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第47話『エルベールの血』と『不壊の城』



VS〈悪魔の茶会デモン・ティーパーティー〉最初は、ジェド対ドッガルです。






『ズドォォォォォォン!!!』



プラドの門の内側。轟音とともに、何かが城壁に叩きつけられる。



「っ痛てて、あの野郎。何回殴れば倒れるんだよ。」


「フハハハハハ! 貴様の拳の一撃はなかなかだが、この俺様の身体には傷一つつけられんぞ!」



ジェドとドッガルの戦いは、ジェドの圧倒的不利の状況が続いていた。門をも砕いたジェドの拳の一撃は、ドッガルの身体に傷一つつけられなかった。


何度も、何度もジェドが殴りつけるが、避けもせずに佇むドッガル。そして、ドッガルの攻撃は、ジェドの身体を簡単に吹き飛ばしていた。



「はぁ、はぁ、めんどくせぇな。」



(ちっ! まだ全然温まって(・・・・)ねぇな。アイツを倒すには、例の一撃しかねぇな。俺の家に伝わる奥義を!)



いくら攻撃が効かなくても、諦めずに何度も、何度も殴りつけるジェド。



「おらぁ!」


「フハハハハハ! 痛くも痒くもないぞ?」


「へへへ! 精々俺をなめててくれよ? おらぁ!」


「ふん!」


「ぐふぁ!」



ドッガルの蹴りを受け、城壁へと叩きつけられるジェド。その身体はボロボロで、骨も折れていそうだった。



(こんな所で、死ねないんだよ。俺を待ってる奴がいるんだ。もう少しもってくれよ。俺の身体ぁぁぁぁぁ!)



城門破壊ゲート・ブレイク!」


「フハハハハハ! 何度やっても無駄だ! かつて傭兵をやっていた俺の異名は、“不壊の城”。絶対的な防御力の前に、どんな猛将も最後は戦意をなくしたわ!」


「ハハハハ。そいつはすげぇな。」



(絶対に壊れない城か。丁度いいじゃねぇか。あの伝説が、本当かどうか試してやる。)



「そろそろ終わらせてやろう。城塞砲キャッスル・キャノン!」


「ッ!?」



地を割るほど踏み込んだ、ドッガルの拳の一撃がジェドに突き刺さり、ジェドが城壁まで吹き飛ばされ、さらに城壁に巨大なヒビが入る。



「フハハハハハ! これが力だ! ちっぽけな人の身では耐えられまい!」





























白い大理石の廊下を、一人の人物が歩いて行く。豪華な服を着て、堂々と歩いて行く。そして、一つの扉から庭に出た。


庭には、色とりどりの花が咲き誇り、美しく色どっていた。その庭の一角に、巨大な切り株があった。十メートルは優に越える巨大な切り株。そこには、何かを打ち付けたような大きな跡があり、そこに向かって拳を突きつける、十歳ぐらいの茶髪の少年がいた。


豪華な服を着た人物は、彼に近づいていく。



「ジェド。撃てるようになったか?」


「父さん。無理にきまってるだろ。」



茶髪の少年は、不服そうに豪華な服装の人物に言い放つ。どうやら、二人は親子のようだ。



「どうせ俺は、落ちこぼれなんだ。兄さん達みたいに剣の才能もないし、姉さんやティエみたいな魔法の才能もないし。」


「ハハハハ! しかし、お前にはエルベールの血が流れておる。城を…………いや、国すら打ち砕く血がな!」


「はいはい。“エルベールの血は、国を打ち砕く”だろ? そんなの嘘に決まってるって。」


「何を言う。この切り株こそ、初代エルベール皇帝が、パンチの練習に使っていた切り株。そして、初代エルベール皇帝が、城を拳の一撃で壊したというのは、本当の事だぞ!」


「ふん!」



かつて、大戦争時代を統一したエルベール帝国には、城をも一撃で打ち砕く皇帝がいたという。しかし、以後そのような事が出来る人間は現れなかった。いつしか、城を砕いた事実は嘘という事になった。





























「昔よぉ。」


「む。まだ生きていたのか、大した奴だ。」



城壁に叩きつけられ、血みどろになりながらも、ジェドが立ち上がる。



「ある帝国の初代皇帝が、城を拳の一撃で破壊したらしい。」


「ふん! 戯れ言だ。」


「だと思うよな。」



そう言ったジェドは、空を見上げた。しかし、そこには曇り空しかなかった。



「青空ならよかったんだけどな。さて、もう限界なんでな、次の一撃で終わらせてやるよ。」


「フハハハハハ! いいだろうやってみろ、受けてやる。」


「じゃあ行くぞ。」



ジェドがドッガルに向かって走り出す。その拳を固く握りしめて、ドッガルに向けて振るう。



王国大破壊キングダム・デストロイ!」


「ッ!?」



『ドガァァァァァァァァァァァァァン!!!』



爆音とともに、周囲に土煙がもうもうと、巻き起こる。そして、煙が晴れると………



「ハハハハハ。“エルベールの血は、国を打ち砕く”……………か。」



ジェドが立っていた。血みどろになりながら、仁王立ちするジェドの目の前には、何か巨大なモノ(・・・・・)がぶつかったように、一部分が消し飛んだ城壁があるだけだった。



「あながち、間違っちゃいなかったな。」



『ドサッ。』



仰向けに倒れたジェドが見上げる空は、相変わらず曇り空だったが、ジェドの目には晴れ渡る青空が何処までも広がって見えた。






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