三十四話 登場人物の事後解説
【テプト・セッテン】
彼は、後にアスカレア王国最大の犯罪者として王国全土に名を馳せた。その結末はあまりにも呆気なく、国王を殺した罪に問われ処刑された。しかし、それはアスカレア王国を変えるキッカケともなった為、彼の名前を悪の代名詞とする者もいれば、正義の使者として崇める者もいた。
いずれにせよ、彼の成した事は国に大きく影響を与え、平和へと糸口になったことは言うまでもない。
【ソカ】
彼女は冒険者という職業が無くなると共に、突如姿を消した。彼女を知る者たちは「低俗な職に就いたのだろう」と噂し、探し回る輩もいたそうだが、その真実は闇の中。
とある者たちは、愛する者を失ったショックから立ち直れなかったのだろうと推察し、悲しき結末を口にする者もいた。
【セリエ】
彼女は、その後長らく美しい受付嬢としてギルドに所属していた。彼女はタウーレンで最も美しいと評され、愛を囁く者は後を絶たず、彼女を巡り様々な事件が起きることもしばしばあった。しかし、彼女はどんな男にも媚びることはなく、生涯独身を貫くことを決めていた。
そんな彼女は、誰もが予想しなかった人物と結婚を果たすことになる。それを期に仕事を辞め、彼女は一人の女性として幸せな家庭を築いた。
誰もが、何故その男と結婚したのかを知りたがったが、彼女は誰にもその馴れ初めを語ることはなかった。それこそが人々の想像力を掻き立て、後に純愛ストーリーとして演劇の舞台となることは、彼女自身想像もしていなかっただろう。
【エルド・スプランガス】
安全対策部の副部長として仕事に打ち込んでいたが、組織の体制が変わってからは、『ギルド:タウーレン運営所』という、領主直近のギルドに所属し部長にまで成り上がった。しかし、不器用な性格が影響してか、彼は笑い話となる数々の失敗談を築き上げることになる。それでも、愚直な仕事ぶりが評価され、多くの部下にも愛された。欠点は仕事に打ち込むあまり、女の影が全くないことだったのだが、数年後、彼はタウーレンで最も美しいとされた女性と結婚を果たすことになった。
その後、その恋愛模様は舞台にまでなる。それは一重に、彼がタウーレンの中でも、最も功績を残した人物の一人として名前が広まったからに他ならない。
【バリザス&ミーネ】
二人は「冒険者ギルドが解体されたら引退する」と常々言っていたが、新しく組織が生まれ変わる時、王都に呼ばれた日から態度は一変し『ギルド:魔護人管理ダンジョン探索部』の部長、副部長としてその後、尽力した。
生涯結婚することはなかったが、二人は常に寄り添い引退後は各地を回る旅をした。
後に、年の差結婚が世間一般的になる際、二人の名前は再び上がることになる。それも、二人がタウーレンで多くの功績をあげたからに他ならない。
【ローブ野郎】
彼は闘技場を破壊することを決め、そこに『平和への祈り』という広場を建設する計画を立てる。その広場に、彼はテプト・セッテンの銅像を建設する計画も立てたが、多くの反対によってそれは受け入れられなかった。趣味であった研究を止めることはなく、取り憑かれたように死者を甦らせる邪悪な魔術を研究していたらしい。その最中、研究で起こった爆発により彼はその存在を消した。記録では『魔術による爆死』という謎の記録を残す。
その調査は、王都から派遣された謎の人たちによって行われたが、原因が公表されることはなかった。
【アレーナ・ミレフィナス】
彼女は組織が変わると共に、タウーレンではなく王都の金を管理する部署へと突然の昇進を遂げた。その理由は、王都にて多くの者たちを解雇したことによる人材不足が噂されたが、一方で上層部で権威ある人物が引っ張ったのだという説もある。だが、その人物が誰なのか分からないため、前者が濃厚であることは確か。
彼女は、アスカレア王国の中でも、最も昇進した女性として称えられ、女性が社会で働く希望ともなった。
【安全対策部部長&営業部部長】
彼らは組織解体と共に引退をする。その後、これまでの経験をたくさんの若人に教え、一部では「先生」とも呼ばれていた。周りから見れば変人の二人だったが、本人たちはそれなりに幸せだったようだ。
【カウル&ソフィア】
カウルは数年、優秀な魔護人としてダンジョンに携わっていたが、とある時期になると強制的に人事的な研修を組まされ、バリザスの後釜となる『ギルド:魔護人管理ダンジョン探索部』の部長として異例の就任を遂げた。また、同タイミングで副部長に王都にて経験を積んだソフィアが就任をする。その意図的としか思えない配置に人々は疑問を持ったが、答えを解明できる者はいなかった。
新人としていきなりの立場に立たされたカウルだったが、部下たちは長く現場を共にした者ばかりで、仕事はやりやすかったようだ。それに恐れを抱いたソフィアが、彼を叱咤する光景がよく見られたが、もはやそれは名物として日常化していくことになる。
【レイカ】
タウーレン冒険者の中で、随一の実力を持っていた彼女は『ギルド:営業部』という町の人たちからの依頼を専門的に行う部署の部長として長く貢献した。彼女は口数が少なく、誤解される事もあったようだが、行動力はずば抜けており、他の町の部署によく視察を行って、良いとされる仕組みを組織に取り入れていった。
また、その功績が評価され、後に他の町との交流を図る部署へと異動されたが、それが彼女にとって人生の転機となる。同じ組織にいた男と結婚を果たすことになったからだ。
【ヒル・ウィレン】
国の政治が安泰するまで、王直近の組織にいたらしい。その後、その組織からは外れ、ギルドを取り締まる上層部に属していた。
それから、各町のギルドを監視する部署へと異動する話もあったのだが、彼はそれを「もう疲れました」の一言でことごとく断り、最後には町の交流を図る穏和な部署に落ち着いた。元から口達者だった彼にとって、そこは天職だったのだろう。多くの交流事業を立ち上げ、そして同じ部署にいた無口な女性と結婚することになる。
【ウィル・アスカレア】
国王となった彼は、直後から強引な政治を執り行った。これまでの体制を見直し、躊躇なく部下を切り捨てるその政治に、『魔王政治』として後代まで語り継がれることになる。しかし、彼が発案していくシステムは確かな実績を上げ、後の王国の礎となった。
また、数々の怨みが水面下で暗殺を活発化させたが、それが成功することはなく、彼には相当優秀な護衛がついているのだろうと噂された。
【アルヴ】
記録、噂なし。
【ユナ】
優秀な薬剤師となるため勉強をしていたが、自身のルーツを探るため旅に出ることを決意する。父親である診療所の所長は、それを強く反対していたが、何故か後にそれを許した。
その後の記録はなし。
また、数年後に各地で瀕死の人を救う少女が風の噂になったが、それがユナであったかは不明。ただ、その少女の傍らには黒い服を纏う不気味な男の姿も報告されている。
『死神と聖女』そんな噂は、どこから始まりどこで終わりを告げたのか誰にもわからない。
名前が上がらなかった登場人物は、その後あまり大きな変化のなかった者たちです。詳細がなくても、変化のあった者は一応全員出しました。
……今後追加されることもあるかもしれません。
そして、これにて第三章は終わりとなります。
また『ギルドとして』の物語はこの章を以て完結とさせていただきます。
読んでくださった皆さま、また感想を書いてくださった皆さま、本当にありがとうございました!
次の章は、オマケみたいなものです。おそらくそこまで話数はいかないと思われます。
では。
……next『truth END 知られざる英雄』




