第3話『初依頼』と『旅』
「どんな、依頼があるかな?」
受けられる依頼は、同ランクか下のランクの依頼なので、ランク1の依頼だけだ。
「ふむふむ。まぁ、最初は薬草の採取とか、ゴブリンの討伐とかだよな。」
というわけで、『薬草採取』と『ゴブリン討伐』を受ける。常設依頼なので、必要な物だけ集めてきて受付に渡して、依頼達成だ。『薬草採取』なら、薬草を十本。品質によって報酬の金額が変わるらしい。『ゴブリン討伐』はゴブリンを五体討伐して、右耳を五つ持ってくれば達成だ。此方も品質で報酬が変わる。
「よし、行くか。」
冒険者ギルドから出て、村の外にある森を目指す。森の中を歩きながら、薬草とゴブリンを探す。お、あったあった、薬草が一つ、二つ、三つ、十本。これで、薬草の方はいいな。次は、ゴブリン。
「グゲギャ!」
「ゲギャ、ギャ。」
「ギャ、ギャオ。」
お、噂をすればゴブリンだ、五体いるなこれでゴブリンの方も達成だな。
「よっ!」
その場で、足を振る。発生した衝撃波により、ゴブリン全員の首が飛ぶ。よし、キレイに倒せたな。
「え~と、右耳が、一、二、三…………よし、五つちゃんとあるな。」
さくさくと終わってしまったが、さっさと達成報告しに、冒険者ギルドへ行こう。
◇
「すいません。達成報告に来ました。」
「はい。何の依頼でしょう?」
「『薬草採取』と『ゴブリン討伐』です。」
「はい。では、ゴブリンの右耳からお願いします。」
「はい。」
ゴブリンの右耳を五つカウンターに乗せる。
「はい。確かにありますね。では、報酬の銅貨5枚です。」
「ありがとうございます。」
「次は、薬草をお願いします。」
「はい。」
取ってきた薬草十本をカウンターに乗せる。
「こ、これは。」
「どうしました?」
「全部、即効性のある、猛毒の毒草です。」
崩れ落ちる俺。毒草、猛毒、即効性。なんで、なんで、薬草採取で真逆の、さらにヤバいモノ取ってきちゃったんだよ。『採取依頼』はもう受けないほうがいいかもしれん。取ってきたモノ全部毒草になる気がする。
「大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。この場合どうなるんですか?」
「依頼は失敗になりますが、常設依頼ですので、気にしなくてもいいですよ。此方の毒草はギルドの方で買いとらせてもらいます。」
「はい。分かりました。」
毒草十本の金額、銀貨10枚を貰う。結構高いな、あの毒草。
◇
あの後、家に帰り。昼食を食べた後はゆっくりする。直ぐに夕食を食べる時間になり、夕食を食べた後は直ぐに寝た。
食べて、依頼を受けて、食べて、ゆっくりして、食べて、寝る。そんなサイクルを続け、旅立ちの朝がやってきた。
「ん~。忘れ物は無し…………と。」
「ムト、大丈夫?」
「うん。準備出来たよ。」
旅立つ準備を終わらせる。
「それじゃ、行ってくる。」
「お兄ちゃん、行ってらっしゃ~い。」
「ムト、怪我や、病気に気をつけてね。」
「ムト、お前の力を見せてこい!」
「あぁ、行ってきます。」
目指すは、この国“ハルリア”の王都、“アシュレ”だが、まずは王都と、村の間にある。“ヤハト”の街を目指す。
再びの長旅になりそうだが、“ヤハト”にも“アシュレ”にも行った事がないので、今から楽しみだ。
村の入り口から伸びる道を歩く。
「ん~。長閑だな~。」
天気は晴天。こう清々しいと、気持ちが楽しくなってくる。魔物も出てこないし、楽でいいな。
「おい! 来てるか?」
「分からん!」
「近くに村があるハズ。そこまで、がんばろ!」
「村は駄目ですわ。魔物に襲われてしまいますわ。」
「そうですね。何処か戦いやすい場所で、倒しましょう。」
静かだと、思っていたが。面倒事がやって来たみたいだ。俺が歩いている道の右側の森から、冒険者であろう者達が出てくる。
スキンヘッドの大鎚を持った大柄の男。青色の髪をし、剣を持った男。赤い髪の拳士であろう獣族の少女。白髪巻き毛のドレスアーマー姿の女性。執事服っぽいのを着た、緑色の髪の男性の五人だ。
後ろからは、猪っぽい、赤くてデカイヤツと、茶色の中くらいのヤツが、冒険者達を追って走って来ていた。
「…………美味そう。」
猪って、美味いんだよな、よし、狩ろう。文句を言われたら、肉以外の牙とか皮を渡せば納得するだろうし。
「ふっ!」
一気に、赤くてデカイヤツの前まで行き。そのまま、受け止める。
「ぶほっ!?」
「ぶひひ!?」
「ぶひぶ!?」
デカイのだけじゃなく、中くらいのも驚いてるな。気配で冒険者達の位置を把握し、後ろにいない事を確認。背中を曲げる要領で、俺の後ろ側にひっくり返すように、猪を叩きつける。
「ぶごほぉっ!」
「ふんっ!」
『グキッ!』
猪の頭を掴んだまま、猪の首をおもいっきり曲げて、首の骨を折り絶命させる。そうこうしてるうちに、中くらいのヤツらは逃げ出していた。
「デカイのだけか。」
俺が、内心へこんでいると。
「おいおい、マジかよ!」
「特殊個体を持ち上げて叩きつけ、首折って倒すとか。」
「スッゴーイ!」
「何者なんですの?」
「見た事ありませんね。」
冒険者達がやって来た。驚き、興味、感嘆、疑惑、観察と色々な目を向けてくる。
「どーも、俺はムトって、いいます。」
「おう! 俺はバルドだ!」
「俺はレード。宜しく。」
「ボクはトトだよ~。」
「わたくしは、ノルティア・シーレンス。」
「ノルティア様の執事のアズルです。」
スキンヘッドがバルド。剣士がレード。獣族の少女がトト。白髪巻き毛の女性がノルティア。執事服というか、執事がアズル。
「あ、俺はこいつの肉以外いらないので、後はお好きなように。」
「え!? いいのか?」
「えぇ、まぁ。」
「わーい! ありがと~。」
「助かる。ムトくんは、何処に行くんだい?」
「“ヤハト”を経由して“アシュレ”に行くつもりです。」
行き先を尋ねられたので、正直に答える。
「“ヤハト”なら、そこの嬢ちゃんの護衛で、俺達も行くから、一緒に行こうぜ!」
「いいね~。それ!」
「そうだな。」
「まぁ、俺はいいですけど。」
俺が暗殺者とかだとは思わないのか?
「どうします? お嬢様。」
「いいのではなくて?」
いいのか。まぁ、暗殺者じゃないしいいか。
そんなこんなで、バルド達との旅が始まった。