表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/69

第36話『竜』と『竜』




「ムリュムリュムリュムリュ!」


「グァ! ゲファッ! ゴブァッ!」


「止めたげぇてぇ! そのドラゴンのHPはもうゼロだぁぁぁぁ!」



今の状況を説明しよう。


コスモスと組み手をやってたら、銀髪銀眼の小さな女の子を連れたドラゴンが出て来て、威嚇してきた。んで、コスモスが『丁度いいや!』みたいなノリで、ドラゴンにパンチを一発。ぶっ飛ぶドラゴン。滑るように、ドラゴンの前まで移動したコスモスが、手加減したパンチを連続で当てて、ボッコボコにしだした。



「コスモス! ストップ、ストップ。」


「ムリュ?」


「やりすぎ。」


「ムリュ~。」



コスモスが反省した。多分、おそらく。



「気に入ったぞ!」


「ん?」



ドラゴンに連れられていた女の子が、突然声をあげる。意外と大人っぽい声だな。



「そこのおのこよ!」


「ムリュ?」


「名はなんという?」


「ムリュリュ!」


「『ムリュリュ』では、分からんぞ?」


「あぁ~。こいつはコスモスだ。」


「ムリュ!」


「ほぅ。コスモスよ、妾の婚約者にしてやろう!」


「ムリュ?」



何言ってんだこの子? まだ名前も知らないのに、突然婚約者にしてやろうって、大丈夫かな?



「何を言ってるんですか姫!」



さっきのドラゴンが、傷だらけの人に変わる。人化出来るって事は、上位竜以上って事か。って事は、姫って呼ばれたあの子は竜王の娘か。何の竜王だろう?



「いいですか、姫。そんなホイホイ婚約者を決めないでください。それに、あの少年は竜ではありません。」


「いや、竜にもなれるぞ。」



千変万化インフィニット・チェンジ】と【存外操作ユメウツツ】を使えば、ドラゴンそのものになんて、簡単になれるだろう。



「なんと、そうか! これでよいだろう?」


「ふざけないでください、姫! そこの貴方!」


「なんですか?」


「出来もしない事を言わないでください!」


「ふむ。見せてやれコスモス。」


「ムリュ!」



コスモスが伸び縮みして、ドラゴンの姿をとる。綺麗な蒼銀色のドラゴンだ。ドラゴンの二人が見とれている。



「よし! 次は人化したドラゴンだ!」


「ムリュムリュ!」



竜形態のコスモスが輝き、人の姿をとる。よよしよし、ちゃんと耳も尖ってるし、成功だな。



「とまぁ、こんな感じだ!」


「ムリュ!」



人化ドラゴン形態だと、力が上がる事に気づいたのか、コスモスが残像を残しながら、シャドーボクシングを始めた。



「完璧ではないか! これで決まりだな、さぁ! 妾の婚約者に!」


「う、どうすれば。」



姫の人は嬉しそうに、お供の人は困った感じで。



「ただ、二つほど問題が。」


「「え?」」


「先ず一つ目、コスモスはお二人の名前を知らない。」


「なんだ、簡単ではないか! 妾はリヒュテ。天竜王リベルデアの娘であるぞ。」


「私は天竜の、ジュトー。姫様の護衛です。」


「コスモスに、ボコボコにされていたがな。」


「かはっ! そ、それは。」


「そして、二つ目! これが、一番の問題だと思います。」



そう! これがかなりの問題だ。コスモスは━━



「コスモスはまだ、一歳なんですよね。」


「ムリュ!」


「「え?」」



そう。コスモスはまだ生まれたて、人形態になっても上手く喋れないし、行動も子供っぽい。さてさて、一歳の子供を婚約者に出来るかな?



「私は一歳児に手も足も出なかったのですか……いえ! それよりも、さすがに一歳児を婚約者にするのは、認めてもらえませんよ。姫様。」


「グヌヌヌヌ。ここは引くとしよう。だが、妾の力でいつか絶対婚約者にしてみせる! まっておれよ!」


「ムリュリュ~。」



竜形態になって去っていく二人に、『またね~』みたいなノリで、鳴き声をあげるコスモス。さて、戻りますか。



「コスモス、そろそろ戻ろう。」


「ムリュムリュ!」



スライムに戻ったコスモスを、頭に乗せて、元来た道を戻る。時折出てくる魔物は、以前のように投げ飛ばして、排除する。



「もうそろそろ、森を抜けるぞ。」


「ムリュ。」



そして、森を抜けた俺達の前には、崩れたヒークの城壁と、火の手が上がり、煙がたちのぼる家々、さらに━━━


空に向けて放たれる魔法と、たくさんの矢。その先には、禍々しい力を発する巨大な竜がいた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ