第33話『ガーネア出発』と『三人目』
「準備出来た?」
「おう、バッチリだ。」
「こっちも準備出来たぞ。」
「それじゃ、出発しよう。」
準備を済ませた俺達は、ガーネアを出発した。目指す場所は、国境都市ヒークだ。
ここからなら、十日もあればたどり着く。まぁ、普通に行けばだけど、その間に何かがあれば、その分だけ到着が遅れるだろう。
「何事もなければいいんだけど。」
「本当にな。」
「まぁ、普通ならおきないだろ。」
普通じゃない気がするから、祈ってるんだけど。若干の不安を感じつつ、歩いて行く。
「長閑だな~。」
「だね~。」
「そうだな。」
空にはお日様が輝いて、雲が流れていく。そよぐ風が足元の草を揺らしている。そして、倒れている人………人?
「誰か倒れてる!?」
「ほんとだ!」
「なんでこんなところに?」
直ぐに倒れている人に近づく、白いローブを着てフードをかぶっているため、男か、女かは、分からない。
「おい! 大丈夫か?」
「しっかりして!」
「起きろ!」
「……ぅぅ……」
呼び掛けると反応があった。まだ生きてる証拠だ。
「何があった?」
「……た……」
「た?」
「……食べ物を……」
「「「…………。」」」
どうやら、お腹がすいているようだ。
その後、リラが簡単な食事を作り、それを差し出すと、ガツガツと食べだした。
「モグモグ、これは! モグモグ、とても、モグモグ、美味しいです。」
「たくさん食べてね。」
「モグモグ、はい! モグモグ。」
よく食べるな。次から次へと、口に料理をいれていく。食べる量も凄いが、食べるスピードも凄い。それにしても、誰なんだろう? 声の感じからして女性という事は分かるが
「ふぅー。ご馳走さまでした。危ないところを助けて頂き、ありがとうございます。見聞を広げるために故郷から出て、旅を始めたんですが、何故か黒服の人達に、追いかけられまして。逃げている間は、食事をする暇がなくて、ここで力つきました。」
成る程。苦労してるんだな。にしても、なんで追われてるんだ?
「あ、フードをかぶってたら失礼ですよね。」
そう言ってフードを取る。淡く光る白い髪に、空色の瞳をした美少女が現れた。いや、重要なのは、そこじゃない。彼女の耳の上には特徴的なモノがついている。それは、翼。小さな翼だ。
「“天人族”? なんで、こんなところに?」
「成る程。なんで追われたのかだいたい分かったな。」
「あぁ。」
「え!? そうなんですか?」
天人族。かなり希少な種族で、天空島というところに住んでいる。天人族は総じて美形であり、協力な癒しの力を持っている。そのため、天人族を手に入れようとする貴族や、王族は多い。多分、この娘は、そんな連中に連れ去られそうになったんだろう。
彼女にその事を説明すると、驚いて。
「ええー! そうだったんですか? 下にいる人達は、皆いい人だと思ってたんですけど。」
「悪い人もいるから注意してね。」
「分かりました! あ、私、フィリルと言います!」
「私はリラ。」
「俺はムト。」
「俺はグレイだ。」
「リラさん、ムトさん、グレイさんですね。覚えました! それで、皆さんはどういう集まりで?」
「〈自由の虹翼〉っていうクランだよ。」
「クラン………そうだ! 私もいれてください。これでも一応冒険者ですから。」
俺達がクランである事を説明すると、フィリルは、入りたいと言い出した。まぁ、天人族は癒しの力を持っているというから、回復役が入るという事。こちらとしては、ありがたいけど。
「いいの? そんな簡単に決めて。」
「皆さんいい人です! 皆さんといれば、守ってもらえますし、私は皆さんが怪我をしたら治します。ウィンウィンの関係ですよ!」
「どうするリラ? 俺はいいけど。」
「私もいいと思う。グレイは?」
「俺もいいと思うぞ。」
「やりましたー! ステータスお見せしますね。」
「それじゃ、俺達も。」
互いに、ステータスを見せ合う。
そして、これがフィリルのステータス。
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【名前】フィリル・ロア・リシュディア
【性別】女
【種族】天人族
【年齢】16
『攻撃力:D』
『防御力:C』
『知力:S』
『精神力:SS』
『俊敏性:C』
『器用:A』
≪スキル≫
【光魔法:Lv5】【聖魔法:Lv5】
【樹木魔法:Lv3】【天魔法:Lv5】
【鑑定:Lv4】【輝虹ノ守護者:Lv━】
【生命ノ空:Lv━】
≪称号≫
『聖神の寵愛』『癒神の寵愛』
『聖霊王の祝福』『天空の住人』
『虹星の癒姫』
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回復役としてはかなり優秀なほうだろう。光や聖等の回復魔法が使える魔法に、サポートに最適な樹木魔法。天魔法はなんだろう? 天人族の固有魔法か何かかな?
「皆さん凄いですね、特にムトさん。」
「ムトは別格だよね。」
「一人だけ違う次元にいるよな。」
「そ、そんなに?」
まだ、あまり実感がないんだよな。自分がめちゃくちゃ強いってこと、まぁ、これから知っていけばいいか。
こうして、新な仲間フィリルを加えた俺達は、再びヒークに向けて歩き出した。
新たに、フィリルが加わりましたね。




