第4話『旅の仲間』と『襲撃』
“ヤハト”への旅の途中、冒険者三人と、護衛役一人、執事一人と出会い。目指す場所が一緒だということで、“ヤハト”まで、供に旅することになった。
「日も暮れてきたし、この辺で野宿とするか。」
「またですの?」
「申し訳ないが、我慢してもらいたい。」
ノルティアはお嬢様らしく、野宿は慣れてないらしい。俺は、基本何処でも寝られる。
「ムト~。猪肉どうするの?」
「ん? 俺がやると“焼く”しかなくなりますが。」
「それなら私がやりましょう。……………シチューでいいですか?」
「シチュー……………いいですね。」
アズルさんに猪肉を渡すと、テキパキと料理の準備をし、シチューを作っていく。シチューのいい香りが食欲をそそる、皆で早速いただく。
「うお! 美味いなこりゃ!」
「本当だな。」
「美味しい~。」
「美味いですね。」
「ありがとうございます。」
皆で美味い、美味いとシチューを食べていく。ただ一人違うが。
「まぁまぁね。」
ノルティアはお嬢様だから、舌が肥えているらしい。
その後、眠る事になり。ノルティア除く五人で見張りをやることになった。最初は、俺とアズルだ。丁度いい、アズルに聞きたい事があったしな。
「アズルさん。」
「アズルでいいですよ、ムトくん。」
「じゃあ、アズル。お前、人間じゃないだろ。」
こちらを向き、驚いた顔をするアズル。
「どうして?」
「人と精霊じゃ、気配が全然違うからな。」
「……………気配って。」
アズルが何言ってんだこいつ? みたいな顔をする。
「で、何でまた精霊が…………それも大精霊クラスが人間のふりしてるんだ?」
「“階級”まで分かるんですか。」
アズルがガックリする。
「まぁ、なんというか、趣味というか、人間に興味が湧いたというか、楽しくなっちゃったというか。」
「風の精霊らしいな。」
「あまり、驚きませんね。」
「まぁな。」
竜巻に自分から飛び込んでくヤツとか、呪いの言葉かとおもったら、肉肉肉肉肉肉言い続けてたヤツとか、全身光輝いてる全裸のヤツとか、色々な精霊に会ったからな。今更、趣味で人間やってるとか言われてもな。
「それにしてもムトくんは、黒髪黒目なのに、なんであんなに強いんだい?」
「ん? 修行したから?」
「なんで、疑問系なんだい?」
「ステータス鑑定前に、修行の旅に出たからな、初期の【能力値】分からないんだよ。」
「成る程。」
アズルとたわいもない話をしていると。十人以上の気配がした、それもかなり気配が薄い。
「誰か来るな。」
「え?」
数が多い上、何かの魔法を使っていて場所の特定がなかなか出来ない。と、思っていると
「ヤバい。」
「どうしました?」
「ノルティアの気配が消えた。」
「え!?」
◇
「嬢ちゃんがいなくなったってのは、本当か!?」
「護衛失格だな。」
「そんな事より、助けにいかなきゃ! っというか、ムトくんは何してるの?」
「ムトくんなら、お嬢様が何処にいるか聞いています。」
「「「は?」」」
よしよし、案内してもらえるよう頼んだし、盗賊ではなくて殺すつもりなら、連れさらないだろうから、まだ生きてる可能性は高いな。
「案内してくれるよう頼みました。」
「「「え?」」」
『こっちだよ。』『こっち、こっち。』『ついてきて。』
頭の中に声が聞こえ、近くにある木が光りだす。
「木が光った!?」
「行きましょう。」
「成る程。あの光が道標になるという事ですね。」
「そういう事です。」
光る木を追って、右に左に森の中を縦横無尽に走っていく。やがて、少し森が開けた場所に出た、そこには洞窟があった。
『あそこ、あそこだよ。』『まだ生きてるから安心して。』『また、呼んでね。』『王様のことも呼んであげてね。』
「おう、ありがとな。」
案内してくれたお礼をする。
「で、どんな作戦でいく?」
「相手はおそらく、盗賊ではないな。もっと、ヤバいヤツらだな。」
「もしかして、最近噂になってる貴族令嬢を拐うヤツらじゃない?」
「あの、ランク7冒険者でさえ、逃げられたってヤツらか!?」
なんか、ヤバそうだな…………………よし! あの手でいこう。精霊達にも呼んであげてと言われたし。
「【精霊王の呼子笛】」
地面にアイラから貰った種を植え、教わった“キーワード”を唱える。
すると、種を植えた地面から木が生えてきて、大きな実をつける。
「なんだそりゃ?」
「木?」
「実しかなってないね。」
「これは?」
見ていると、実がぱかりと開き、見知った顔の人物が出てきた。
「は~い! さっそく呼んでくれたんだね~。ん? 風の子もいるね~。」
「おう。」
「誰だ?」
「風の子?」
「可愛い~。」
「嘘。」
ニコニコ笑顔で、出てきたアイラ。アイラが出てくると、木は枯れてしまった。
「今回は何のようかな~?」
「あの中にドレス着た女性がいると思うんだが。」
洞窟を指さす。
「あぁ~。たしかにいるね。」
「その人以外のヤツ眠らせて、縛り上げる事って出来るか?」
「何を言いだすんだよムト。」
「出来るわけないと思うが?」
「そうだよ~。こんなちっちゃい子に」
「りょ~か~い。」
「「「え?」」」
「【眠りの香り】それに、【樹木の鎖】」
アイラが魔法を使うが、ここからでは何が起こっているのか分からない。
「さっ! 行こー。」
アイラを先頭に洞窟の中に入って行く。すると、いきなり木の鎖で縛られ、眠っているヤツが二人いた。
「すげぇ!」
「しっかり、捕まってるな。」
「凄い! 凄い!」
「私はお嬢様を探して来ます。」
アズルがノルティアを探しに行ったので、俺達は捕まっているヤツらを外に出す事にした。
「こんなにたくさんいると、どうやって運べばいいんだろうね。」
「台車ぐらいなら、作れるよ。はい。」
アイラが、木を使った台車を作る。
「お、サンキュー。」
捕まえた、連中を台車に乗せていく。その作業をしていると、周りが明るくなってきた。
「皆さん。お待たせしました。」
「助けに来ていただいて、ありがとうですわ。でも、今度からは連れ去られる前に、助けて欲しいですわ。」
「ぐっ! それを言われると辛い。」
「あぁ。」
「ごめんなさい。」
ま、『護衛依頼』だし、しっかり守って欲しいよな、そりゃ。まぁ、俺にも落ち度はあったわけだが。
「それじゃあ、ムト。私は行くね~。」
「おう。ありがとな。」
「うん! あ、そうだ! “あなた達に、樹木の精霊の祝福があらんことを”」
空気に溶けるように消えていく、アイラ。
「よし、夜も明けた事だし、そろそろ出発しましょう。」
「「「「……………………。」」」」
「ん? どうかしましたか?」
「俺に『精霊王・樹 の祝福』が授けられたんだが………………。」
「……………俺も。」
「……………ボクも。」
「……………わたくしも。」
アイラのヤツ、そんなほいほい“祝福”授けるなよな。