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アイーダの店でえらい扱いを受けました。

始まりの町ーアリスの家


 昨日の夜の出来事でやる気を取り戻した俺は冒険を続けるべくアリス家の人々と別れの挨拶をしていた。


 「ほらアリス、ルーさんにキチンとお別れしなさい」


 アリスは昨日の夜以来俺に喋りかける事はなかった。どうもアリスに嫌われてしまった見たいで母親の後ろに隠れ俺の前に姿を現さない。


 「はははは、どうも嫌われたみたいで・・・」


 苦笑いをする俺


 「あ、そうそう、お礼と言っては何ですが・・・」


 俺は昨日の夜アリスに渡し損なった腕輪をアリスの父親に渡す。


 「はぁ〜これは一体?」

 「俺の村の伝統ある御守りの腕輪ですよ」

 「そうでしたか、しかしこの様な高価そうな物を頂く訳には・・・」

 「俺はアリスに会わなければ、今もきっと生きている意味を見出せずにいたと思います。そんなアリスに本当に感謝しているんです。」


 俺の気が晴れた顔を見てアリスの父親は何も言わず少し微笑んだ。


 「では俺はもう行きます。お世話になりました」


 軽く頭を下げて俺は町の中心部に向かって足を進める・・・100m程進んだ時である。


 「ルーーーー!!!」


 その声は町全体に響き渡る大きさの声であった。

 声の方へ振り向く俺

 父親の手から腕輪を奪い取りアリスが俺に駆け寄ってきた。


 「ルーはアリスのペットなんだからね、死んだらダメなんだからね、神様になったら戻って来ないとダメなんだからね」


 アリスの顔は涙でメチャクチャになっていた。


 「おう、任せとけ」


 俺はニコリ笑いアリスに右手の小指を差し出した。


 「ほんとなんだからね」


 そう言ってアリスは自分の小指と俺の小指を重ね指きりの約束をした。何やら小指と小指の間が発光した様に見えたが気のせいであろう。

 俺はアリスの頭を軽く撫でると、アリスの後をゆっくり歩いて追いかけてきた母親にアリスを預ける。


 改めて軽く頭を下げてその場を立ち去った・・・




ーーーーー



 【アイーダの酒場】


 ここはこの世界に唯一存在する見習い冒険者と見習い冒険者を繋ぐ酒場である。

 ある程度名が広まるとパーティを組むのに苦労をする必要が無くなるが、まだ何の実績も無い見習い冒険者とってパーティを組むという行為は非常難しくその行為の補助的な役割を担うのがこのアイーダの酒場である。


 確かに俺の実力はこの世界にいる冒険者のトップに君臨している。だが知名度となると見習い冒険者と変わらない、そう約700年間ソロで魔界の最深部に籠っていたからである。


 遊び人のスキル【一人ボケ】によってソロで冒険出来ない俺はどうしても、このアイーダの酒場でパーティメンバーを見つける必要がある。


 そして俺は今冒険者登録の手続きをする為にアイーダの酒場のカウンターにいるのである。


 こんな感じだったっけ?とアイーダ店内を見渡す・・・

 店の中はカウンター席とテーブル席に分かれており、カウンターで20人位、テーブルは6人掛けが10は有った。普通の民家とは違い木が基本のクラシック造りになっている。今で1/4は席が埋まっている。


 そうこうするうちに受付担当と思われる女性がやってきた。


 「本日はどの様なご用件でしょうか?」


 と優しく俺に微笑みかける。


 「あ、はい冒険者登録をお願いしたいのですが・・・」


 俺が受け付け担当と思われる女性に要件を伝えると、女性は体を横に傾け、俺の背後に視線を移す。


 「2人様でしょうか?」


 俺は背後を振り向くと、そこには今正に職業に就いたのであろう青年が立っていた。


 「あ、はい俺も何ですが・・・」


 頭を描きながら青年は俺と受付嬢の顔を交互に見渡した。


 「一緒にどうです?」


 俺が手で招き入れる仕草をすると


 「いいんですか、ありがとうございます。」


 青年は深く頭を下げた。



 こうして俺は見知らぬ青年と冒険者登録をする事になった。


 「では初めてまして、私が今回2人様の冒険者登録のお手伝いをさせて頂きます。【サティ】です。」


 サティと名乗る女性は気立てがよく明るい女性な印象を受けた。服は兼任してあるアイーダの酒場の制服、黒いメイド服の様なコスチュームであった。髪はブロンドで肩まであった。目は大きく鼻は小さい口はどちらかと言うと大きい。


 「では2人様のお名前をお伺いさせて頂きます。では、こちらの方からお願いします。」


 サティはそう言うと俺の方に手の平を差し出した。

 ちょっと戸惑いはあったもののアリスが折角付けてくれた名前だそのまま使わせて貰おう。


 「【ルー】です。」


 「えっーと、ルーさんですね」


 サティは冒険者登録用紙らしき物を取り出すと、名前と書かれた欄に【お○しば】と記入した。


 それを見た俺は・・・


 「いえ、いえ、ルーです」


 と言うとサティは


 「あ、はいルーさんですよね」


 と書かれた用紙を訂正せずにニコニコと俺に微笑みかけている。


 「・・・・」


 「いや、だからルーですよ」


 俺は少し怒り口調でそう言うと


 「はい、だからルーですよね?」


 とサティはニコニコ笑顔で返す。


 確かに間違ってはいない・・・だが違う。


 「なるほど・・・分かりました・・・トゥギャザーと騒がしい芸人のルーでは無く・・・普通のルーです」


 俺の声がアイーダの酒場に響き渡る・・・


 サティはクスっと笑うと【お○しば】の文字を雑に二本線で訂正し【ルー】と書き直した。


 俺は人を見る目が無い事を痛感した。


 「ではこちらの方名前をお願いします」


 とサティは青年に手の平を差し出した。


 「あ、はい、【ダン】と言います」


 こいつは何て書くんだと、カウンターから少し身を乗り出しサティが書く用紙をみていると普通に【ダン】と記入をしていた。


 俺はそれを「へー」と遠い目をしてただ黙って見ていた・・・

 

 「では残りの項目をそれぞれご記入下さい」


 と冒険者登録用紙を俺とダンと名乗った青年の前に置く。


 何故名前だけお前が書くんだと怒りを覚えたが、もう1000歳ぐらいにもなる俺が大人気ないと冷静さを取り戻し、サティの言われるがまま冒険者登録用紙に目を向ける。


【冒険者登録用紙】

【名前】はサティが既に書いた。

【職業】

【生年月日】

【性別】

【年齢】

【出身地】

【意気込み】


 「記入な任意になりますので」


 とサティが後から付け足す。


 うーん正直全く書ける項目がない。年齢1000歳など書ける筈も無く「嘘でも埋めるか」そう思いながら用紙に目をやっていると横目にダンの姿が目に入った・・・

 ダンは用紙に一生懸命項目を埋めている。それを見た俺はダンと言う青年に好感を抱き口元が少し緩み、嘘はいけないなと俺は思い職業・性別・意気込みだけを記入して俺はペンを置いた。


 しばらくしてダンの記入が終わる。


 「ふぅ〜」


 と力んだ体から力を抜く様に息を吐くダン。初々しいダンの姿にまた俺の口元が緩む。


 「記入は済みましたでしょうか?」


 サティが俺とダンに確認する。


 「はい」


 俺とダンは口を揃えてサティの問いに爽やかに答えると、俺とダンはお互いの顔を確認し軽い笑いを交わせる。


 「失礼します」


 そう言うとサティはダンのが記入した用紙を先に回収しダンの記入した用紙を簡単に確認する。


 「ではこちらで冒険者リストを作成します。空いている席にお掛けになってお待ちください。」


 ダンはカウンターを離れカウンターに一番近い席に座る。



 そして俺の番・・・


 「失礼します」


 サティはそう言うと真っ白な手袋を付けて俺が記入した用紙の端の角を持ち用紙を持ち上げる。


 「ではこちらに書かれている内容が、殺人罪・予備罪・自殺関与同意殺人罪・未遂罪・遺棄罪・過失致死罪・傷害罪・暴行罪・凶器準備集合罪・過失傷害罪・脅迫罪・強要罪・監禁罪・略奪誘拐罪・強姦罪・強制わいせつ罪・信書開封罪・秘密漏示罪・名誉毀損罪・侮辱罪・住居侵入罪・不退去罪・窃盗罪・不動産略奪罪・知的財産権侵害罪・窃盗罪・詐欺罪・恐喝罪に該当しないか鑑識に回しますので未該当確認後冒険者リストを作成します。それと私に謝って下さい!」


 「えっ?・・・・」


 もはやこの娘っ子サティが何を言っているのか?俺には理解出来なかった。


 「サティさん?何をおっしゃっているのでしょうか?」


 サティは俺の問いを無視して俺の書いた用紙をチャックの付いた透明な袋の中に入れると、その透明な袋に薬品を垂らし薬物検査さしきものを俺の目の前で始める。

 そして色に変化が無い事を確かめると後ろを振り向き劇薬と書かれた瓶の液体を透明な袋にコッソリ入れようとしていた、俺がそれを目撃しサティに声をかけると・・・


 「チィッ」


 と舌打ちして・・・


 「ええですから【お〇しば】様の私を見る目は既に未遂罪・傷害罪・暴行罪・脅迫罪・強要罪・強姦罪・強制わいせつ罪・名誉毀損罪・侮辱罪・恐喝罪に該当するので誤って下さい。」


 「・・・すみませんでした。」


 俺は屈した・・・・


 「では確認後、こちらで冒険者リストを作成します。空いている席にお掛けになってお待ちください」

 「あ、はい、どうぞよろしくお願いします。」


 不思議と涙は出なかった・・・・

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

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