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ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
問題だらけのギルド編
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七十四話 尋ね人

「じゃあ、ランク外侵入を防ぐ案を出さないとダメで、それも完璧なものじゃないといけないわけね?」


「その通りです」


「呆れた。なんでそうなるの?完璧な案なんてあるわけないじゃない!」


セリエさんは意味がわからないとでもいうように頭を振った。

「でも、もう決めちゃったことなのね?」

「すいません」

セリエさんは深いため息を吐いた。その表情は暗く、気が沈んでいるのが分かる。

エルドもそうだが、セリエさんも俺のことを本気で心配してくれているのだろう。そんなこと……思ってもみなかった。自分のために落ち込んでくれる人など今までいなかったのだ。


「それで?何か対策はあるの?」

「今はエルドさんと、ランクの見直しについて検討中です」

「ランクの見直し?」

「ランク外侵入が出てしまう原因は、そもそもランクの基準が間違っているからじゃないかと考えたんです」

「はぁー。とんでもない考えね。そもそもどうやってランクの基準が間違っているか調べるの?」

「そこなんですよね。……本当は俺がダンジョンに潜って、一つ一つ検証したかったんですが、ギルドマスターにはダンジョンに潜らないと宣言してしまいました」

「ほんと、自分の首を締めるのが好きなのね?」

「その言い方はちょっと誤解が。あとは、ランク外の階層に入ったら、強制的にダンジョンの外に出るような魔法とかないか、企画部に相談しに行くつもりです」

「企画部?」

セリエさんは不思議そうな顔をした。ここでもかよ。ローブ野郎の素性は誰も知らないんだな。

軽く彼のことを話すと、セリエさんは驚いていた。

「そう…だったのね。それよりも、そんな魔法なんてあるのかしら?あったらとっくの昔に採用されてそうなものだけど」

やっぱりそうか。

「とりあえず相談してみるだけしてみますよ」

「ふーん。他には?」

「ないです」


「ごめん、聞こえなかったわ。他には?」

「ないです」



「はぁ!?そんなのでギルドマスターと約束なんてしたの!?」

セリエさんは立ち上がった。

「ちょっ!セリエさん、声が大きいですから」

それから彼女は座ると、頭を抱えた。

「はぁーーー。テプトくんはもう少し頭の良い人だと思ってたわ。私の勘違いだったのね」

その反応、普通に傷つきますからね?

「でもどうするの?」

問われて少し考える。しかし、酒を大量に飲んだせいか、思考がうまくまとまらない。それはセリエさんも同じようで、難しい表情をしながら黙ってしまった。

結果、何も思い浮かばず無駄な時間を過ごしてしまう。



「そろそろ帰りましょうか」

エルドが起きたところでそう言うと、「そうね」とセリエさんは返した。ここでこうしていても始まらないと分かったのだろう。

「……なにも覚えてないな」

頭を押さえながら呟くエルド。思い出さないほうが良いかもしれない。結局、代金は三人で払った。というより、エルドの持ち金では足りないほどに酒を飲んでいた。一番払ったのはエルドだが、残りの代金は俺とセリエさんで分割した。


三人とも酔いは覚めていたが、それでも少しふらついた足取りで帰路についた。一番まともだったのはやはりセリエさんだったように思う。




翌日はやはり二日酔いがあった。吐くほど飲み、その後も少し飲んでいた。まぁ、当然の結果だろう。とりあえずはギルドに向かう。廊下でエルドと会ったが、彼もかなりキツそうな表情をしていた。

「おはようございます」

「…おはよう。昨日はどうもな」

「こちらこそ。キツそうですね?」

「あぁ、つらい。お前もか?」

「えぇ、やられました」

「そうか。…お互い頑張ろうぜ?」

「そうですね」


言葉が少ないのは、どちらも話をあまりしたくないからだ。こんなときは仕事に打ち込むに限る。時間が経てば症状も良くなるだろう。


俺は、ただひたすらに本日の未達成依頼のために奔走した。

夕方頃になると二日酔いはようやく良くなってきていた。ギルドに戻ると、受付に座るセリエさんが手招きをしていた。現在は依頼人の受付時間のため空いているのだ。

「セリエさん。昨日はありがとうございました」

「こっちこそありがとね。あの後ちゃんと帰れたの?」

「なんとか」

「そうだったんだ、なら良かったわ。……その…昨日口走ったことはあまり気にしないでね?」

「口走ったこと?」

急に言いづらそうに困った表情をするセリエさん。

「あれよ……私が頼って欲しいって言ったこと。あれは本心だけど本心じゃないというか何というか」

だんだん声が小さくなっていくセリエさん。

「まぁ、酒の席ですからね。俺もあまり覚えてないんです。さっきまで二日酔いでしたし」

「そう…なんだ。まぁ、次はちゃんとするからよろしくね」

彼女は安堵するように息を吐いた。

「はい、こちらこそ」


「そういえば、今日テプトくんを訪ねてきた冒険者がいたわよ」

「俺をですか?」

「そう。昨日助けたカウルくんとソフィアちゃん。お礼じゃないかしら?冒険者管理部にあなたが居なかったからとりあえず帰ってもらったけど、明日も来るって言ってたわ」

あの二人か。そういえば、来るように言ってたな。……早いとこソカにも会って、もう一度店に連れてってもらわなきゃな。


「ありがとうございます。明日は二人が来るまでギルドにいますよ。それと、ソカっていう女性冒険者は知ってますか?」

「ソカちゃん?…知ってるわよ。その子がどうかしたの?」

「ちょっと用事があるんです」


「ふーん……それも仕事?」

仕事…ではないな。ソフィアを店に連れていくのは個人的な約束みたいなもんだしな。

「仕事じゃないですよ」

その言うと、セリエさんは目を細めた。

「手を出しちゃダメよ?」

いや、何言ってんだよこの人は。

「出しませんよ」

「なら、良いんだけど。分かったわ、見かけたらあなたに連絡するわね」

「助かります」


そうして、俺は冒険者管理部の部屋へと戻った。

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