第5話『“ヤハト”』と『ステータス』
主人公ステータス初公開。
作「タイトルを少し変えました。」
ム「何故?」
作「そのうち分かるよ、ムトくん。」
ム「???」
「着いたー!」
「長かったな。」
「大変だったよー。特に」
「特に……………ですわね。」
「特に……………ですね。」
「ぐっ! さっさと離せ! 私を誰だと思っている! ナルネア伯爵家の長男だぞ!」
「「「「「誘拐犯」」」」」
そう。貴族令嬢を誘拐していたのは、貴族の子息だった。何を考えているんだか、まぁ、そこら辺を調べるのは俺達の仕事ではないので、専門の人達に任せる事にしよう。
ちなみに、アイラの事を色々聞かれたが、何処にいるか分からないし、種はあれだけだと言ったら納得してくれた。まぁ、まだ五十個ほどあるけど。
「んじゃ、俺達は依頼の達成報告と、こいつらを冒険者ギルドに引き渡してくるが…………本当に辞退するのか?」
「えぇ、まぁ。」
バルドが言ってるのは、誘拐犯の事だ。なんか、面倒事に巻き込まれそうな気がするので、辞退することにした。
「じゃあ、俺はこれで失礼します。」
「おう! また会おうぜ!」
「元気でな。」
「バイバ~イ!」
「貴族関係で困ったら、いつでもシーレンス家を頼って下さっていいですわよ。」
「ムトくん。また、会いましょう。」
短い間だったが、いい人達だった。また会える事を信じ、別れを告げる。
「さて、とりあえず。宿をとるか。」
“ヤハト”には今日一日停まって、明日乗り合い馬車に乗って、王都“アシュレ”に向かうつもりだ。なので、宿を探す。高くもなく、それでいて清潔な宿は…………お。
「あそこが良さそうだな。」
良さげな宿があったので、そこに決める事にした。
「すいません。泊まりたいんですが。」
「はい! 宿“星見”へようこそ! 何名様ですか?」
「一人です。」
「お一人様ですね。お部屋は205号室になります。」
「ありがとうございます。」
部屋の中に入り、一息つく。ここで、ある事を思いだした。ここに来る旅の途中でバルドに教わった。ステータス鑑定をやってみる。冒険者カードを取り出し、血をたらす。そして、右にスライドさせる。
「お。でたで……………た?」
ステータスにはこう書かれていた。
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【名前】ムト・クレウェル
【性別】男
【種族】人族
【年齢】17
『攻撃力:EX』
『防御力:━』
『知力:B』
『精神力:━』
『俊敏性:SSS』
『器用:B』
≪スキル≫
【格闘術:Lv10】【体術:Lv10】
【魔力操作:Lv8】【気配察知:Lv10】
【無敵之存在:Lv━】【???(封印中)】
≪称号≫
『神竜王の親友』『神狼の祝福』
『精霊王・樹 の寵愛』『全能神の愛子』
『神を超えし者』『神々に感謝されし者』
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【能力値】が可笑しかった。高さは高い順から、SSS、SS、S、A、B、C、D、E、F、Gの十段階まである。そして、スキルレベルは、1~10までだ、だから可笑しい。いくら修行したからって、十年そこらで【能力値】がSSSになるわけない。いってAだ。スキルレベルなんて、もっと可笑しい。この世界での最高値が過去の勇者で、レベル8までだ。レベル10なんて聞いた事も、見た事もない。
称号も可笑しい。全能神はこの世界で一番偉い神のハズだ。そんな神から称号を貰えるような事した覚えはないし、神を超えた覚えもないし、神々に感謝される覚えもない。
「まぁ、【能力値】、スキルレベルはおいておくとしてだ。」
前々から疑問に思っていた事があった。子供の頃から怪我をしたことがない。それだけなら、ただ身体が頑丈だって事ですむ。だけど、修行場所に来た初めの頃、魔物に攻撃されたり、マグマの中に落ちたりしたのに、対して痛くもないし、熱くもなかった。
「…………【無敵之存在】」
これが原因なのか? ステータスに書かれたスキル名に触れれば、そのスキルの詳細が分かる。スキルのレア度も。(スキルのレア度は1~7だ。)
深呼吸をして、スキル名に触れる。
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【無敵之存在】
レア度:不明
≪スキル効果≫
何者ニモ侵サレ不。
何者ニモ縛ラレ不。
何者ニモ傷ツケラレナイ。
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「なんだこりゃ。」
乾いた笑いが出る。これが、産まれた時からあったのか? これじゃ強くなっても、このスキルのおかげで無茶をした結果という事になって、他の黒髪黒目じゃ真似出来ないじゃないか。………まぁ、でも。
「ほんの数人でも、俺に感化されて、強くなろうとする黒髪黒目の人が出てくる事を祈ろうか。」
ちよっとショックだったが、気にしてもどうにもならないので、今日のところは寝る事にした。
ムトは知らなかった。黒髪黒目の可能性を…………他の髪と瞳の色に比べれば、属性を持たず、産まれた時の保有スキルが一つだけという欠点がある。だが……………………
…………かわりに、全能力値と、スキルレベルが異常に上がりやすいという利点があった。
そう、異常に。それは他の髪と瞳の色に比べ、個人差はあるが十倍以上上がりやすいのだ。そう、黒髪黒目は時間をかければかけるほど、強くなるという特性を持っていたのだ。
ムトがこの事実を知るのは大分先になる。
◇
朝だ。昨日の夜は衝撃すぎて、眠る事が出来なかった。なんというか『死んでも夢を叶えてやる!』と、思っていたのに、今なら神に喧嘩売っても、一発殴って勝てる気がしてきた。ハハハハ。はぁ………………とりあえず、乗り合い馬車に乗るか。
「会計お願いします。」
「はい! お一人様一泊、銅貨5枚になります。」
「はい。」
「ありがとうございました! またの御越しをお待ちしています。」
代金を払って、宿を出る。目指すは乗り合い馬車の発着場だ。
「えーと。お、ここだ、ここだ。すいません。」
「なんだい?」
「乗り合い馬車に、王都まで一人。お願いします。」
「それなら、銅貨7枚だ。」
銅貨もうないな。銀貨で払おう。
「銀貨1枚で、大丈夫ですか?」
「おう。ホレ、釣りの銅貨3枚だ。」
「ありがとうございます。」
お釣りを貰い、馬車に乗る。中には三人の先客がいた。軽鎧を着て、長剣を腰にさした男が二人と、白いローブを着た女性が一人だ。男二人は一度此方を見て、直ぐに視線を戻した。女性の方はニコニコして話かけてきた。
「どうも。あなたも王都まで?」
「はい。そうですね。」
「私もなんです。王都まで、宜しくお願いしますね。」
「はい。此方こそ。」
この乗り合い馬車なら王都には、夕方頃にはたどり着くだろう。
結局乗り合い馬車には後三人。青いローブにフードを被り、顔が見えない人が一人。後二人は全身鎧を着ていた。こうして、なんだか奇妙な七人の、乗り合い馬車の旅が始まった。
“ヤハト”が短い? まぁ、少し寄るだけですからね。そのかわり、王都はできるだけ長くします。