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ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
問題だらけのギルド編
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七十七話 fashion snap of Cowl

ランク外侵入について、あれこれ考えていたが、その日もたいした考えは浮かばず、無意味に一日が過ぎていく。

安全対策部を訪ねてエルドと話し合い、ダンジョンの調査は冒険者に依頼することとなった。

「依頼は俺が出しておくからな?」

エルドはそう言った。それから、近日中に闘技場へと赴きランク外侵入を魔法でどうにか出来ないかローブ野郎に相談しにいく事を話すと、エルドもついていくと言い出した。

「この前の魔武器の開発を相談しに行きたい」

だそうだ。


結局、ランク外侵入の対策案はたいした進歩もなく、歯痒い思いをしている。他にも何か良い手があるはずなのだが、なかなかに思い付かない。


ギルドでの仕事が終わると、そのまま約束の空き地へと直行する。そこには既に三人とも来ていた。


まず目を引いたのは、ソフィアだった。彼女は白を基調としたドレスを着ていた。体のラインが分かるゆったりしたもので、とてもシンプルだが、それでいて気品に溢れている。……というのも、貴族ではない俺が感じるのもおかしな話か。髪も結わえていて、一瞬誰かと思った。

「綺麗になったな」

素直に感想を述べる。

「えへへ。これは昔母から譲り受けた物なんです。その時に着たら、まだサイズなんか合わなかったのに……時の流れってすごいですね」

憂いを帯びた瞳でソフィアは呟いた。

「私には何かないのかしら?」

振り返ると、ソカがいた。この前とは違って、今回は黒のドレスを着ていた。柄はなく、これまたシンプルだが不敵に笑う彼女にはピッタリのドレスだろう。

「似合ってるよ」

「ふふ、ありがとう」

さすがは元貴族と遊び人冒険者だ。それなり以上の格好をしてくるな。




そして、問題は…。


「カウル…その真っ赤なマントはなんだ?」

「これか?これは魔法のマントだ」


「……その帽子は?」

「紳士と言えば帽子だろう。金貨二枚の代物だ」


「ズボンはなんでそんなに膨らんでいる?」

「昔見た貴族がこんなのを着ていたからな」


「靴は…いつもと一緒だな」

「靴などどれも同じだろう」

「……」


「なぜ杖を持ってる?」

「剣の代わりだ。何か身に付けていないと落ち着かないんだ」


「最後に一つ」

「なんだ?」

「お前は、その格好でここまで来たのか?」

「そうだが?」






あちゃー。まじかよ。

カウルの格好はなんというか、酷かった。

「……ソフィア」

「すいません。私も自分の事で手一杯だったもので」


「なにか問題でもあるのか?」

問題だらけだろ。なんだそのコーディネートは!?今から手品でも始めそうな勢いだぞ?


二人は何も言わなかったのか?

ソフィアを見れば気まずそうにしている。ソカは……面白そうにこちらを眺めていた。


「カウル…お前の格好じゃ店には入れないぞ」

「なぜだ?」

いや、なぜ?と言われてもだな。

「…それは何をイメージしてるんだ?」

「貴族だ」

貴族かぁ。どちらかと言えば奇族だよなぁ。

「多分、そのイメージ間違ってるぞ?」

「そう…なのか?」

ソフィアに問いかけるカウル。ソフィアは、苦しそうに頷いた。

「そうだったのか」

カウルは少しだけ考える素振りを見せる。

「俺には貴族の格好が分からないからな」

「昨日、問題ないって言ってなかったか?」

「これで良いのだろうと思っていた。どうすれば良い?」

カウルは真剣な目で俺を見てくる。こういう所は真面目なんだよな。


「今から服屋に行こう。昨日俺が頼んでおいた服があるはずだ。そこで着替えれば良い」


「それは、テプトが着る予定の服じゃないのか?」

「そうだが、仕方ないだろう?……ソカ」


「はいはい。また借りるのね?」

「頼む」

「もう私から買っちゃう?」

「考えておくよ」

結局、そのまま服屋へと行って、昨日頼んでおいた服を店の主人に持ってきてもらう。紺色のコートで、袖は返しがついている。生地もそれなりに上等であり、金貨五枚の服だ。そこで、カウルは帽子を売り払い、代わりのズボンを購入した。杖だけは持っていきたいらしい。

服屋から出てきたカウルは、それなりに見れる格好へと変わっていた。

「なんだよ、普通にカッコイイじゃないか」

褒めてやるが、カウルは気にした様子もない。

「別に変わらない。これで店には入れるのか?」

「バッチリだ」


その後、再び俺はソカの家の近くまで行って、この前の服を持ってきてもらうことにした。

「そこで待っとくわけ?」

「ああ」

しかし、路地の中にまでは入らない。路地をうろついていた男が消されたって聞いたからな。

「まぁ、良いけど。ちょっと待ってて」

そう言ってソカは一旦家に戻っていった。町の喧騒を眺めながら、俺達は静かに待った。

少し経って戻ってきた彼女の手には前に着たコートがあった。

「悪いな」

「別に。どうせ着る人なんて居ないもの」


準備は整い、俺達一行は店へと向かった。


心なしか少しだけ緊張している。無理もないか。あそこ入りづらいんだよなぁ。

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