも腕はいいんです。」



ニコニコしながら、球を回収するシーレネ。



「驚いたな、アンタ何者だ?」


「あぁ、そうだな。」



ロックとウィルが尋ねるが、シーレネは笑って。



「内緒です。」



誤魔化した。世の中には、見た目で判断しちゃいけないヤツがいるんだな。

ちょっとした、盗賊(トラブル)もあったが。乗り合い馬車は進み、王都の壁が遠くに見えてきたと、御者の人が教えてくれた。

さて、いよいよ王都だ。暫くは王都で冒険者ランクを上げようと思う。ある程度上がったら、別の国や、別の大陸に行って、見聞を広げようと思っている。



まだ、見ぬ地に思いを馳せながら。俺は乗り合い馬車に乗って、王都の門をくぐった。



王都到着です! もうすぐ、ヒロインが出せそうです。

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