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銀金の幕.1『手紙』と『悲しみ』

幕間一つ目、二つ書きます。




これは、あの日の記憶。今まで生きた中で、一番悲しかった日の記憶。あの日、私は沢山泣いた。大切な人を失った。でも………彼は………



「ふん♪ ふん♪ ふーん♪」



昨日、ムトと約束した。一緒にステータス鑑定に行くって、約束した。嬉しいな、私はムトが大好きだ! 誰よりも強くてカッコいい。



「こんにちはー! ムトはいますかー?」



ムトのお家の前で、大きな声を出す。まだ、ステータス鑑定の日じゃないけど、気持ちが舞い上がっているので、ムトを誘って遊ぼうと思ったから来た。



「リラちゃん。」


「こんにちはおじさん。」



扉を開けておじさんが迎えてくれた。だけど、いつもの笑顔はそこに無く、まるで、無理矢理笑っているような………何があったの? ムトは?



「おじさん、ムトは? いるんでしょ? ねぇ?」


「それは………」



おじさんが、家に招き入れてくれる。私が迎えにくると、いつも台所の椅子に座っていたムトはいなくて、いつも笑顔だったムトのお母さんが、悲しそうにして座っていた。



「おばさん? なんでそんな顔してるの?」



ムトは何処? 何処に行ったの?



「リラちゃん………ムトね、行っちゃった。手紙だけ残して行っちゃったよ。」



涙をながしながら、おばさんが絞り出すように呟いた。行った? 何処に?



「リラちゃん、ムトから君宛ての手紙だ。すまないが、今日のところは帰ってくれ。」



ムトの家から出て、あの場所を目指す。ムトと初めて話したかの場所に。



























村の外れにある大きな木、この木の下でムトに出会った。手紙を開いて、読み始める。




『この手紙を読んでいるということは、俺はもう村から出た後だろう。まずは、勝手に出ていってゴメン。約束破ってゴメン。』



『それでも俺は、強くなりたいんだ。無能と呼ばれる人達のために、強くなる。』



『今までありがと、絶対強くなって帰ってくる。絶対帰ってくるから、待ってて欲しい。』



『次合うときは、かなり強くなってるから、宜しくな!』



「何コレ?」



すごくムトらしい。笑ってしまう。笑わないと涙が出そうだ。



「ヒグッ! うう。なんで、なんでよ、なんで勝手に出て行っちゃうの。まだ、言いたい事たくさんあるのに、一緒に、したい事だって!」



次から次に涙が出てくる。悲しくて、辛くて、どうしようもなくて、あの笑顔がもう一度見たくて………



「うぅぅぅ。あれ?」



手紙に続きがある事に気付く、涙を拭って、続きを読む。



『心配はいらない! と言っても、父さんも母さんもリラも泣いてるだろう。それについては謝る。ゴメン! でも心配はいらない! 俺が怪我した事無いの知ってるだろ? だから、いつもみたく笑っていて欲しい。皆なの笑顔が大好きだから。』



本当にムトらしい。でもね、悲しいものは悲しいんだよ? 辛いものは辛いんだよ?



「帰って来なかったら、絶対許さないんだから!」



この日から十年後、いつも通りの笑顔を浮かべたムトに会うなんて、誰も知り得ない。私も、ムトも。





リラのお話でした。さぁーて、次回は?

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