第15話『報告』と『フール村』
「〈悪魔の茶会〉? そいつらが、ムトを狙ってるのか?」
「はい。おそらく。」
「成る程な。よし、分かった。本部にも伝えてランク7以上の冒険者の何人かに、情報収集をしてもらおう。他の冒険者にも依頼なんかで、そいつらと関わったら、知らせるように言っとこう。」
「ありがとうございます。」
「お前らも気を付けろよ。」
「「はい。」」
ギルドマスターに報告を済ませた俺達は、一度宿に戻る事にした。
「さて、これからどうするか?」
「うーん? ここに居ても仕方ないし、そろそろ次の目的地に行く?」
「そうだな、どうせヤツらは俺を狙ってるみたいだし、移動しても問題ないしな。」
という事で、準備を整えた俺とリラは次の目的地、リヒル聖教国前にある、“始まりの町ガーネア”へ向けて、旅だった。
◇
俺達はガーネアに向かって伸びている、街道を歩いていた。
ガーネアが何故、“始まりの町”と呼ばれているかというと、冒険者ギルド本部があるからだ。冒険者の始まりの場所。すなわち“始まりの町”
冒険者ギルド本部があるので、冒険者の数も多い、冒険者の町とも呼ばれるな。近くに迷宮もあるしな。
「リラはガーネアに行った事あるのか?」
「一度だけね。でも、良いところだったよ。迷宮が三つもあって、修行にはちょうどよかったし。」
「へぇ~。」
修行か…………そういえば、俺の修行場所にも迷宮があったっけ、たしか『無限迷宮』だったかな? アルフェルドが言うには、入る度に中の構造が変わり、魔物の強さも変わるから、かなりヤバい場所だって言ってたな。結局行かなかったけど
「それにしても、長閑だね~。」
「だな。」
とても長閑だ。まぁ、こういう時に面倒事がやってくるんだが。
「………………」
「! ムト!」
「なんか、聞こえたな。」
街道の左側にある森の中から、声が聞こえてきた。
「………た………」
「ムト行こう!」
「おう!」
リラとともに、声がする方へ向かって行く。すると
「助けて!」
『ギィィィィィ!!!』
小さな女の子が、『森林大蜘蛛』に追われていた。
「ムト!」
「おう!」
リラが剣を抜いたのを確認し、一瞬で女の子の側へ移動し、抱え上げて『森林大蜘蛛』から距離をとる。
「いいぞ!」
「うん! “剣技”蒼月の飛刃!」
リラの“剣技”により、『森林大蜘蛛』が縦に両断された。
「もう、大丈夫。」
「だな。」
「あ、あの!」
「何かな?」
リラがしゃがんで、女の子の目線に合わせる。
「助けてくれて、ありがとう。」
「どういたしまして、お名前は? 私はリラって言うの。」
「俺は、ムトだ。」
「レイナって言うの!」
「そっか、それで、レイナちゃんはなんで森の中にいるの?」
「薬草をとりに来たの。」
「薬草?」
「うん。お母さんが病気なの。」
成る程。お母さんの病気を治すために、危険な森の中に来てたのか。
「でも、森の中は危ないから一人で来ちゃ駄目だよ。」
「はい。ごめんなさい。」
「よっし、ムト、この子を送って上げよう!」
「だな。」
リラの提案を受け、俺達はレイナが暮らしている村に寄る事にした。
◇
「ここだよ!」
「“フール村”って言うんだね。」
「うん!」
そのまま、レイナに案内されてレイナの家へ向かった。
村の中はとても静かで、ちらほら見かける村人達も、虚ろな目をして座りこんでいた。
「リラ、なんかおかしくないか?」
「うん。何かありそうだね、この村。」
「着いたよ、ここ!」
レイナに促されるまま、中に入る。そして、母親がいる部屋に移動すると、ベッドに座った虚ろな目をした女性がいた。何日もなにも食べてないのだろう、身体は痩せ細っていた。
「お母さん! 薬草取って来たよ、これでもう大丈夫だよ!」
「待った!」
「どうしたの? ムト。」
「ムトお兄ちゃん?」
嫌な予感がした、まるで誰かが、それではいけないと直接頭に語りかけるように。
「一度俺に任せてくれ。」
そう言って、一度外に出る。
「ムト、何するの?」
「友人を喚ぶんだ。」
「「え?」」
地面に、種を植えて
「【精霊王の呼子笛】」
「はーい! 呼んだかな?」
「ムト? その娘、誰?」
「あ、ムトくんの恋人さんだね。私はアイラって言うの、宜しく。」
「え、あ、宜しく。」
ナイス、アイラ! この後、アイラに事情を説明し、レイナの母親の元へ連れて行くと
「これは、酷いね。」
「マズイのか?」
「ううん。任せて。」
そう言うと、瓶を取りだし、中に入っていた液体をレイナの母親に飲ませた。
「これで、大丈夫だよ。後は安静にするのと、他の人に任せよう。」
「他の人って?」
「私じゃ、【聖魔法】は使えないからね。」
「あぁ、アイツをよぶのか。」
「そう言う事。」
アイラの言った事が分かったので、腰に着けた袋から、青色の笛を取りだす。
さぁて、アイツを呼びますか。
さて? 誰を呼ぶんでしょう?