第10話『リラのステータス』と『クラン』
あの後、冒険者ギルドに行き、魔物の軍団について報告した。あ、俺がやった事は誤魔化した。面倒事が嫌だと言ったら、皆なから『じゃあ誤魔化そう!』と、言われた。
結果、身長三メートルの大男が、口から火を吹きながら、魔物を蹂躙した事になった。それでいいのか? 冒険者ギルド。
この話をした後、バルド達は連れて行かれた。なんか『またそんな分かりやすい嘘をついて、今度は拷問でもしますか。』と、ギルド職員が言っていたが……………冗談だよな?
「ねぇ、ムトはどこに泊まってるの?」
「ん? “夢咲”っていう宿だけど。」
「え!? 私もそこなの、奇遇だね!」
今日一番の笑顔ですね。リラさん。
「さぁ、行こ!」
「だな。」
リラと一緒に宿に向かう。宿に向かう間、リラと今まで何をしていたか話した。修行先で知り合った人達の話をしている最中、たまにリラが、「その人とは、友達ってだけだよね?」とか、「何もないよね?」とか、聞いてきたが何だろう? そういえば、聞いてきたのは、女性の知り合いの時だけだったな。
「ムト、お昼ご飯どうする?」
「ん? そうだな~」
たしか、宿に食事処があったよな、そこにするかな?
「ねぇ、私が作ろうか?」
「リラが?」
「うん。お母さんにちゃんと習ったし、どうかな?」
リラの手料理…………これは、食べるしかない。
「じゃあ、お願いしようかな。」
「まかせて! 腕によりをかけて作るから!」
どんな料理を作ってくれるんだろ? 少し、ドキドキ、ワクワクしながら、宿に戻った。
宿に着き、食事処の席の一つで待つことしばし、リラが厨房から出てきた。
「はい! どうぞ、召し上がれ!」
「おぉ、美味そうだな。」
出てきたのは、野菜たっぷりのスープ。厚切りのステーキ。エビ入りのトマトスパゲッティの三品だ。とても食欲をそそる香りがする。
「じゃあ、いただきます!」
まずは、スープだ。スプーンで、中の野菜と一緒に掬って、口に運ぶ。美味い。中の野菜はとても柔らかく、直ぐにとけてしまった。だが、ほんのりと、野菜本来の味がし、スープの味付けもそれを殺さず、むしろ引き立てている。
「美味い! 次はステーキだ。」
ナイフで一口サイズに切り、口に運ぶ。口の中で噛むと、ジュワッと、肉汁が溢れ出す。塩コショウだけの味付けだが、それが、とてもいい。とても美味い。
「くぅ~。次だ、次。」
次はスパゲッティを食べる。此方も美味い。トマトの甘味と酸味がちょうどよく、麺に絡んで美味いのなんの。エビも味がしっかりしていて、トマトとよく合う。
「あぁ~。美味かった。」
気がつくと、食べ終わっていた。こんな美味い料理は初めてだ。できれば、毎日食べたい。
「リラありがとう。凄い美味かったよ。」
「ほ、本当? 良かった。(やった! 胃袋は掴めた! ありがとう、お母さん! ありがとう、ムトのお母さん!)」
リラが後半何か言っていたようだが、小声だったので、よく聞き取れなかった。
「あ、そうだ! ムト。」
「どうした? リラ。」
「ムトのステータス見せて。私のも見せるから。」
「あー、うん。分かった。」
あのステータスを見せるのか。まぁ、リラなら大丈夫だろ。
その後、俺の部屋に行き。まずは、俺のステータスを見せた。
「ほら、俺のステータス。」
「どれど…………れ?」
俺のステータスを見たリラが、固まる。
「な、何コレ?」
「いや、俺も最初はびっくりした。」
「ま、まぁいっか、じゃあ次、私のね。ムトの後だから、凄くないと思うけど。」
そう言って、リラが見せてくれたのが、コレだ。
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【名前】リラ・シンフィア
【性別】女
【種族】人族
【年齢】17
『攻撃力:A』
『防御力:B』
『知力:B』
『精神力:A』
『俊敏性:S』
『器用:B』
≪スキル≫
【剣術:Lv5】【体術:Lv4】
【気配察知:Lv4】【魔力感知:Lv4】
【思考加速:Lv3】【並列思考:Lv3】
【風魔法:Lv5】【氷魔法:Lv4】
【雷魔法:Lv4】【光魔法:Lv3】
【空間魔法:Lv2】【白銀之陽剣:Lv━】
【黄金之月盾:Lv━】
≪称号≫
『運命神の寵愛』『創造神の祝福』
『精霊王・光 の加護』『英雄』
『銀炎の剣姫』『???』
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いやいや、これは凄いと思うぞ。うん。普通に凄い。だけど、
「称号の『???』って、なんだ?」
「さぁ? 初めて“ステータス鑑定”した時からずっとコレだから。ムトもスキルの【???(封印中)】って?」
「さぁ? そのうち凄いスキルになるんじゃないか?」
「これ以上強くなってどうするの…………」
「だよな…………」
とりあえず、その日はそれぞれの部屋で寝た。
◇
「ムト! 朝だよ!」
「リラ………どうやって入った?」
朝起きると、何故かリラが部屋の中にいた。
「まぁ、いいでしょ。それより、冒険者ギルド行くよ!」
「まぁ、いいけど。依頼受けるのか?」
「それもあるけど、一番は“クラン登録”!」
「クラン登録?」
「そう! あ、勝手に決めちゃって、良かったかな?」
「あ~。まぁ、いいよ。」
「そっか! じゃ行こ。」
「おう。」
笑顔のリラと一緒に冒険者ギルドに入り、受付に行く。
「あら? リラさん依頼ですか?」
「いえ、クラン登録をお願いします。」
「はい。クラン登録ですね……………え? クラン登録?……………クラン登録!?」
『ザワザワ』『ザワザワ』『ザワザワ』
何故か、凄く驚く受付嬢さん。なんでだ? 後、周りがうるさい。リラはため息ついてるし。
「嘘だろっ!?」
「あの“孤高の英雄姫”が!?」
「どこのクランが誘っても、悩みもせず断ったのに!?」
「まさかあの黒髪と、か?」
「おいおい無能と組むわ………ッ!?」
周囲に殺気をはなち、剣の柄に手をかけるリラ。
「リラ落ち着け。」
「でも!」
「気にしてないから。」
「むぅ…………分かった。」
殺気を抑え、剣の柄から手を離すリラ。これで、一安心だ。
気を取り直したリラが、再び受付嬢さんに言う。
「クラン登録お願いします。」
「は、はい。では、此方の資料にクラン名と、クランメンバー全員の名前を書いてください。」
「えーと、クラン名は〈自由の虹翼〉っと。はい、ムト名前書いて。」
「おう。」
クラン名最初から考えてたのか? と、思いつつ、自分の名前を書く。
「はい。では、申請してきますね。」
「お願いします。じゃあムト、受ける依頼選ぼっか。」
「そうだな。」
「これは、これは。こんな所で出会うとは、奇遇だね、リラ!」
なんか、キラキラした男が話しかけてきて、リラが一瞬嫌そうな顔をした後、澄ました顔になる。なんなんだ? こいつ。内心、面倒事に巻き込まれたな、と思いつつ、さっさと解決させる事にした。
これが私の全力(料理描写)だ!
最後変なヤツが出てきましたね、どうなるかは次回