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ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
問題だらけのギルド編
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五十五話 予言

少年は何もないところから、いきなり本を取り出した。分厚い、黒い本だ。表紙には何も書かれてはいない。

「えーと…」

彼は本を開くと、これまたどこから取り出したのか?筆を手に持って、何かを書き込んでいる。

「ここをこうして…こうやって…」


『奴はなにをしているのだ?』

「さぁ…俺に聞くなよ」


「出来た!」

その声と同時に、少年と俺達の間の岩が、音をたてて動いていく。まるで、何かの意思を持ったように形作られていく。しばらくするとそこには、下へと続く階段が出来上がっていた。


「ここから、その冒険者がいる階層まで行けるよ」

屈託なく笑う少年。あぁ、ダンジョンを創り代えていたのか。

「ドアとかじゃないんだな?」

「それって、姉ちゃんがそうやってたからでしょ?僕はそんな高度な事は出来ないよ」

なるほど。ダンジョンマスターといっても人それぞれらしい。

「ありがとう。助かったよ」

「僕も、悪意ある者じゃないと分かったからホッとした。どうやら君の力は、このダンジョンをどうにでも出来そうな感じがするからね」


まさか。そこまでの力はないぞ?あったとしても、この広いダンジョンに何かするなど馬鹿げている。

「それでわざわざ姿を見せたのか?」


「まぁね?これでも日々ダンジョンの在り方について真剣に考えているんだよ?どうやら僕の仕事は、人々の生活に無くてはならない存在になりつつあるからね」


そう言って、少年はエッヘンと胸を張った。あー偉い偉い。

「でも、最近はちょっと不満かなー。最下層に来る者がいなくなっちゃったから。君なら大丈夫そうだけど、魔物を全滅させられても困るしね?遠慮しておくよ」

「いや、最下層に行くとか言ってないからな?」

「本当に冒険者を連れ戻しに来ただけなんだね?」

「そう言ってるだろ」

「ふーん。でも、もし最下層に来るなら早めに行くことをオススメするよ。ここのところ最下層付近の魔物が強くなり始めてるから。そこのワンコ並みの魔物も生まれちゃってるしね?」

『我と一緒だと?』

タロウが歯軋りをした。

「おい、こいつを煽るのやめてくれないか?今のところ最下層に行く気はないんだ」

「そうだったね。ごめんごめん」


「でも本当に助かった。ありがとう」

「大したことはしてないよ。君達も頑張ってね?それとーー」


少年は俺を見て何か言いかけた。不審に思ってその後を促す。

「それと……なんだよ?」


「それと…これは予言なんだけどね。君は、取り返しのつかない選択をしたらしい。そしてこの先、その選択をした代償が降りかかる」


「取り返しのつかない選択?…代償?」


「うん。詳しいことは分からないけど、そういう事になってる」


「何を言っているんだ?」


「さぁ?僕も何を伝えたいんだろうね?ただ……分かるんだ。君はそういう星の下に生まれてる。そして、もう後戻りは出来ない」


少年の言っている意味が分からなかった。

「ははっ、別に気にすることはないよ。それに、君の星は大した光を放ってないようだし、たぶん影響があるのは今から千年ぐらい先までじゃないかな?」


千年…いや、それ十分だろ。

「たぶん、魔王や勇者なんて呼ばれる者達はもっとスゴいよ?それに比べたら、凄く弱い光だから安心してよ」

つまり、俺は魔王にも勇者にもなれないってことか。

「まぁ、頭の片隅ぐらいには残しておく。占いなんて全く信じてないけど」


「酷いなぁ。僕の予言って結構当たるんだよ?…それとこれを」

言って、少年は何かを投げてきた。それを掴む。

「もしも僕の力を借りたいときに魔力を籠めなよ。どんな所でも駆けつけてあげるから。使えるのは一回きり。使うところはよく選んでね?」

それは、小さな銀色の指輪だった。内側に、読めない文字が彫ってある。


「なんでこんなものを?」


「う~ん?…気分?かな。なんとなく、そんな気がしたんだ」


「それも予言か?」


「予言というより、予感かな?」

「君の姉ちゃんは、そんなこと言ったりしてなかったな」

「姉ちゃんには、そんな能力ないからね。僕だけなんだ」

「そうなのか」

「そうなんだよ」

そう言って少年は笑った。

「わかった。ありがたく貰っておく。ただ、使うことはないと思うがな」

ダンジョンマスターの力を借りる時っていつだよ?

「それならそれで良いよ。あと、君の名前を聞いてなかった」

「テプト・テッセンだ」

「僕はエルマ。またね、テプト」

「また会えたらな?」


それから俺達はエルマと別れた。彼の創ってくれた階段をひたすら降りていく。階段は確かに下の階へと続いているらしい。魔素がどんどん強くなっていくからだ。一瞬、これは罠なんじゃないか?という考えが頭をよぎったが、その時は、容赦なく暴れさせてもらう事にして考えを振り払った。

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