表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
問題だらけのギルド編
53/206

五十三話 ボス部屋

最初にボス部屋に挑んだのは、冒険者となって四ヶ月経った頃だ。

その時は、入念な準備をして挑んだのを思い出す。ボス部屋にいたのは大蜘蛛で、部屋の中はそいつの子蜘蛛達でひしめきあっていた。一体一体はさほど強くもないのだが、数が多いと危険度は跳ね上がる。まだ、二十階層のボスは一人で挑めるといっても、大半は仲間と協力して挑むものだ。……俺は違ったが。


~二十階層。ボス部屋。


「賭けをしようか?」

『賭け?』

「あぁ、どんな魔物が出てくるかの賭けだ。負けた方はボスを一人で倒す」

『ふん、つまらんな。どちらにしろ、この階層程度の魔物ならばどちらが戦ってもすぐに終わるだろう』

「だから、言ってんだよ。俺はミノタウロスだと思う」

『うぅむ。勝ってな事を。では、ゴーレムで』


言いながら俺とタロウは、目の前の巨大な門の前に立つ。鉄で出来たそれは、もはや大きな壁といっても過言ではない。

『いつものアレをやるのか?』

「あぁ、そっちの方が良いだろ?」

『……やってくれ』

それから、タロウは後ろに数歩下がった。俺は左手を門に着け、右手を握り構えをとる。今からやろうとしているのは、ちょっとした小技だ。しばらくすると、門がゆっくりと開き、中に入ってからボスとご対面という流れなのだが、その前に、門を破壊する。すると十中八九、中の魔物は怒り狂うのだ。怒り狂った魔物ほど単調な動きをする。ただ、攻撃力も数倍上がっているだけに、気を付けなければならない。まぁ、俺とタロウなら問題ないだろう。

それから、右手拳に魔力を練り込み、瞬間的に身体強化を上げた。

「ーーハッ!!」

右手拳を鉄の門にぶつける。そこから門はへこみ、やがて片方の扉部分だけを残し、片方は奥の部屋に吹っ飛んでいった。

「痛っ」

激痛に顔をしかめてしまう。見れば、右手拳は粉々になっていた。勘が鈍ってるらしい。前の自分ならばこんなことにはならなかった。急いで上級回復魔法で治す。

『どうだ?』

タロウが近づいてきた。

「普通なら怒りの咆哮が聞こえてきてもおかしくないんだが…」

右手が治ったところで、予想通り咆哮が聞こえた。


この声は…。

『どちらも外れたな。こいつは……バイコーンだ』


薄暗い部屋の中に爛々と光る赤い目があった。その頭には、鬼のように二つの長い角がある。足の先は蹄になっており、その姿は巨大な牛を連想させた。

「バイコーンか。これは流石に予想外だったな」

『では引き分けか?』

「残念。ーーー両方負けだ」


その瞬間、バイコーンはよだれを滴ながら突進してきた。明らかに怒っている。

『ならば、相手をするしかないな』

タロウが前へ出て、その体から大量の魔力を噴出する。バイコーンが動揺し、突進が弱くなった。自分よりも上位の魔物を目の前にして躊躇したのだろう。

タロウの筋肉が盛り上がり、牙が鋭くなる。威嚇にも似た低い唸り声の後に、タロウは消え、直後、バイコーンが不自然に倒れた。突進の惰力でバイコーンは片方しか残っていない扉に激突し、辺り一面に砂埃が舞った。

「ーーケホッ」

思わず咳き込んでしまう。埃が消えて辺りが見えるようになると、そこには倒れたバイコーンと、その首に噛みつくゴツい狂犬がいた。その噛みついた場所が淡く光っている。バイコーンの体が色味を失い、やがて目からも光が消えた。

「倒したのか?」

『あぁ』

「俺が手を出す暇もなかったな」

『だから言ったであろう。すぐに終わると』

俺は近づいて、バイコーンの二本の角だけを切り取って空間魔法でしまう。


奥から、鉄と鉄が擦れる音が聞こえた。次の階層への門が開いたのだ。本当は、バイコーンを無視して奥の扉を破壊しても良かったのだが、それだとバイコーンが他の階に行ってしまう。それは流石にまずいため、相手取ったのだが、やはり時間はかからなかったな。


「行こう」

そう言って扉に向かう。壊した扉は時間と共に直るため、その辺はダンジョンすげぇなと思う。ちなみに、最初にボス部屋へ入ったときは部屋ごと焼き払ってしまった。蜘蛛のあまりの気持ち悪さに、火属性の強力魔法を連発してしまったのだ。そして溶けた壁を、わざわざ土魔法で元に戻していたものの、後々自然修復するのだと知って愕然としたのを覚えている。まぁ、そのお陰もあり修復技術はだいぶ向上したものだ。

思い返しても、20階層程度のボス部屋の思い出は、そんなものしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ