第9話『無双』と『再会』
本日、2話目です。ムトが無双しますよ。
「【英雄の投げ槍】」
魔物の軍団の最前列の横についたので、封印した技を使い吹き飛ばす。いやだって、魔物しかいないし、思ったより数が多かったんだ。
技をくらった魔物は俺に近い程、悲惨な最後をとげている。粉々になるってなんだよ、粉々になるって。
そして、俺に気付いた魔物の軍団の一部が止まる。まぁ、容赦はしない。
「【断頭飛脚斬】」
脚を水平におもいっきり振る。すると、その際発生した衝撃波が魔物達を横に両断する。
お、血走った目をしていた魔物達の一部が、恐怖してるな、そんなに怖いかな? 俺。
「よっ! と。」
おもいっきり飛び上がり、魔物の軍団を上から見下ろす。
なかなか数が多い。大技いくか? いや、地形変わったらヤだな。とりあえず。真下のヤツらを片付けよう。
腰に着けた袋━━━異空間搭載袋。と言うらしい。フェネに貰った━━━から拳大の石を取り出し。
「そらっ!」
下に投げた。
『ドガァァァァァァァァァァァァン!!!』
「うそん。」
下には、小規模なクレーターが出来ており、真下にいた魔物のほとんどが消し飛んだ。
そのまま着地し、周囲の魔物を睨み付ける。
後退する魔物達。うん。これ簡単に勝てそうだな。
「さっさと逃げろ、今なら見逃してやる。」
言葉が通じるかどうか分からないが、魔物達に一声かける。すると、言葉が通じたのか、踵を返して森の方に逃げて行った。周囲に魔物がいない事をしっかり確認し……………どうやらいないようなので、王都に戻る事にしよう。
「王都はあっちだな。」
とりあえず、お腹がすいたので、速く帰る事にする。そのために駆け足!
◇
「ん? あれは…………」
王都の手前あたりに、冒険者らしき人影がちらほら見える。魔物の軍団に備えているのかな? その中には、バルド達もい…………あれ?
「もしかして………」
バルド達と一緒にいる少女に目を凝らす。銀色の髪をポニーテールにした、金色の瞳をした少女だ。間違いない、リラだ。
「おーい! リラ~。」
手を振りつつ呼びかけると、驚いた顔をして此方に走ってくる。これは………………殴られるパターンだな。10年もたつしな、かなり怒ってるだろうし、ここは甘んじて受けよう。
心の中で覚悟を決めた瞬間、ナニかが胸に飛び込んで来た。予想して無かったので、そのまま地面に倒れてしまう。とりあえず身体を起こすと、胸に飛び込んで来たのはリラだった。
「え、え~と?」
殴られると思っていたのに、胸に飛び込まれ軽く混乱していると。
「ムト? ムト、本物だよね?」
「あ、うん。」
胸に顔を埋めたまま、リラに問われたので答える。顔を上げたリラは目にいっぱい涙を溜めていた。
「よかった、無事で………ずっと心配だった。もしかしたら、死んじゃったんじゃないかって。」
「その………ごめん。」
「ううん。戻って来てくれたからいい。でも………」
「でも?」
「もう何処にも行かないで、お願い。」
声を震わせ、涙を溜めた目で上目遣いをして、そう言うリラに、ドキッとする。美少女がその顔で、そんなふうにお願いするって、反則じゃね。
「あ、うん。分かった約束する。」
「絶対?」
「絶対。」
「約束破ったら、なんでも一つ、言うこと聞いてね。」
「わ、分かった。」
なんか、リラの笑顔が少し怖い、いったいどんな事をさせる気だろう? まぁ、約束を守ればいいんだ。守れば。
◇
「え~と。リラさん?」
「何? ムト。」
「そろそろ離れてくれない?」
「い・や・だ!」
「えぇ~。そんな力強く言わなくても………」
立ち上がったら、腕を組んできたリラさんです。しかも、なんか腕にスリスリされてます。というか、そろそろ離れて欲しい、バルド達がニヤニヤこっちを見てるんだが。
「いや~。また会ったと思ったら、お熱いね~ムト。」
「まさか、リラちゃんとはね~。」
「ムトくん。やるね~。」
誤解だ! リラのことは好きだが、付き合ってるわけじゃない。いつかそうなりたいとは、思ってるが
「で、何処で会ったんだ?」
「いや、何処って、リラとは幼馴染ですけど。」
「へ~。いつから、付き合ってるの?」
「いや、そもそも付き合ってないんですが。」
あれ? リラさん。なんで本当の事言ったのに、腕をつねるんですか?
「え~。本当?」
本当です。でも、また腕をつねられそうなので黙秘します。
「まぁ、そんな事より。ムトくん。」
「なんですか? レードさん。」
「魔物の軍団を退けた人物見てないかい?」
なんだ、そんな事か。
「俺です。」
「…………悪い。よく聞こえなかったんだが。」
「俺です。」
「…………可笑しいな、ムトくんが、あの魔物の軍団を蹂躙したように聞こえるんだが。」
「いや、だからそうなんですよ。」
「「「「………………。」」」」
押し黙る。リラ含む一同。
「「「「………はぁ!?」」」」
あ、再起動した。
「いやいやいや、あれをお前がやったのか!?」
「はい。自分でも驚く程強くなりましたよ。ハハハハ。」
「目が笑ってないよ!?」
「しっかりするんだ! ムトくん!」
「カッコいい。」
「「「「え?」」」」
うん? 俺の直ぐ隣から称賛の声が上がった気がするんだが。
隣を見ると、リラが頬をほんのり赤く染めていた。リラさん、可愛い。
「えっと、ありがと。」
「うん。」
なんだかいいな、こういうの。
「アイツら、ホントに付き合ってねぇのか?」
「ムトくんは、そう言ってるけど。」
「他人から見たら、完全にラブラブカップルだよな。」
バルド達が何か言ってるが、よく聞こえない。というかリラ、旅についてきそうだな。まぁ、いいか。
こうして、王都に迫っていた危機は、一人の規格外によって、防がれた。
主人公とヒロイン10年ぶりの再会。