失恋したらえらい事になりました。
俺はどちらかと言うと当たって砕けろタイプである。
そんな俺がもう会えなくなってから気が付いた気持ち、そう恋心をどう消化していいのか分からない。
魔神ペスタークへのこの想い・・・
まだ・・・まだ・・・明らかな片思いなら救われる。しかし手と手が触れ合った瞬間のあの感触。
「脈アリじゃねぇかぁ〜コンチキショー」
広大な平原の奥微かに見える山頂から俺の心の叫びが木霊する。
立ち直れなかった・・・
そう俺はどちらかと言うと引きずるタイプである。
心が折れてから、始まりの町から数10kmは離れていた俺は何処をどーやって歩いて来たのかは分からなかったが、気がつくと明後日の方向に向いていた顔が正常な位置に戻り、俺が足を止めた所・・・そこは始まりの町であった。
そして俺は失恋のショックで気を失ったのである・・・
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始まりの村とある民家
基本この世界は平屋が主流であった。2階建3階建の家を持つ者は大金持ちに分類されていた。
この民家も平屋で部屋数は3つトイレ・風呂は外に設置されている一般的な作りをしていた。 外壁はブ ロックをセメントで固めてあり、窓はガラスではめ込み式ごくごく普通の作り。
けども奥様は魔女だったのです・・・・
などのオチも無く。 ごく一般家庭であった。
そんなごく一般的な民家のドアが力無く開く。
「行ってきますお母さん。」
元気無くドアを開けたのは少女であった。
髪は茶色で後ろで束ねてある。 服は藍色のワンピースで靴もお揃いである。 目は大きく鼻は少し潰れた感じ口も大きく、イメージとしてはヤンチャ娘って感じである。 可愛いと言うより可愛らしいである。
「あっ待ってアリス」
そういうと母親らしき人物が水筒を持って駆け出してきた。
「はい、忘れ物」
「ありがとう」
アリスの母親はアリスと言う少女に水筒を渡すと、ニッコリ笑ってアリスの頭を撫でる。
「ぴーちゃんきっと天国で幸せに暮らしてるわよ」
「・・・・」
アリスは母親の言葉に何の反応も示さず母親を背に歩き出す。アリスの母親は元気の無い娘の後ろ姿を見て悲しい顔をしている。
「どうしたんだ?」
同じ民家からアリスの父親らしき人が出てくる。
「あの子まだインコのぴーちゃんの事を引きずっているみたいで・・・」
心配そうに娘の心配をする母親
「なぁに心配ないさ、だってあれはお前の娘だぞ」
「そうよね、アリスは私の子だものその内ケロって・・・」
顔を真っ赤にして手を交互に男の胸を軽く数回叩く。
「もうバカにして」
男は嬉しそうに頭を描き。
「スマンスマン・・・時間が解決してくれるさ」
と軽く謝り家へ戻って行った。
少し不安そうな顔をしていた母親だったが少し微笑み。
「よーし今日はあの子の大好きなカレーにしよっと」
今日の晩御飯宣言をして家へ戻って行った。
トボトボと力無く地面を見ながら歩くアリスいつもなら元気よく走っている道のりだが、今日はそんな気は起きない。
元気の無い理由・・・それは可愛がっていたインコのピーちゃんが昨日夜中に亡くなった事によるものである。ピーちゃんが亡くなった理由は寿命であったが、10歳に満たないアリスが死を簡単に受け入れられる訳も無く、今こうして落ち込んでいるのである。
しばらくして元気無く下を向いて歩いているアリスを呼び止める声がする。
「おーいアリスこっちに来いよ」
そうアリスに声をかけたのはアリスと同年代の少年・少女達であった。
アリスはあまりノリ気はしなかったが少年・少女の元へ駆け寄るとそこに奇怪な姿をする生き物がうつ伏せに横たわっている事に気がついた。
「見てろよ、こいつ面白いんだぜ!」
少年の一人がそう言うとその奇怪な生き物のお尻と思われる部分に思いっきり木の枝を突き刺す。
するとそ奇怪な生き物は・・・
「はうー」
と変な声を出し魚の様に跳ね上がった。
「あははははは」
少年達は腹を抱えて笑っている。
「なぁ〜面白いだろ?」
少年達はアリスの顔を覗き込みそう言うと、アリスもやれよとばかりに木の枝をアリスに差し出す。
「ちょっと男子、やめなよー」
少女達は少年達のその遊びに腹を立てて詰め寄り睨みつける。
「な、何だよー」
少女達はしばらく少年達を睨みつけると、アリスを手を取りニッコリ笑ってこっちこっちとアリスの手を引き奇怪な生き物に近づく。
「これ綺麗でしょ?」
少女達はそう言うと奇怪な生き物の頭らしき部分に固着してある緑色のチリチリした物をヒキ抜く。その緑色のチリチリした物は少女達の手によって大分引き抜かれており、まばらにその奇怪な生き物に固着していた。
アリスは奇怪な生き物の近くに座り込むと地面の土が湿っている事に気が付いた。アリスはその湿った土を目で追うと、その湿った土がその奇怪な生き物の目らしき部分から流れ出る水によるものだという事が分かった。
アリスは勢いよく立ち上がると
「ダメーーーー!!!!」
と天に向かって力一杯叫んだ。
少年・少女の手が止まりキョトンと皆がアリスを見ている。
アリスはうつむいたまま力強く拳を握り締めて、握った拳は小刻みにプルプルしていた。
しばらくしてから一人の少年が・・・
「あ〜あ、しらけちまったぜ」
と頭の後ろで手を組み言葉を発すると・・・
「行こうぜ、みんな」
と少年達は町の中心部に向かって歩き出す。
アリスはまだうつむき拳をプルプルさせている。そんなアリスを申し訳なさそうに見ている少女達。
しびれを切らした一人の少女がモジモジしながらアリスの近くに近寄る。
「行こう、アリスちゃん・・・」
アリスは声を出さずに首を横に大きく振る。
少女達はお互いの顔を見渡すと・・・
「私たちも、行くね・・・」
少女達はそう言うとアリスの様子を伺いながら町の中心部に向かってゆっくり足を進めた。
少年・少女達がその場を去ってしばらくすると、アリスはキリっと引き締まった顔になり。
「よしっ」
と一言気合いを入れる様に呟くと。奇怪な生き物の足と思われる部分を抱え込む様に持ち力一杯の引っ張った。
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アリスが家を出てもう4時間ぐらい経過したであろうと思われる。
「そろそろ、帰ってくるかしら?」
アリスの母親は今日の晩御飯であるカレーの味見をしながら呟いた。
するとバンっと勢いよく入り口のドアが開いた。
「ただいまーーーー」
アリスは元気よく家に帰ってきた。そんなアリスを見てアリスの母親は少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑みながら
「お帰りアリス」
と優しく出迎え、アリスを抱きしめた。
「あら、汗だくじゃない?」
母親はそう言うとアリスの服を脱がそうと服に手を掛けると・・・
「待って、待って、お母さん!!見て欲しいものがあるの!!」
アリスは目を輝かせて、右手で母親のエプロンを掴み、左手で外を指差し、早く早くと言わんばかりに大きく足踏みをしている。
「はい、はい」
とアリスの母親はアリスに連れられるまま外に向かって足を進めた。
「お母さん、これこれ」
アリスは掴んでいた母のエプロンから手を離すと、家の前にうつ伏せに横たわる奇怪な生き物を指差した。
その横たわる奇怪な生き物の頭らしき部分はチリチリとした緑色の繊維がまばらに固着しており、赤と白のストライプの服と思われる上下を着ていた。
奇怪な生き物の顔らしき部分を覗き込むアリスの母親
顔と思われる部分はペンキを塗ったかの様な白と液体の様な赤のストライプ。右目らしき部分は星左目らしき部分は丸で、鼻らしき部分の先と同様に赤くペイントされていた。その右目・左の目らしき部分からは水が流れており、口らしき部分は口紅で塗ったかのように真っ赤で頬と思われる部分の1/2まで吊り上げてペイントされていた。
「まぁ〜奇怪な生き物だこと」
と言葉を発するとアリスの母親は少し驚いて見せた。
「えへへへへ」
アリスは嬉しそうに驚いた母親の驚いた顔を見て自慢気に笑っている。
「これどうしたの?」
とアリスの母親がアリスに尋ねると
「町の入り口で拾ったの」
と言うと指で町の入り口を指差した。
アリスの母親はアリスが指差す方を見つめると、そこにはアリスが一生懸命この奇怪な生き物を町の入り口から引っ張って来たであろう痕跡を見つける事が出来た。
何故なら乾いた土が水で湿っていたからである。
奇怪な生き物の目らしき部分から流れる水の湿りと、顔らしき部分から流れる赤い水の湿りが町の入り口からアリスの家の前まで続いたからである。
アリスの母親は目頭が少し熱くなり涙が目を包み込む。
こんな小さなアリスが一生懸命この奇怪な生き物をここまで引きずってきた事で娘の成長を感じたからである。
「アリス頑張ったね」
アリスの母親は目に溜まった涙を人差し指でふき取ると、アリスと目線が同じぐらいになるまでしゃがみ込み優しくアリスの頭を撫でた。
「そ、それでね・・・お母さん」
アリスは語尾のトーンを低くて、モジモジしながら母親に言葉をかける。
「アリスどうしたの?」
母親は優しく微笑みながらアリスの言葉を待つ。
「これ飼っていい?」
モジモジしながらオネダリ目線を送る。
少し戸惑うアリスの母親・・・
「ちゃんとお世話するよアリス!!ご飯だって、散歩だって、ちゃんとアリスが面倒みるから!!」
その戸惑いを無くすかの様にアリスは必死に言葉を発した。
しばらく戸惑ったままのアリスの母親だったが、一つタメ息をつくと
「仕方がないわね、ちゃんとお世話するのよ」
と少し呆れた顔をして飼う事を了承した。
それを聞いたアリスは元気一杯に母親の周りを跳ね周りまんべんな笑顔を浮かべて
「お母さん、大好き」
と町中に響き渡る大声をだした。
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