第12話『想い』と『告白』
ビターチョコか、ブラックコーヒーと、一緒に読む事をオススメします。
(そこまでじゃなかったら、すみません。)
「お久しぶりです、リリア王女様。」
「久しぶり! リラ。」
青い髪に、空色の瞳をした王女様がいだ。というか、王女様と知り合いなのか、リラ。そういえば、“英雄”って呼ばれてるんだっけ。そりゃ、王族とも知り合いになるよな。
「で、そっちは?」
「リラと同郷のムト・クレウェルです。」
「ムト? 貴方がリラの言ってた?」
うん? リラが何を言っていたんだ?
「り、リリア王女様、それは秘密だって、言いましたよね!」
珍しくリラが焦ってるな。どうしたんだろう?
「リラ。こんな弱そうな男より、私の兄様の方が、何千倍も男前じゃない! この前の話考え直してくれるよね?」
「いいえ、お断りします。」
『弱そう』って、本人がいるのにそういう事言うか? リラも少し怒っている。
「リリア王女様、私達はこれで失礼します。行こうムト。」
「あ、あぁ。」
「リラ! まだ、話は終わってないでしょ!」
出口の前に立ちはだかる王女様。さて、どうするか。
「やぁ、リラ久しぶりだね。」
「カイン兄様!」
「…………カイン第一王子様、お久しぶりです。」
おおう、王女様と同じ髪と瞳をした、第一王子様まで出てきたよ。
「リラ、この前の返事を聞かせてくれないかい? 僕の婚約者になる、とね。」
リラの顎に手を添え、顔を覗きこむ第一王子。止めに入りたいが、下手に王族を敵にまわすのもな~。キスとかしようとしたら、ぶっ飛ばそう。
「お断りします。」
「何?」
「そうそう、リラは俺と結婚するからな。」
「何ッ!?」
なんか、増えたな。燃えるような赤い髪と、瞳をしたイケメンが現れた。いや、後ろにもいるな、緑色の髪と瞳をしたイケメンと、茶色の髪と瞳をしたイケメンが
「ジェイル、リラと結婚するのは、この僕リジルだよ。」
「リラは………俺と…………結婚する。」
「ジェイルも、リジルも、ジークも何を言ってるんだい? リラは僕と結婚して、妃になるのさ!」
出てきた三人は、公爵家の長男らしい。リラ、モテてるな。さて、どうするか? リラもぷるぷる震えて怒ってるみたいだし、イケメン達は自分が結婚するんだ! って譲らないし、リラの意見尊重しろよ。
「あーもう! 私はムトと結婚するの! だから、あなた達とは結婚しないし、したくない! 分かった!?」
怒りが爆発したのか、敬語をやめ堂々と言い放つ、リラ。そうそう、リラは俺と結婚…………
「「え?」」
思わず声に出てしまった。そして、隣からも同じく驚いた声が聞こえてきた。隣を向くと、同じく此方を見たリラと目が合い、リラは“ボンッ!”と、効果音がつきそうな程赤面する。たぶん、俺の顔も赤い。
「え、えっとね、ムト。今のは、なんていうか、その………」
恥ずかしくて、上手く話せないようだ。
「え~と、リラ。今のは、俺が好きとかそういうやつ?」
「! そ、そう、そうなの! って、あ、いや、違うというか、違わないというか。あ、あの……」
「いや~。え? ま、マジで。って、あのな、その………」
言うんだ、俺!
「「恋人からでお願いします! え?」」
同時に同じ事を言う、俺達。だが、これは“いい”ということだ。
「あ~その、よろしくな。」
「う、うん。よろしく。」
めでたく恋人同士になった俺とリラ。全てがまるくおさま………
「「「「「認めるか!」」」」」
………るわけ、なかった。
◇
はて? 何が悪いのだろうか?
「何か、駄目ですか?」
リラが首を傾げて、言う。だよな、何がいけないのだろう?
「「「「リラは俺(僕)のモノだ!」」」」
「いや、俺の恋人ですが?」
「こ、恋人。」
頬を抑えて、クネクネするリラ。うん、可愛い。
「け、決闘だ! 勝った者がリラを手にする。これで、いいだろう。」
何言ってんだ? こいつ。
「リラは物じゃない。そんな事も分からないのか?」
「なっ!? 貴様不敬だぞ!」
「不敬で結構! (リラ、此処から抜け出すいい手はないか?)」
「(あるよ、【転移】)」
魔法が発動し、俺とリラの身体が白い光に包まれる。そして、気付くと宿の俺の部屋にいた。
「凄いな。」
「便利でしょ、一度行った事のある場所に、一瞬で移動出来るんだよ。距離によって消費魔力が変わるから、遠すぎると駄目だけど。」
「へぇ~。」
俺が感心していると、リラがモジモジしながら。
「ね、ねぇ、ムト。恋人同士になったから、して欲しい事あるんだけど………」
「な、なんだ?」
「えっとね、ちゅーして欲しいな。」
上目遣いでお願いしてくるリラさん。だから、それは反則だって。
「お、おう。」
「ん………」
目を瞑ったリラの頬に手を添えて、俺は唇を重ね合わせた。
くそっ! ムトがリア充に………う、羨ましくなんかないぞっ!(血涙)