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ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
問題だらけのギルド編
28/206

二十八話 闘いの火蓋は切られる

なんと日間ランキングに載ったようで、確認すると285位でした。


評価やブクマありがとうございます。皆様にこれからも読んでいただけるよう、作者も頑張っていきます。

朝礼が終わったあと、俺は昨日書いた書類を持って、ギルドマスターの部屋をノックする。この時間帯ならバリザスはまだ来ていない。余計な茶々を入れられては困る。返事が聞こえた後、俺は部屋の中に入った。予想通り、ミーネさんしかいない。


「ミーネさん。これ、今度の部長会議で出したいんですが」

そう言って書類をだす。今日はいつもよりも早く出勤し、提出する書類を写したので、これはもう渡してしまっても大丈夫だ。


「いろいろやってくるわね?今度はなに?」

言いながら、ミーネさんはその書類に目を通し始めた。

ミーネさんが目を通している間1秒が10秒に、1分が10分にも感じられる。そして、ようやく読み終わると、彼女はまず最初に息を吐いた。それがため息なのか、呼吸を整える為なのかは定かではない。


「まず……良くできてる。と言った方がいいかしら?おそらく部長会議にはこのまま出しても問題ないはずよ。ただ……」

そこでミーネさんは言葉を区切る。

「ただ?」

待ちきれなくなり次を促した。

「これを成し得るのはかなり大変よ?君はそれを分かっているのかしら?」

試すような視線。それを正面から受け止める。

「分かっています。この先に立ち塞がる困難も、それを成すためにどれだけの精神力がいるのかも」


そう答えると、再び彼女は息を吐いた。今度は間違いなくため息だった。


「テプト君、あなたは優秀すぎるわ。普通こんなことは、就任して一月(ひとつき)未満の新人が取りかかるべき事案じゃない。それは、今までここにいて何もしてこなかった私達の責任でもあるけれど、それを無理にあなたがやる必要はないのよ?」

「それは……どうでしょうか?俺は冒険者管理部の部長として、今ある問題を処理しようとしているだけです。新人も何も関係ありません」

ミーネさんは困ったような表情を見せる。そこにある感情を読み取ろうとしたが、すぐにその表情は掻き消された。


「分かったわ。今度の会議は一週間後よ。一応ギルドマスターにも見せるけど、良いかしら?」


「一応って……見せなきゃいけないでしょ?」

ミーネさんの言い方に、俺はニヤリとしてしまう。まるで、見せなくていいなら見せない、というような言い方だったからだ。

「そうだったわね。じゃあ見せておくわ」

ミーネさんもニヤリと笑った。

「お願いします」

それから、部屋を後にする。


冒険者管理部の部屋に戻ると、既に依頼書が貼られていた。

これは……やるしかないよな。もしも本部から何か言われても、ありのままを話すしかない。これは俺がもたらした問題だ。そのことで責任をとるなら、取ってやろうじゃないか。


俺はその依頼書を確認すると、達成しに向かう。そして依頼は、無事昼前には終了した。

それからすぐに、引き出しからミーネさんに提出した原案を、4組ずつ書き写す。写すだけならそう時間もかからない。それを持って、俺は部屋を出た。





『営業部』にて。


「うーん、なるほど。今度の会議でこれを提案するわけですね?」

「はい。出来れば通したいと思っています」

俺の目の前では、営業部部長のハゲがその頭に手をやり、なにやら考えている。

「あなたには、受付窓口を増やして貰った恩があります。ぜひ協力したい所ですが……質問が一つ」

「なんでしょうか?」

「月単位で依頼達成を義務化するシステムは素晴らしいと思います。そのチェックも、管理部がやってくださるなら言うことはない。ただ、ここにある『依頼を成さなかった者には適切な処罰をする』というのは、具体的にどういった事でしょうか?」


それは、義務である依頼を受けなかった者、もしくは達成しなかった者について書いた項目だった。

このハゲ……なかなかに鋭い。

「それは、まだ決めかねている処です。なにせ冒険者への処罰となると、中々に難しいからです。ランクの降格というのを考えましたが、意図せずして依頼を達成出来ない冒険者もいると思います。そうなると、降格は厳しすぎるかと。ならどうすれば良いのか?出来れば、各部長方の意見を会議で聞こうと考えていました」

「そうですか。……私が見たところ、矛盾や理不尽な処はないと思います。私でよろしければ賛同しますよ」

「ありがとうございます」

そして、俺とハゲは固い握手を交わした。



次だ。



『安全対策部』にて。


「うーむ。よく出来ている。一見、冒険者に負担がかかるような仕組みだが、町の人達との関係性が背景にあるため、おいそれと反対も出来ん」

安部の部長は、腕組をして唸った。近くの席で書類作業をしている副部長のエルドが、気になるのか、チラチラとこちらを気にしていた。お前まる分かりだからな?下手くそか!


「なら、会議で賛同してもらえますか?」

そう聞くと、安部の部長は「うーむ」と唸りながら、チラチラとエルドの方を見た。


あぁ……なるほどね。お前ら二人で話し合いたいんだろ?どっちも下手くそか!


「急ぎではないので、返事は会議までに出してもらえば良いです」

こういう事は、早めに有利な言質をとってしまうに限るのだが、おそらく大丈夫だろう。何かあっても、対策を練るには十分時間がある。

「そうか。……早めに結論は出そう」

安部の部長は安堵したらしく。落ち着き払った声でそう言った。

「お願いします」

それから、安全対策部を後にした。



次だ。つぎぃ!!



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