第1話『終焉ノ地』と『旅立ち』
ここは『終焉ノ地』
ヴォルテにある大陸“イルノア”の北東の最果てに存在する地。かつて、とある獣が暴れた際に出来た爪痕、それが『終焉ノ地』
異常なほど厳しい環境と、神さえも食い殺すバケモノ達が巣くう場所。中央には黒く燃え盛る山が存在する。
山の周辺には、いくつものエリアが存在し、その場所特有の環境や、生き物が住んでいた。
例えば
『灼熱溶岩エリア』
大量のマグマと、赤く燃える岩石があり、常人ならば、数秒で焼け死ぬような気温になっている。巣くう生き物は、マグマの中を泳ぐ魚や、身体が燃えているトカゲ等である。
『超極寒エリア』
雪と氷に支配された世界、常に強烈な吹雪が吹き、気温は常に-100度以下になっている。巣くう生き物は、完全な耐寒耐性を持っているモノだけだ。
『超激酸エリア』
伝説の金属『神鉄鋼』をも溶かす超強力な酸で出来た湖があり、同じ酸の雨が降るエリアになっている。巣くう生き物は強力な毒や、酸を持っている。
『異常重力エリア』
周囲の重力を強くする鉱石。周囲の重力が加わる方向を変える鉱石。周囲の重力を無くす鉱石。さらに、ここに巣くう生き物は周囲や、自身に加わる重力を操作出来る。そのため、このエリアは、重力が異常になっている。
以上のようなエリアが多数存在し、人はおろか神さえここで生きるのは不可能とされている。
そして、ここは
『異常天候エリア』
異常な速度で天候が変わり、その天候もまさしく天災と呼べる代物だった。ここに巣くう生き物は、天候の変化に合わせて、身体の構造を変えるモノばかりだ。そしてここは、数ヶ月に一度、一週間だけ同じ天候が続く時がある。
そして、今はその時だった。今回は、大小様々な竜巻が、現れては消え、消えては現れていた。
そして、この地に存在するハズがないモノが一つ、否。一人いた。
魔物の皮で出来た、簡素な服を身に纏った、黒髪黒目の少年だ。
「まいったな。」
少年がポツリと言葉をこぼす。
「今年は“嵐龍ノ年”だったか、しかも“竜巻ノ季節”かよ。」
少年が普通の人が聞いても、理解出来ないであろう言葉を呟く、そんな少年に影がさす。
「ん?」
少年の目の前には、緑色の鱗をした、巨大な三つ首の蛇がいた。『大嵐多頭蛇』という名のバケモノが
「…………『大嵐多頭蛇』………。」
そんなバケモノを見た少年の目は、驚き。恐怖。焦燥。どれにも染まっていなかった。少年の瞳は
「……………美味いんだよな。」
笑みを浮かべた少年の目は、獲物を見る狩人の目だった。
『大嵐多頭蛇』は、自身を見る少年が、捕食者の瞳をしている事に気付き動揺する。今まで、捕食者だったのは自分だからだ。
「よっと!」
一瞬で間合いを詰めた少年は、真ん中の首を殴り付ける。━━━━━瞬間
━━━━真ん中の首が跡形もなく消し飛んだ。
さらに、拳を振るった衝撃波により、両側の首も千切れ飛ぶ。そして、『大嵐多頭蛇』の後方にあった、100以上の竜巻も吹き飛んだ。
「あ、やべ。綺麗に全身残すつもりだったのに…………力みすぎたか? まぁいいか。」
首の無くなった、蛇を持ち上げる少年。
「んじゃま。帰りますか。」
少年は何事も無かったように、歩き出した。
◇
「ふん♪ ふん♪ ふーん♪」
今日は、蛇肉のステーキだな。あっと、俺の名は『ムト・クレウェル』。何故だか自己紹介しなきゃいけない気がしたので、しておく。
この、過酷な環境に身をおく理由は、強くなるためだ。故郷の村から北東に向けて進んでいたら着いた。修行するにはいい場所だったので、ここに住む事にした。それにしても、もう10年もたつのか。
「そんな事を考えてるうちに着いたな。」
俺の家はこの過酷な場所で唯一、魔物が来ない場所だ、丁度良かったのでここに家を建てる事にしたのだ。まぁ、小さいが。
「ただいま~。」
まぁ、誰もいないんだけ………
「「「おかえり~。」」」
…………訂正。三人ほど遊びに来ていたようだ。
「三人で来たのか?」
「あぁ、暇だったからな。」
白銀の髪に、同色の瞳をした、身長2メートル程のイケメンが喋る。人間の姿をしているが、その正体は、竜と龍を統べる王『神竜王 アルフェルド』だ。
「二人に誘われたからな。」
灰色のターバンをし、口元も布で隠した。性別不明の、というか性別の無い人物が喋る。その正体は『神狼』のフェネだ。
「久しぶりに会いたくなったんだよ~。」
鮮やかな緑色の髪と、同色の瞳をした、7歳ぐらいの幼女(本当は1兆歳を超えているらしい。)が喋る。その正体は『樹木の精霊王 アイラ』だ。
「ん? その後ろのは『大嵐多頭蛇』か!」
「美味そうだ。」
「お肉の事はよく分かんない。」
「ステーキにするが、食べるか?」
一応聞いてみると、「頼むぞ!」「宜しくな。」「いらな~い。」と声がする。まぁ、予想通りだ。魔導コンロを強火に設定し、フライパンを置き、肉を焼く。
「ん~。美味そうだ。」
いい感じに焼けた肉を、机に並べる。やく二名は直ぐに食べ始め、もう一名は水を飲んでいる。俺も直ぐに食べ始めた。
◇
「そろそろ、旅立とうと思ってるんだ。」
「突然どうした?」
フェネが聞き返してくるので、答える。
「いや、もうここに来て10年になるし、大分強くなったからさ、そろそろ世界に出て、黒髪黒目が無能じゃないって証明しようと思って。」
「大分強く。って、お前というヤツは。」
「自分の強さについて、理解してないみたいだね。」
「そもそも、ここが結構過酷な場所。としか、認識してないみたいだしな。」
何だろう。俺が変なヤツみたいに思われてるきが。
「まぁ、たまにはここに来るよ。」
「まぁ、好きな時に呼ぶといい! 我は親友として、直ぐに馳せ参じよう!」
「私の事もいつ頼ってくれても構わない。」
「わたしも、お友達と一緒に助けるよー。」
「ありがとな。」
いい友達を持てて、幸せ者だな~。
「で、まずは何処に行くのだ?」
「故郷………ルベラ村に一度帰ろうとは、思ってる。その後は思いつきだな。」
「場所は分かるのか?」
「…………あ。」
そういや、村何処だ。
「ふふふ。ムトらしいね。はいコレ、地図。」
「おお! サンキュー、アイラ。」
これで、村に帰れるな。
この後直ぐに寝た。
◇
次の日の朝。旅立つための準備を済ませる。
「んじゃま。そろそろ、行くな。」
「あぁ、また会おう!」
「元気でな。」
「またね~。」
三人に別れを告げ、地図をたよりに、南西の方角に進む。さぁて、黒髪黒目の汚名返上と行きますか!
こうして、“無能少年”の…………いや、“無敵少年”の冒険が始まった。
エリアは他にも色々………今思いついているのは『夢幻砂漠エリア』『無限迷宮エリア』などです。