第45話『無敵少年』と『単独行動』
真夜中に暗い道を一人で駆ける。どうも皆さん、ムトです。現在俺は、拐われたリラを追っている。
現状俺は、腸が煮えくり返りそう…………という訳ではない。というか、こちらが負ける事はないのだ。敵は、俺達の事をほとんど知らないのだ。にしても、うまくやるかなアイツら、まぁ、心配なのは約一名だけなのだが。
とにもかくにも、敵を騙すなら、先ず、味方から。という事で、現在俺が単独行動をとっているのを知ってるのは、後二人………いや、一人と一体だ。
「お、見えたな。」
暗闇の中、高くそびえ立つ城壁が見える。おそらく、あれがプラドだろう。走る速度のまま飛び上がり、城壁の上にのる。
「さてさて、お、あそこに親玉がいるかな?」
この国はほとんど敵だろうから、城の中に敵がいるだろう。屋根の上を走りながら、城を目指す。
「ん?」
屋根の上を走っていたら、人影が踊りかかってきた。気配がないって事は、人形か。無造作に拳を叩き込み、破壊する。
「流石っしょ。」
「お前は確か………」
フール村にいた人形使いか。にしても、いつの間に邪人になったんだ?
「お前は人間だったハズだが?」
「世界征服の前に、正式なメンバーになったっしょ!」
「つまり、黒幕は邪神か…………以前、悪魔の力を使ってたと聞いたから、悪魔神ってところか?」
「ハハハハハ! なかなか頭がいいっしょ。とにもかくにも、一緒に来てもらうっしょ。」
「いんや、一人で行くから━━━」
俺は足に力を込め、踏み込み、一瞬で相手の前に移動すると━━━
「お前はここで、退場だ。」
おもいっきり蹴りこみ、遥か上空へ蹴り飛ばした。邪人は丈夫だな、普通の人なら一瞬で肉片に変わるが、少しぐちゃっとしただけで、凄い速度で空の彼方へ飛んでいった。まぁ、死は確実だろうけど。
「さて、邪魔モノも片付けた事だし、行きますか。」
再び屋根の上を走って、城へ向かう。
はてさて、城の手前の屋根に来たが、親玉は何処にいるかな? 一番上かな?
城の屋根を飛び移りつつ、一番上を目指す。ここの窓から入れるかな?
「お邪魔しまーす。」
お約束を言いつつ、侵入する。薄暗い部屋だな。何故か部屋には、巨大な魔法陣が描かれているだけだった。後は、扉が四つあるだけ、なんもないな。重要そうだが、無視して行こう。
「侵入者が誰かと思ったら。自分から来るとはバカな奴だ。」
「誰だアンタ?」
四つの扉の一つから、黒い服に黒いマントを身につけた。赤髪赤目の男が現れた。
「我が名はシャドウ。クーディオ様の一番の僕。」
「成る程。その言い方からして、クーディオって奴が黒幕みたいだな。」
さてさて、どう倒すか…………まぁ、今すぐここにいる敵全員倒せるが、そうすると、目立ってしまうんだよな。
「大人しく来てもらおうか?」
「いやだね。」
かなり手加減しながら、蹴りを放つ。片手で簡単に止められる。よしよし、暫く手加減の練習台になってもらおう。続いて、軽くジャブを連続で放つ。全て止められた。いい感じで手加減出来てるな、ストレートを放とうとしたら、無造作に蹴りを放たれる。蹴りが当たるタイミングで、身体の力を抜き、吹き飛ばされたフリをする。
シャドウが出てきたのと反対側の扉をぶち破り、隣の部屋の一つに行く。ふむ。ここは研究室かな?
「ふむ。この部屋は必要ない。ついでに片付けるか。」
シャドウが此方へ向けて、小さな炎を放つ。アイツらから見た俺なら、ギリギリ耐えられる程度の攻撃だろうな、まぁ、俺なら無傷で終わるが、とりあえず、さらに隣の部屋に逃げ込む。扉を閉めたところで、爆音がして扉が吹っ飛ぶ。
「ほう。とっさに隣の部屋に逃げ込み、ダメージを軽減したか。」
「………。」
いや、あれ受けて平然としてたら、俺が無敵だってバレるかもしれないからな。
「だが、そろそろ眠ってもらおう。」
常人なら認識出来ないであろうスピードで、俺の前に移動したシャドウが、突き刺さるようなパンチを放ってくる。よし、受けて気絶したフリ、というか、寝るか。
「ふん!」
「がはっ!」
その場に崩れ落ちる俺。うん、アイツの言う通り、直ぐ眠くなったな。さてさて、〈悪魔の茶会〉の敗因は、幾つかある。まだ負けてないけど。一つは、リラが偽物と気付かなかった事。俺の事をちゃんと調べなかった事。まぁ、一番の敗因は━━━
眠気が襲ってくるなか、心の中で敵を嘲笑う。
━━━俺が無能ではなく、無敵だった事だな。
出て来てそうそう、ムトにヤられるレゼル。敵の幹部と戦う仲間の数と、敵の幹部の数を考えたら、ここで誰か負けなきゃいけなかったんで、彼が選ばれました。




