第42話『妖精便』と『ルシル小国』
「ムリュ、ムリュムリュ。」
「むふふ。美味しいですか? コスモス。」
「ムリュ!」
「ですよね♪」
リラの作った料理は今日も美味しい。ちなみに、今日の昼食はスパグラ。シーフードサラダ。コーンスープ。以上だ。
「ねぇねぇ、ムト。今度はいつデートする?」
「うん? そうだな~」
とりあえず、一週間後は確定として、今度は何処に行くかな?
「いいなぁ。そうだ! グレイさん、私達も行きましょう。」
「え?」
「気分だけでも味わいたいんです! だから、少しつきあってください。」
「お、おう。」
フィリルの勢いにグレイは負けたようだ。まぁ、頑張ろうじゃないか、これは男の宿命だ。
「とりあえず、この後どうする?」
「う~ん………」
『リーン、リーン。』
「なんだ? この音。」
綺麗な鈴の音が聞こえて、藍色の梟がテーブルの上に止まった。どうやらさっきの鈴の音は、この梟の足についている鈴からしたらしい。それと何故か、背中に鞄を背負っている。
「あれ? “妖精便”だ。」
「“妖精便”ってなんだ?」
“妖精便”が何なのか聞こうと思ったが、その前に、梟の背中からひょっこりと、小さな妖精が出てきた。そして、鞄から手紙を取り出してリラに渡した。
手紙を渡し終わると、梟の背に乗って飛んで行った。
「ムト、“妖精便”っていうのは、さっきみたいに鳥類一羽、妖精一人で構成された、配達屋だよ。たまに、猫だったりする時もあるけど。」
「へぇ~、便利な人達がいるんだな。」
リラから“妖精便”について教えてもらい納得する。そして、手紙を読むリラは、だんだん表情が険しくなっていき、手紙を読み終えると、ため息を吐いた。
「どうしたんだ?」
「冒険者ギルドからだったんだけど、〈悪魔の茶会〉の本拠地が見つかったって。」
「本当か!? いったい何処に。」
「ルシル小国。」
「最近出来た国だな、そこの何処にあるんだ?」
「それなんだけど……………」
一拍おいて、リラが口を開きそして━━━
「ルシル小国そのものが、〈悪魔の茶会〉の本拠地みたい。」
━━━とんでもない事を言い出した。
◇
「ルシル小国そのもの? そんなバカな………」
「うん。詳しく言うと、国の上層部のほとんどが、〈悪魔の茶会〉のメンバーらしいの………国王もね。」
「とんでもないな。」
「まぁ、どっちにしろ俺は狙われてるみたいだから、こっちから出向くか。」
「ムトならそう言うと思った。」
「乗り掛かった船ってやつか、俺も行こう。」
「私も皆さんと戦いますよ! もちろんコスモスも。」
「ムリュ!」
全員一致したな、これで次の目的地が決まった。目指すはルシル小国。相手は国だが、負ける気はしない。やってやるさ。
次の目的地が決まりましたね、いよいよ〈悪魔の茶会〉と真っ向勝負です!
一口解説~妖精便~
鳥類一羽と、妖精一人で構成された配達屋です。
バイト、見習い→燕
正社員→梟
ベテラン→鷹
最上級配達妖精→不死鳥等
最上級配達妖精は、十人くらいしかいません。王族が書いた手紙や、重要書類を配達するのが、最上級配達妖精の仕事です。他の配達妖精とは、戦闘力が天と地程の差があります。
ごく稀に、猫等の陸上活動が主な生物や、小さなドラゴンに乗った配達妖精もいます。




