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第52話『双黒』と『花畑』






時は遡り、ムトが眠った後。




何処までも広がる黒い空間に一人。まるで、水の中にいるように、身体がゆっくり沈んで行く。その間、様々な感情というか、記憶というか、なんとも言えないモノが頭の中に、流れこんでくる。喜び、悲しみ、怒り、後悔……………きらめくモノから、色褪せたモノ。様々なモノが流れこんでくる。そして、身体が止まり、動かせるようになる。


周りを見渡すと、瓦礫が転がっており、所々が、黒い炎が燃えている。そんな空間に、俺以外の人影を見つけた。



『ついにこの時が来た、継承の時が、姫巫女の守護者たる者よ。我ら守護者達が継いだ力を、受け取るがいい。』



幾人もの声が聞こえる。おそらく、黒炎を継いできた人達の声だろう。俺に浮かんでくるのは、怒り。彼女達(・・・)を一人にして、ここにとどまり続ける大バカ野郎達への怒り。この連鎖に終止符をうってやる。燃やせるもんなら、燃やしてみろ、俺達(・・)は無敵だ。



『さぁ、継承するのだ!』


「黙れよ。」


『?』


「何時までここにいるきだ? あの声が聞こえないのか? 何時まで待ってると思ってるんだ! 終わりの無い空間で一人、たった一人で、大切な人を待ってんだぞ。アンタらが守護者ってんなら、死んでも側で守ってやれよ! どんだけ不器用なんだよ! 俺が終わらせる。このバカげた儀式をな!」


『愚かな、継承しないというのか?』


「それ以前の問題だろ! アンタらは何がしたいんだよ!」


『…………。』



初めて押し黙る人影。しかし、次の瞬間黒い炎が爆発し、俺を飲み込む。



『大人しく継承すれば、良かったものを、俺の次の継承者は無能のようだな。』


「アンタがジルか。」


『? そうだが、何故━━━』


「リティエさんから伝言だ。」


『ッ!?』


「『早く迎えに来い、バカ野郎!』だってよ!」



そう言って、俺は目の前のバカ野郎を殴り飛ばした。さてさて、ユメは上手くやってるかな?





























「ふぅ。やっとついた。」



まったく、どんだけ深い所に閉じ籠っているんだよ。引きこもり駄目! ゼッタイ! 途中に黒炎獣いっぱいいたせいで、時間かかっちまった。


とにもかくにも、目の前の扉を開けよう。先ずは、インターホンを鳴らす。『ピンポーン』という音の後、『ドサッ』『バタッ』とか音がして、何も聞こえなくなる。もう一度鳴らすが、反応がない。ならば、強行突破だ。



「お邪魔しまーす。」



ドアを『べりっ』と、剥がして捨て、中に入る。



「ひっ!」


「久しぶりだな、ココロ。」


「え? ユーくん?」



怯える黒いドレスを着た、腰まである黒髪に、黒曜石のような瞳をした少女に声をかける。彼女の“名”は、【不滅之黒炎(キエヌ ココロ)】、俺と同じくとある神(・・・・)に創られたスキルだ。以前ムトには、俺が出来たのは偶然だと言ったが、本当のところは意図的なのだ。まぁ、話せないけど。



「なんで、ユーくんが?」


「なに、今度お前を継承するのが、俺の主なんだよ。という事で、連れ出しに来た。」



俺がそういうと、ココロが俯いて首をふる。



「私はもう誰も傷つけたくない。私のせいで、何人もの人が傷ついた。もう誰も傷つけたくないの! だから帰って!」



よっぽど俺を帰したいのか、威嚇のために黒炎を放ってくる。そして、黒炎の繭に閉じ籠った。どんだけ引きこもるきだよ。



「おいおい。忘れたのか? 次の継承者は、俺の主だって。」



俺はそう声をかけて、ココロの繭に入る。



「駄目! 入って来たらユーくんが………あれ?」


「本当に忘れてたのか、俺の能力は“無敵”。ココロの黒炎も無効化する。ココロはもう誰も傷つけない。いや、俺が傷つけさせない。ココロもな。だから、行こう。」



ココロに手をさしのべる。すると、おずおずとだが、ココロがしっかり手をとった。





























俺を包んでいた黒炎が、俺の“中”に入ってくる。どうやら、ユメが上手くやったようだ。



『バカな! 何故継承が………』


「さてさて、そろそろ叱られて来い!【神越えし一撃(ゴッド・ブラスト)】!」



黒炎の消えた人影に、全力の一撃をくらわせる。全部吹っ飛べ! 拳を当てた瞬間、『パキッ』と音がして、黒い空間が崩れ落ち、白い空間へと変わる。そこには、俺一人しかいなかった。



『ありがとう。』



俺一人しかいないハズの空間で、そんな言葉が聞こえたきがした。





























「ここは?」



何処までも広がる花畑の中心で、黒髪黒目の男は目を覚ました。ふと振り向くと、銀色の髪をした女性が後ろでニコニコしていた。



「リティエ様?」


「やっと来たわね、ジル。言いたい事は、山ほどあるけどとりあえず、ん。」


「ッ!?」



リティエと呼ばれた女性が、突然ジルと呼ばれた男に口付けをした。



「な、何をッ!?」


「あら? 嫌だったの?」


「そ、そんな事はっ………て、あ、いえ!」


「ふふふ。私はやっと出来て凄く嬉しいわ。」


「は、え?」


「全能神様も、虚無神様も、許可をくれていたのに、何時までたっても告白してくれないんだもの。」



リティエが面白そうに笑う。



「リティエ様、俺は………」


「何も言わなくていいわ。お説教はまた後で、今は甘えさせてね。」


「はい? ん!?」



二人を祝福するように、花畑の花は満開だった。きっと、他の花畑でも、花は満開だろう。






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